娘に最強の赤ペン先生がつきました

娘六歳が進研ゼミを始めたんですよ。

娘六歳はこの春小学生になるわけでして、これを機にちょいと始めてみようかと。ママ友さんから紹介を受けるとなんかもらえるぞと。そんでリラックマの文具とかもらったりして始まったわけです。

進研ゼミと言えば今も昔も「赤ペン先生」。まだまだ現役なんですね。

そんで先日、娘六歳を担当する赤ペン先生が決まりました、というおハガキが届いたんですよ。

それがこれなんです。

ん?なんか見覚えがある名前…?

「きたむら かおる」!?

北村 薫
1949(昭和24)年、埼玉県生れ。早稲田大学ではミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、’89(平成元)年「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。’91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。

引用元:Amazon.co.jp: 北村 薫:作品一覧、著者略歴

まさかの「きたむら かおる」先生。あちらの北村薫先生も元国語教師という本物の先生ですよ。ミラクルすぎる。

北村薫がうちの子の作文を添削したりしないかなぁ。しまじろうのイラスト添えたりとかして。「先生も毎回書き出しには苦労します」とか裏話つけたりして。

今後の娘六歳と「きたむらかおる」先生とのやりとりから目が離せません。

『九マイルは遠すぎる』テーマをまとめてみる

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」
ミステリーでたびたび引き合いに出されるハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』。英語にしてたった十一語の文章から、考えられる推論を重ねていき、終いにはとんでもない事件を引き当ててしまう。

まさに安楽椅子探偵の極みであり、推理というか妄想にも近くなるのだけど、このテーマはやはり面白く、数々の作家が挑戦しております。思い出す限りちょいと集めてみました。
  

アンソロジー『競作五十円玉二十枚の謎』
池袋の書店を土曜日ごとに訪れて、五十円玉二十枚を千円札に両替して走り去る中年男

なぜ書店で両替するのか?なぜそんなに五十円玉がたまるのか?なぜ毎週千円に両替するのか?若竹七海が書店でアルバイトをしていた時の実体験が元となり、プロアマ13人が自分なりの解決を考え抜いて短編に仕上げているという、なんとも贅沢&異色な1冊。この時不参加だった北村薫が後に『ニッポン硬貨の謎』を上梓しております。そして法月綸太郎の解決がずるすぎる。
 

西澤保彦『麦酒の家の冒険』
迷い込んだ山荘には一台のベッドと冷蔵庫しかなかった。冷蔵庫を開けてみるとヱビスのロング缶96本と凍ったジョッキ13個が。
著者自らあとがきで「九マイルは遠すぎる」を意識したと書いている本作は、タックシリーズの2作目。タック・タカチ・ボアン先輩・ウサコが冷蔵庫のビールを勝手に飲みながら延々と推理。ベッドしかない山荘に、なんでこんなにたくさんのビールとジョッキがあるのか?状況が突飛すぎるゆえ、仮説もとんでもなくなって、だれることなく面白さ持続。シリーズの中でも好きな作品。
 

米澤穂信『遠まわりする雛』収録 「心当たりのあるものは」
「十月三十一日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのあるものは、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」
つい最近読んだので。きっかけは校内放送、放課後に1回だけ行われた生徒への呼び出しから導き出される犯罪の臭いとは。「古典部」シリーズの折木奉太郎と千反田えるの語りだけで構成される本作は、推理作家協会賞候補にもなっていたりする。
 

都筑道夫『退職刑事』収録 「ジャケット背広スーツ」
ジャケットと背広とスーツを持って駅を走る男
現役刑事の息子がぶつかった事件を、退職刑事の父親が聞くだけで解決してしまう安楽探偵椅子ものの白眉。殺人事件の容疑者が見たというこのジャケット男は、いったい何を意味するのか?割と経緯が複雑だったかで、どういう結末だったか忘れてしまった(笑)読み返すかなぁ。

他にも島田荘司『UFO大通り』(「傘を折る女」)とか、蒼井上鷹『九杯目には早すぎる』とか、まだまだありますな。有栖川有栖あたりにもあったような気がするんだよなぁ。

