子供の頃、ファミコンを持っていなかった。
ファミコンが大流行した当時、親とファミコンを買いに行ったら売り切れだった。出直せばいいのに、その場でエポック社スーパーカセットビジョンで妥協してしまった。
でもやっぱり友達のうちでやるファミコンはおもしろかった。持ってないのは僕ぐらいだった。ファミコンをやりたくて、ファミコンを持っている友達の家を毎日渡り歩いた。一緒にロードランナーを解いたり、アイスクライマーで喧嘩したりした。
あまりに家を渡り歩くので、親が「カセットだけでも買おうか」と言った。人のファミコンで自分のカセットを挿すってちょっとそれはどうかと子供心に思って断った。それでよかったと今は思う。
自分のスーパーカセットビジョンは珍しがられて友達も楽しんでいたが、コントローラーが変で、なんだか恥ずかしかった。珍獣を見に来るノリだった。完全にイロモノ扱いであった。
当時のファミコンの知識は全部友達のうちで覚えた。マリオの1UPキノコの場所も、ポートピア連続殺人事件の結末も、たけしの挑戦状の不条理さも。
ドラクエも、友達のうちで友達が攻略してるのを延々見てた。人が家に来てるのにRPGやるのはどうかと今は思うけど、当時は見てるだけで十分エンターテイメントだった。ちょっとやらして、とコントローラーを借りて、うっかり「ぎんのかぎ」を捨てたことがある。二度とやらせてくれなかった。見てるだけでよかった。
親にファミコンを隠されてしまった友達と、一緒にファミコンを探したこともある。押入れの奥にあった。一緒にレッキングクルーを遊んで帰った。あの後どうなっただろう。
友達のうちに遊びに行って、友達のおかあさんに「まだ帰ってきてないから部屋にあがって待ってて」となった時はもうテンションMAXだった。友達のファミコンの好きなソフトを一人で気兼ねなくできた。最高だった。このうちの子供になりたいとさえ思った。
もう、いつかアメトーークで「ファミコン持ってなかった芸人」やってくれないかなと思っている。すっごいたくさんエピソードあると思う。