クリスチアナ・ブランド『疑惑の霧』

深い霧の中の疑心暗鬼の七人。それぞれが犯人を指摘しあって仮説だらけの中盤終盤。あんだけ引っ掻き回したくせに真相は姿を見せず、あげくドエライところに隠れていて驚き千万。霧の煙幕に五里霧中。

エリザベス・フェラーズ『私が見たと蝿は言う』

ミス・フラーとミス・フラワーが同じアパートに住んでるのはいかがなものか。両方とも性格悪いしで最初区別つかなかったよ…。フェラーズは相変わらず登場人物全員怪しすぎ。それがミスディレクションにもなるのだけど、犯人の意外性が薄くなってしまうのもまた諸刃の剣。

恩田陸『Q&A』

久々の恩田陸だったけど、相変わらず「見えない不安」を書くのがうまいなぁ。インタビュー形式で少しずつ事件の不気味さがわかってくる様子が巧み。章毎に変わる質問者(or回答者)の会話に文字数を割ける分、絶妙な言い回しや様々なエピソードを挿入しやすいのも勝因か。そんな緊迫の序盤から後半は奇妙に捩れつつあらぬほうへ抜けてしまって、この辺も相変わらずな感じ。

それにしても帯が怖すぎる。bk1は書影に帯がなくて、Amazonにはあるのだけど、これだけで売り上げが変わりそうな予感が↓

麻耶雄嵩『名探偵 木更津悠也』

京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。しぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは?一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)。京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。本格推理の極北4編。

極北、までは行かないにしても発想が捩れ気味。「交換殺人」の図式の捻くれようといったら。mustというよりmoreを求める人向き。その名探偵には保護者が付いている。