さようなら、「世界」 高橋源一郎『「悪」と戦う』

とても、粗筋を書くのが難しい。

少年(三歳児!)が「世界」を救うために「悪」と戦う、というようにアウトラインを書き出すと、とてもステレオタイプに見える。でも、そうじゃない。詳しく書こうと思えば書き出せると思うけど、なんだかそれは、僕の手でこの物語を縮小させてしまう気がしてしまう。

とても、感じたことを書くのが難しい。

読後感は決して、マイナス、ではない。でも、深い感動や、涙や、感嘆や、驚愕や、その他大きく感情の針が動きだすわけでなく、なんかぼんやりと反芻している。これはなんなのだろう。心に場面が浮かんでは、降り始めの雪のようにじんわり消えていく。

僕は高橋源一郎の熱心な読者ではなくて、何年も前に『さようなら、ギャングたち』を一度読んだきり。記憶はおぼろげ。だから他の高橋源一郎作品と比べてどう、という言葉は持ち合わせていない。

ただ、一つ、言えるとしたら、子供を持つ親になっているいま、言えるとしたら、この本はずっと僕の本棚に置いてあることになると思う。

繰り返し取り出しては、ランちゃん、キイちゃんに会うことになるだろうと思う。

長い付き合いになる予感だけ、今はしている。

※参考リンク
高橋源一郎 (inomsk) on Twitter:5/1~13まで、毎日午前0時に高橋源一郎本人が『「悪」と戦う』のメイキングを執筆していました。

過去から未来へ繋ぐバトン 宮下奈都『スコーレNo.4』

自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

骨董品屋の長女・麻子の成長を、全体を4章にわけてそれぞれ中学時代・高校時代・就職直後・就職して3年後、という年代設定にして、連作短編として仕上げている。あの子がこんなに立派になって…という仕組みになっていて、終盤には、おっちゃんは中学の頃からこの子知ってんねんでーとすっかり物語に入ってしまう。

自分は地味で誇るところがないというコンプレックスを抱え、六人家族で暮らす多感な思春期を過ぎ、就職し…という流れで、就職してからがもう白眉。入社後の戸惑、突然の現場への派遣、そこから徐々に人間関係を築いて、仕事も覚え…と、その中で過去に自分に起きた出来事が今の仕事につながって…と、いろんなものがリンクしていく。人生はその場しのぎではなくて、過去の自分が未来の自分を作っていく。

特に”何かに目覚める時”が鮮やかだなぁと感じました。初恋や職場での気づきと言った場面で、パァァと目の前の世界が変わる。自分の中の変化を自分で感じる瞬間が美しい。

たぶん女子向けの本に分類されるんだろうけど、娘をもつ親御さんにもオススメです。もう、主人公をハラハラしながら応援してしまう自分がいます。

この本はTwitterで書店員の方々によって結成された「秘密結社」が、大好きな本として全国の書店(その数約100店舗!)で大プッシュしているもの。ハッシュタグは#Schole。Twitterが生んだフェアでこの本に出会えたことを感謝します。お近くの書店でも平積みされてるかもしれませんよ。

もしサザエさんの世界にtwitterがあったら

 
「磯野く~ん、フォローありがとう~」
「なんのこと?」
「さっきフォローしてくれたじゃな~い。あれアタシよ、アタシ」
「えぇっ!なんで花沢さんのアカウントがkaoriなのさ!」
「なによ!何か文句でもあるの!」
「いや、別に…」
「リムーブしたらただじゃおかないからね!」
「まいったなぁ…」

~~~

「アッハッハ、そりゃカツオくん、それはいっぱい食わされたねぇ」
「笑い事じゃないよマスオ兄さん!花沢さん、僕の発言を全部RTするんだ。毎日DMも来るし、もう、たまったもんじゃないよ」
「だいたいお前がフォロワー増やしに躍起になっとるからそういうことになるんだ。そんな暇があったらブログを更新したらどうだ」
「父さん…」

