米澤穂信『クドリャフカの順番』

古典部シリーズ3作目。いよいよ始まった文化祭。手違いで200部も刷ってしまった文集を前に愕然とする一同。部の知名度をあげて文集完売を目指すためにあの手この手。遂には学内で起こった連続盗難事件に挑むことに。

前作まで折木の一人称だった文体が、古典部の部員4名の視点で細かに変わる。今まで触れてなかった各人の心中を覗くことができて、キャラに一層深みが増しております。浮き足立った文化祭の雰囲気や、思春期ゆえの諍い等も絡め、あぁ懐かしいな高校時代と浸れる展開。事件はミッシングリンクもので、発端・真相に一理あれど、推理の展開はちょいと飛躍しすぎか。とはいえ、わらしべプロトコルや料理対決などのくすぐりも楽しく、ラストはちょっと苦く切なくの展開はまさに米澤プロトコル。文化祭が終わって一区切りついて、この先このシリーズどうなるのか。私、気になります。

米澤穂信『愚者のエンドロール』

古典部シリーズの2作目。収穫。これは収穫だ。安孫子武丸『探偵映画』、バークリー『毒入りチョコレート事件』を意識したとあとがきで触れられている通り、一つの事象に幾つもの推論を重ねていく展開なのだが、これに主人公・折木の「探偵の自覚」に発火をさせ、探偵の誕生と謎解きのジレンマを交錯させ、それを青春ミステリとして形作るという偉業。shakaさんも書いていたがホント志が高い。このページの薄さの中に幾つの手がかりと伏線が散りばめられていたことか。

ただ『探偵映画』の時も自分はそうだったのだけど、作中人物が映像で観たものを文章で表して推論を重ねていると「なんでもあり」感が出るせいか緊張感が薄れてしまう。また、折木の一視点であり、周辺人物がポイントで絡む印象だからか、もっと厚みを!と食い足りない。

でもまぁそれは欲というもの。スニーカー文庫でここまでやったらいいでしょ!途切れたフィルムに、灰色の日々に、ピリオドを打つ物語。