恐ろしき四月馬鹿

「犯人がわかりました!警部さん、皆を大広間に集めてください」
「なんだって!犯人は一体誰なんだ!?」
「上原さんです」
「あの善良そうな娘が……!?」
「善良そうな振りをして、大旦那のお茶に毒を持ったのです」
「善良そうな顔して……」
「善良そうな顔をして、死んだ大旦那の悪口を2chで言いふらしていたんです」
「善良そうなのになぁ」
「善良そうなのに、その悪口をまとめブログにしてアフィリエイト収入も得ていました」
「なんで善良そうだと思ったんだろう」
「今となっては最大の謎です」
「よし、すぐに確保だ」
「待ってください」
「なんだ」
「ウソです」
「え?」
「今までの話はウソです」
「え」
「犯人は上原さんじゃないです」
「なんでそんな嘘つくのかね」
「エイプリルフールなので」
「今やることかね」
「様式美なので」
「Yahoo!とか円谷プロとかその辺に任せたらどうかね」
「とにかく、皆を大広間に集めてもらえますか」
「わかった」
「先にうちの助手の小林くんも向かっています」
「小林くんか。心強い」
「ウソです」
「またかね」
「またです」
「誰も行っていないのだな」
「佐藤くんが向かっています」
「そこがウソなのかね」
「そして助手ではなくて叔父です」
「そこもかね」
「佐藤さんです」
「叔父だからね」
「ところで、皆さんは大広間に……」
「いま集めようとしているんだよ」
「ウソです」
「集めなくていいのかね」
「この屋敷に大広間はありません」
「おかしいと思ったんだよ」
「6畳風呂なしです」
「屋敷ですらないもの」
「そして犯人ですが……」
「わかってないのかね」
「賢い人にしか見えません」
「バレバレのウソじゃないか」
「失礼しました。この事件には……犯人はいないのです」
「いない?」
「不景気による倒産、押しかける借金取り、上原さんとの不倫による泥沼の離婚劇……八方ふさがりになった大旦那は、自らのお茶に毒を盛り……」
「まさか……自殺……」
「……」
「……」
「ウソです」
「やっぱり」
「不倫相手は上原さんじゃなくて叔父の佐藤さんです」
「そこかね」