「とる」コマンド

ところで、あけましておめでとうございます。
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「ポートピア連続殺人事件」などのファミコンのアドベンチャーゲームで、よく「とる」というコマンドがあったけど、あれって結構ぼんやりとしたコマンドなんではないかと思った。物を取得するばかりが「とる」ではないではないのか。

コマンド:とる
「なにをとりますか?」

>かみん
 でまえ
 ふくめん
 はば
 たすうけつ
 すもう

突然聞き込み相手とがっぷり四つになる刑事。3Dとかじゃなくて、ゲームの自由度がこういう方向に進化していたらよかったのに。

童話:DSとPSP

電車に乗ったら、ドア付近で小学生くらいの男子4人が互いに顔を突き合わせ、携帯ゲームに夢中になっていた。

なんだね君たちはWiFi対戦でもやっているのかね、と思ったが、よく見てみるとちょっとおかしい。

PSP、PSP、PSP、DSなのだ。

PSPとDSで通信て、いやいやそんな夢のコラボないよ。PSPの子はなにやらモンスターと戦ってる様子だけれども、なにやってるの、DSの子は。混ぜてほしいけど無理だから、気持ちだけなのか?新型PSPを買った子のための付き合いなのか?ただのたしなみなのか?

あまりに不憫ではないのか、と思ってさりげなくDSの子の画面を見てみたら、彼がプレイしているのは英語の勉強のソフトだった。

街の片隅で、小学生たちを包み込む、アリとキリギリス的な何かを見てしまった。

米光一成『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』

リーダーは、つらい。

その原因の一つに部下の先頭に立って物事を成し遂げるプレシャーがある。そんなタイプじゃないのに「俺について来い」的な感じにしなきゃいかん時がある。

そうじゃなくて、みんなでわいわいと働いて、共にレベルアップしつつ目標が達成できたら。

著者(→こどものもうそうblog)は「ぷよぷよ」「バロック」「トレジャーハンターG」などを手がけたゲームディレクター。自身の経験から「プロジェクト(仕事でも趣味でも集団で作る物事すべて)」をまわすヒントをあげた本作は、ビジネス書にしてはかなり薄く、ゲームの攻略本のような体裁。しかしその中身は気づきに溢れているのである。

プロジェクトをRPGになぞらえて、アナタは勇者であり、仲間を集めてパーティーを作り、王様(=上層部)の無理難題をそこそこ聞き、パーティーをレベルアップさせながら最終目標に向かう。昔から知ってる概念だけによく理解でき、かつ、その概念がいちいちよく現実に当てはまるのですよ。

よくあるプロジェクトの方法論ではなく、もっと根っこの、もっと人の心の部分からはじめているのが、この本の大きな強み。「イエスアンド」による会議の仕方、「自分マトリクス」「インタビュー」による人の特性のつかみ方、「コンセプトフレーズ」によるベクトルの合わせ方、などなど、プロジェクトを生かすも殺すも結局は人の気持ちの引き出し方によるのだなぁ、と改めて思った次第です。

この世の全てのリーダーにオススメ。

ただ一つ難点があるとするならば、本のタイトルが覚えにくいことかな…。略称をつけられないかしらん。しごひゃくぷろ?

麻野 一哉 飯田 和敏 米光 一成『日本文学ふいんき語り』

Exciteブックスで連載されていたベストセラー本ゲーム化会議の単行本化。前作『ベストセラー本ゲーム化会議』であらゆる本を妄想でゲーム化しちゃったゲームデザイナー3名が、今度は日本近代文学に挑む。『文豪の部』と『ベストセラーの部』の2部構成。なんとPR用のブログまであります→日本文学ふいんき語り

このお三方、特に近代文学に詳しいとか一家言あるわけでもないため、フラットな状態からそれはそれは自由に文豪たちをいじくりまくり。太宰治の台詞廻しに爆笑したり、宮沢賢治を中二病扱いしたり、夏目漱石『こころ』の優柔不断の先生に「ほうれんそう(報告・連絡・相談)がなっていない!」と突っ込んだり。もう自由自由。「国語」にこんなに自由なツッコミをかます、というのがまず新鮮。

その自由の末に生まれるゲームたるや、『こころ』恋愛シミュレーションや『痴人の愛』ネット募金や江戸川乱歩ランド構想まで多種多彩。ゲームという木枠にグリグリと文豪を押し当てて、新たな鑑賞ができる一枚の絵に仕立て上げちゃう。馬鹿話の末の夢物語。おもしろい。