『うたがいの神様』千原ジュニアは寂しがり屋

千原ジュニアは「うたがう」人だ。

クラスでプロ野球カードが流行れば「おっさんの写真集めて何がおもろいねん!」、”爽”という漢字を見れば「バツ4つでなにが”爽やか”やねん!」、ゴルフは紳士のスポーツと言われれば「あんなに緑を伐採して、女のキャディーさんに荷物まで持たせて、どこが紳士やねん!」

難癖、屁理屈、言いがかり。そんな風にも取られがちな「うたがい」の数々。

でもそれは、千原ジュニアが目指す「芸人」という大木の、根っこになるものなのだ。

本書は雑誌「パピルス」に連載された「うたがい」のコラムを36個まとめたもの。

「食後は食前」では、”食後”は次の食事の”食前”である、という発想の転換から、”ブレイクした”と言われるけど”ブレイク前”かもしれない、と仕事のスタンスを振り返る。

「珈琲好きは珈琲嫌い」では、珈琲が好きになりすぎて缶コーヒーが飲めなくなった経験から連想を続け、”自分好きは自分嫌い”という気づきに至る。

世の中ほんまに正しいんか?という「うたがいの目」を持つ千原ジュニアは、人が見逃してしまうことに次々と気づく。白と黒とをひっくり返して、そこに笑いを見つけ出す。

そんな千原ジュニアができた要因の一つが、”残念な兄”せいじだと言う。

「寂しがり屋は会話上手」

子供のころ、友達がいなかった千原ジュニアは、兄せいじが唯一の外との接点だった。でも、話が面白くないと「おもろない」と最後まで聞いてくれない。寂しかったから、聞いてほしかったから、話を工夫しだした。それが結局、話術の腕を磨くことになったという。

このエピソードを読んで、思い当たることがある。

むかしNHKの「トップランナー」に千原兄弟が初出演したのをオンタイムで偶然観たことがある。まだ若手で、テレビよりも劇場を中心に活動していた千原兄弟。むしろテレビを遠ざけていて、その理由として千原ジュニアが言ってたことを今でも覚えている。

「僕ら(クイズ番組で)クイズに答えるために芸人になったわけじゃないんで」

さすが吉本のジャックナイフ!って感じの発言で、テレビに出ている芸人を批判してるようにも聞こえる。でもたぶん、この言葉は自分たちにしか向いてなくって、「目の前のお客さんを笑わせる」ことが自分たちのやりたいことなんだ、と言いたかったんだと思う。寂しがり屋の弟が、兄に話を聞いてもらうように。

客入れの収録のほうがやる気になる、月一回はトークライブをする、ネットは見ない。笑い声をこの耳で聞きたい、そのために千原ジュニアは「うたがい」の視線で街を射抜くのだ。

別に毎日が大変なわけでも、面白くないわけでもないとみんな気づいたほうがいいかもしれません。見つけようと思ったら、面白いことはそのへんにゴロゴロ転がってる。それを見つけて、面白がる努力をするだけで、毎日が土曜日になるかもしれない。
P.97「毎日が土曜日」

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