鳥飼否宇『痙攣的』

美術論とキテレツな殺人事件を絡めた短編集…のつもりだったのに本の真ん中まできて一気にUターン。とんでもないバカミス全開フルスロットルに!ええっ!なんだこりゃぁぁぁぁ。

従順で真面目でちょっとお茶目な子だったのに、なにがきっかけであんなにグレてしまったのか…と言わんばかりの否応なしの積木崩し。思っていたレールと全然違う方向に連れて行かれて一人旅。面白いけど認められない、爆笑しながら大遠投、評価軸もぶるぶる震える痙攣的。羊の皮をかぶったバカミスの生き様を見よ。もー、いかにもイカサマでいかがわしくもいかんともしがたい。

鳥飼否宇『逆説探偵―13人の申し分なき重罪人』

初・鳥飼否宇。綾鹿警察署の刑事・五龍神田(注:苗字)の周りに起こる数々の怪事件。情報源のダンボールハウスに向かっては、正体不明のホームレス・十(注:「つなし」。苗字)がポツリとだすヒントに右往左往。事件の裏にある「逆説」な真実とは。

全330Pの中に短編13本なので、1編あたり約25ページ。事件も解決もややこしいのが多いので必然的にページ数を食い、結果として事件発生→説明→解決が急流で、あっという間に終わってしまう。吟味する間もなく次の短編。もうなにがすごいのか不可思議なのかわからない状態に。

最後に全体通した連作短編的なオチもつくのですが、落ちついて膨らませば濃い短編になりうるネタも個々にあって、ちょっともったいない。贅沢ととるか早急ととるか。謎グルーヴ逆説トランス。