テレビ万能細胞としての「ふなっしー」

32年間もの間、フジテレビのお昼を守り続けていた『笑っていいとも!』が、2014年3月31日をもって終了、グランドフィナーレを迎えた。

そして翌4月1日から、5組のMCを揃えて『バイキング』が始まった。

新たな船出を意気揚々と迎えた『バイキング』であったが、視聴率的には大変な荒波だったらしい。待てば海路の日和ありといくか、船頭多くして船山に登るになるか。今後の航海の無事を祈るのみである。

さてこの『バイキング』、日替わりMC&レギュラーは『笑っていいとも!』と全くかぶっていない。アナウンサーですら、テレフォンアナからカトパン&伊藤アナに変わっている。いいとも残留組は残さず、リセットした状態で始まっている。

しかし一人だけ、いや、一匹だけ、『いいとも』と『バイキング』の両方に出演した者がいる。

ふなっしーである。

『いいとも』最終回前の数ヶ月は、「月曜レギュラーゲスト」として林先生とコーナーゲストに登場。「じっくり話し太郎」ではタモリとのツーショットトークまでこなした。『いいとも』最後の出演は月曜ラスト2回となった3月24日。エンディングでは涙声でコメントし「中の人が泣いてる!」と突っ込まれていた。

『バイキング』では坂上忍MCの月曜初回にゲスト出演。坂上忍に身の上相談をした結果、坂上から「辞めちまえ」と無駄に達筆で書かれた色紙を渡された。

ふなっしーは、ギリギリまで『いいとも』に出たうえで、『バイキング』の第1週に出ているのである。

老若男女に受け、生放送でも切り返しができるトークができる。その上、事務所同士のしがらみはない。気を使う先輩後輩もない。

出始めのころはキモキャラだったのふなっしーは、いまやテレビで数字が取れるキャラクターとなった。それでいて、一般的なタレントが持つしがらみが一切ない。自由に芸能界を飛び回れているのである。

昨日、4月9日、ふなっしーは『笑ってこらえて4時間スペシャル』にて、「ダーツの旅」で所さんに飛ばされていた。

所さんが投げたダーツが刺さったのは熊本県田浦市。「くまモンパイセン」のお膝元で住民たちはゆるキャラ慣れしているとはいえ、ふなっしーの活躍はめざましかった。

中学校に乗り込んで好きな子がいる男子の告白をサポート、玉砕した彼をしっかりとフォローする。直売所のお嬢さん(83歳)にいくつに見える?と聞かれ「68歳」と絶妙なラインをつく。彼氏がいない女子高生二人組に遭遇すれば、どうして彼氏ができないのかお互い言い合わせ、最後カメラに向かって彼氏募集中の告知をさせる。

『モヤさま』や『ぶらり途中下車の旅』など、芸能人が街をブラブラして素人と絡んでいく番組は多く、それに比べれば上記の絡みはベーシックな部類ではあるが、その基本ができない芸能人も多い。それを一介の梨の妖精がこなしているのである。

ふなっしーが持つのは、トークやロケのスキルだけではない。

昨年、ふなっしーが爆破ドッキリにかかったことがあった。

通常、着ぐるみに爆破ドッキリなどはかけない。意思の疎通を素早くこなせず、移動にも気を使う着ぐるみは、爆破にいたるまでの安全管理ができない。

ふなっしーはその条件を乗り越えてしまった。スタッフと会話ができ、身体能力も高い。事実、出来上がった爆破ドッキリの画は、次々立ち上る火柱をふなっしーが悲鳴とともに駆け抜ける、申し分ない出来になった。

しかし、ここで注目したいのは、ドッキリに至る前段階。

いまやドッキリの仕掛けでは定番となった、「ニセ番組」の段取りが組まれていたのだ。

そのニセ番組は、ゆるキャラのみが出演するゆるキャラ番組だった。ふなっしーと同様にしゃべるゆるキャラ・ちっちゃいおっさんが、ふなっしーとコンビになってMCをするのである(ドッキリは、ちっちゃいおっさんがふなっしー人気を妬んでふなっしーを爆破する体になっていた)

ゲストもゆるキャラで、人間は一人もいない。そして他のゆるキャラはしゃべらない。

MCにとってこんな厳しい条件は類を見ない。ロケVTR撮りとしてドッキリは始まったのだが、挨拶、キャラ紹介、コーナー前振りなど、ふなっしー&ちっちゃいおっさんは見事なコンビネーションで番組を回し、通常のバラエティロケVTRとして観られるものなっていた。ナレーションの垂木勉も、イッテQ!のあのノリで「意外と観れる!ゆるキャラだけの番組」と語るほどであった。

その後、ふなっしーが風船で空を飛ぶ!という流れで、大きな風船に近づくがヘリウムガスに引火、ふなっしーは火柱の中を逃げ延びた。悲鳴をあげながら走ったが、甲高い声のままだったので「爆破されてもふなっしーボイスをキープ!」と評価されていた。

トークも、ロケも、MCもできる。リアクションも取れる。

加えてふなっしーは賢い。クイズ番組でも活躍し、中国語がペラペラ。中国語は3年間勉強したらしい。トークの切り返しも地頭の良さから来ているのだろう。

そしてこれだけテレビ向けスキルがありながら、ゆるキャラゆえに女性スキャンダルが無い(たぶん)

もう200回以上はテレビに出ているであろう、テレビ万能細胞のふなっしー。まだまだテレビの中でヒャッハーと飛び回るのではないかと思うのだ。