~~~

「あらー花沢さん」
「あ、磯野くんのお姉さん。」
「この前のあれ、どうなったかしら」
「もう効果抜群。磯野くん、すっかりpostしなくなって」
「うふふ、これで少しは懲りたかしら。私の昼寝姿をtwitpicに上げた罰よぉ」
「あっはっは、『昼寝なう』ですよねぇ」
「やだ!花沢さんも見たの!」
「だってバズってたんですもの~」
「もう~カツオめ~」

~~~

「おい磯野、僕のiPhoneで何するんだよ」
「シーッ!静かに。僕のガラケーじゃustreamできないんだよ」
「何を流すのさ」
「姉さんが財布を忘れて買い物に出かけたんだ。これはダダ漏れのチャンスだぞぉ」
「そんなことしたら怒られるじゃないか」
「だって、姉さんと花沢さんは裏で繋がってたんだぞ。リプ返ししまくってるんだ。あの二人の仕業でこっちはいい迷惑だよ。これは男のプライドの問題なんだ」
「ならいいけどさ…」
「カツオにいちゃん、サブ垢でなにやってるですかー」
「タ、タラちゃん!」

~~~

「バカモーン!」
「ヒイッ」
「姉の醜態をustで全世界に流そうとは言語道断!」
「そうよそうよ!」
「サザエもサザエだ。イマココ!なんて打つから居場所を特定されるんだ」
「…ごめんなさい」
「お、もうこんな時間か…『よるほー。だう』、と」
「「お父さん!!」」

~~~

さぁーて、来週のサザエさんは?
「フネです。先日おかるさんをフォローしたのですが、フォローを返してくれないんです。お洗濯のたびに塀越しに話はするんですが、なかなか言い出せなくて。ブロックしたほうがお互いいいのかしら。
さて次回は、
 ・我が家の修造
 ・フォローする人される人
 ・ワカメ、素直になれなくて
の3本です。」

来週もまた、見てくださいね~。ジャンケンポン!うふふ…。
 

みんなラジオを待っていた

AM/FMラジオのサイマル放送、radiko.jpのサービスが始まった。

サイマル放送、というのは複数の経路で同じ放送を流すこと。例えばいまテレビのアナログ放送とデジタル放送は同じものが流れてる、あれもサイマル放送というわけです。

radiko.jpはAM・FMラジオ放送を同時にネットにも流すサービス。今は実験段階なので、対応地域は関東と関西のみ。
(より詳しい説明はこちらを⇒遂に開始したラジオのネット配信、「radiko」を聴いてみた-AV Watch

聞いてみて、すごい感動した。

電波状況なんて関係ないので、AMもFMもすごい音声がクリア!podcastでカットされたりしていた音楽もCMも、ほぼ100%流れてくる。

手元にラジオ受信機がなかったり、電波状況が悪かったりで、テレビ・ネットに比べてなんか障壁があったラジオ。我が家も電波が入らなくて、特にAMは全然聞こえなかった。それがなんも問題なく聞ける。はてブやTwitterでも「聞けた!」と感動しているpostをよく見かけた。みんなラジオを待っていたんだと思った。

権利関係とか、ローカルCMの扱いとか、まだまだ超える壁もあるけど、早く全国にこの感動を広めて欲しい。

おかえり、ラジオ。そして、またよろしく。これからいっぱい聞こう。

ラジオがやってきた、ヤァ!ヤァ!ヤァ!

Twitterでタイムスリップ

※大変恐縮ですが、Twitterをご存じない方は勘で読んでいただけば幸いです。

瑛太と上野樹里が主演で、Twitterを軸に男女五人が織りなす人間模様を描いた連ドラが作られるらしい。
(瑛太、上野樹里のダブル主演で初の“Twitter”連ドラ! 脚本は北川悦吏子(オリコン) – Yahoo!ニュース)

ところで瑛太と上野樹里のコンビで思い出すのが映画「サマータイムマシン・ブルース 」である。

SF研究会が偶然手に入れたタイムマシン。どうするかワイワイ相談した結果、とりあえず昨日に戻ってみることに。昨日コーラをこぼして壊してしまったエアコンのリモコンを、コーラをこぼす前に取り返そうとするのだけど…という発端から始まるドタバタ・タイムスリップ。超傑作なので未見の方は是非。
サマータイムマシン・ブルース スタンダード・エディション (初回生産限定価格) [DVD]
真木よう子の貴重なメガネ女子姿も拝めます。
 
 
話は戻ってTwitterドラマ。この二人が主演なら、またタイムスリップものにしたら絶対面白いと思う。Twitter上に過去や未来からのつぶやきが混じってくるのだ。

未来から投稿された変なつぶやきの意味が後でわかったり、現在の行動で過去のつぶやきの内容が変わったり、過去のつぶやきを未来へRTしたり。時系列がバラバラのところに存在する五人。140字の現在・過去・未来。姿の見えないピンチをTwitterを操ってかわせるのか!?そして謎の預言者botの正体とは?

観たいなぁ。タイトルは「サマータイムライン・ブルース」で決まりだ。