伊坂幸太郎『チルドレン』

まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第一作。

テンション低め安定。緩やかに紡がれる短編のような長編。短編それぞれのネタはミステリ的には割と基本ネタだけど、出来事の前後にある「正義」の形がまた良いのだ。最初はうざかった陣内のキャラが終いには畏敬に変わってました。日向を歩く。まっすぐに。

霞流一『ウサギの乱』

登場人物がおっさんばかりで区別がつかないまま終わってしまった…。

全体的になんか無駄が多いなぁ。ゴテゴテしてる。前代未聞の密室トリックが出てくるんだけど、いまいちサプライズにつながらない。このころにはバカミスのオーラに包まれまくっているので、どんな不可能犯罪でも「ふーん」になってしまうのだった。

慣れとは恐ろしい。

恩田陸『上と外』

画像とリンクのテストも兼ねて。刊行時には1年かけて6冊の文庫で出版された本作ですが、これは1冊で一気に読んだ方が緊張感も続くし評価も上がる思います。かくいう僕は文庫版6冊を古本で買って一気に読んだんですが、この読み方がベストかもしれない。この後どうなるんだ…!というところで1冊終わって、一息ついて次へ、という感じ。

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』

「夜が好きなんだ」と泥棒は今日も盗みに入った。「救われたい」と青年は信者になった。「あの女のせいだ」とカウンセラーは不倫相手の妻を殺すことにした。「働きたいんです」と無職の中年は肩を落とした。「金で買えないものはない」と画商はふんぞり返った。泥棒が失態をおかし、青年が神の解体を知り、不倫カップルが車で人を轢き、中年が老犬と拳銃を手に入れ、画商が新幹線に乗ったとき、物語は急速に動き始める。

五つの人生が本人の知らぬところで交錯して干渉して邪魔して手助けして陥れて癒してと、大混乱の人生狂想曲。これに「バラバラ死体が元通りにくっついて歩きだす」という都市伝説が現実になったりしてなんかして、もうエンタテイメント満載。ラストでは全体を包む大仕掛けも明かされて、おなかいっぱいでご馳走様。

中盤にかけては徐々に絡んでくる程度なんだけど、実は伏線がそこかしこに張られているのが凄い。「この人達絡んでますよー」と見せつけるんではなく、そこで絡んでいたのか!と後で気づかせることで全体像を一気に浮かばせる。この辺が同じ多重人生交錯もの『ドミノ』とは違う感じ。巧みな言葉回しでそれぞれの人生も深く面白く描かれているし、これはいい!十人十色の人生模様を照らすのはたった一つの太陽。日はまた昇り繰り返していく。