大山誠一郎『アルファベット・パズラーズ』

「全てが謎と論理に奉仕する」という本格推理の理想系をまさに追求した作品。しかし(推理にとっては)無駄なモノがなさすぎるのもそれはそれでちょっと…と悩ましいところ。事件自体も無理無理多しで、犯人はもう少し落ち着け!と言った感じ。

法月綸太郎『生首に聞いてみろ』

苦悩の探偵・法月綸太郎が帰ってきた。こんな複雑な悲劇の連鎖をよくぞここまで形にしたの一言。読み終わってはいるが事件を全部把握できていないような気がするほど深い。誤った仮説である「捨て推理」が幾つも試みられていて、濃厚な洋酒のような刺激と酩酊感。見事。

有栖川有栖『白い兎が逃げる』

良品揃いの短編集。ツボをきっちり押えた本格推理で安心して楽しめる。「地下室の処刑」のメインの謎はどこかで見たようなことがある気もするが…(「死刑囚パズル」以外で)。それにしても表題作が一番間延びしてるのはどういうこっちゃ。

西澤保彦『方舟は冬の国へ』

六年勤めた会社を辞め、失業中の十和人は、ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられた。仕事を依頼したいという。それは、一カ月の間、別の名前を名乗り、見知らぬ女性と少女との仲のいい三人家族を装って、盗聴器と監視カメラのある家に滞在するというものだった。依頼を受けて滞在を始めた三人に、不思議な現象が起こりはじめる…。

ヘンテコシチュエーションから酩酊推理と見せかけてSF設定パスラーだと思いきや大人の御伽噺。荒唐無稽なつくりなのになんだこの心温まる感じは。いいなぁー。20代後半から30代前半男子向けファンタジー。

片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』

何の因果かセカチュー。泣きながら一気に読んでないけど。なかなかにせつない。

映画・テレビとの大きな違いは主人公のテンションの低さか。っていうか叫ばないし!シーンとシーンの間に隙間が多く、もっと泣かすシーンを挟もうと思えばいくらでも挟めるところが映像にしやすい理由だったのかな。登場人物も少ないから増やせるし。