ここ最近読んだ本『ストレスフリーの仕事術』『紙魚家崩壊 九つの謎』『質問力』『殺意は必ず三度ある』『オリエント急行殺人事件』

しばらく更新してなかったので一気にまとめて。

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則

デビッド・アレン/田口元『ストレスフリーの仕事術』はLifeHackの中心ともなる仕事術に「GTD」という手法があるのですが、この方法がなぜうまくいくかを解説した本。頭でもやもや考えることは、一旦全部紙にだしてスッキリさせる!という狙いがなぜ大事か、というポイントがわかりやすい。忙しくて何から手をつけたものか、と、多くのタスクに追われている人の一つの道しるべにもなるかと。

原題が”Ready for Anything”で、こっちの方が内容に合ってるし何倍もかっこいいんだけど、本屋でパッと見てどっちが手にとられるかというところが問題なんだろうなぁ。

 

紙魚家崩壊 九つの謎

北村薫『紙魚家崩壊 九つの謎』は北村薫久々の短編集。ミステリ短編集、と名乗ってはいるものの、その味は薄め?

というか、高級レストランにいって出てきたモノを食べてみたものの、美味しいのかよくわからなくて、料理人の腕か自身の舌か、どっちを信用したものかなぁともやもやするような、そんな気分。エンタメというよりもはや寓話なのではないのか。一つ言えるのは昔話にミステリ解釈と加えようとする最後の 「新釈おとぎばなし」の一人遊びの空回りぶりがどうにも肌寒かったということ。ノリツッコミは高度な手法なのです。

 

質問力 ちくま文庫(さ-28-1)

斉藤孝『質問力』は古今東西の対談集から「いい質問」の例を取り出しながら、”質問力”の技とはどんなものかを教えてくれる本。そのラインナップたるや、谷川俊太郎、黒柳徹子、村上龍、手塚治虫など豪華ラインナップ。これらの対談のポイントごとを斉藤孝が咀嚼して、一粒で二度美味しい本になっています。

白眉は宇多田ヒカルとダニエル・キイスの対談。当時16歳と72歳の二人が、同じクリエイターとしてわかりあうまで、キイスは巧みに質問で流れを作り、宇多田はそこに狙い通りの賢い回答を返すという、とても見事なキャッチボールが紹介されてます。必見です。

 

殺意は必ず三度ある

東川篤哉『殺意は必ず三度ある』は鯉ヶ窪学園探偵部がドタバタと活躍というかなんというかを繰り広げるシリーズ第2弾。今回は野球部のベース盗難事件から発展した「野球見立て殺人事件」が登場。

もともと野球好きがあちこちの作品に見えていた作者だけに、とても楽しそうな筆致。野球場全体を巻き込んだメインの大トリックが、本格ミステリの箱庭的な面白さを存分に出していてとても好きですね。脇の小さな仕掛けもドタバタに効いていて、小ネタと伏線が絡み合う様子を今回も楽しむことができます。

 

オリエント急行殺人事件

アガサ・クリスティー『オリエント急行殺人事件』は実は未読だったもの。クリスティーを初めとして古典海外はかなり抜けているんですが、オリエント急行はーネタがさーあれなんでしょーというのは知っていただけにあまり読む気がなかったものの一つ。

しかし「そういえば、その真相にいたるまでのプロセスはどうだったんだろう?」というのが気になって、読んでみたらこれがまぁ一気読みですよ。面白いー!証言の矛盾を突いて突いてあそこまでもっていくとは。やはり古典には古典と呼ばれる所以あり。女王に最敬礼。ネタを知ってても十分楽しめますよ。

北村薫『ニッポン硬貨の謎』

北村薫 and エラリークイーン and 「五十円玉二十円の謎」と来れば期待しないわけにいくまいて、と、未読だった『シャム双子の謎』も読んで望んだわけでございます。結果としてはうーん…まだ読むべきじゃなかったかもしれない…

北村薫がクイーンの未発表原稿を訳した、という設定で文体パスティーシュをしているわけなんですが、3,4ページめくるたびに訳注が挟まって、マニアックな中身をさらにマニアックに解説しているのですが、結果として物語の流れが細切れになってしまって、なんだか乗り切れず。自分が書いた本文に対して訳注で「原文は~だっただが~だろう」等、一人ボケツッコミ状態なのも一因か。エラリー・クイーンが本当に好きで一家言あるくらいの人でないと、訳注のマニアックな部分や、途中に挟まれる『シャム双子の謎』論や、殺人事件の真相の突飛さに乗っていけないのではないのか…。クイーンへの愛で固められた一冊。楽しそうだなぁ。いいなぁ。ずるい、ずるいなぁ。

ニッポン硬貨の謎
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