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石持浅海
石持浅海『セリヌンティウスの舟』
舞台はマンションの一室。ダイビングの打ち上げの夜、酔いつぶれた仲間たちのいる部屋で、彼女は青酸カリを飲んで死んでいた。遺書を残し、明け方に、ひっそりと。四十九日があけて、集まった残りの仲間5人。自殺と思われていた彼女の死だが、現場を写した写真に不審を覚える。青酸カリの入った小瓶のキャップが閉められている…。青酸カリを飲んだら即死なんじゃなかったか?だが待てよ、もしキャップが開いていたら、散布された青酸カリのせいで、雑魚寝していた自分たちも巻き添えになっていたんじゃないか…?
この登場人物たち、ただのダイビング仲間ではなく、「共に命がけで遭難を乗り越えたことで知り合った」仲間。そのためお互いの信頼は堅く、厚く、強いものとなっている。このバイアスがこの話をただのクローズドサークルで終わらせない。「彼女が裏切るはずがない(巻添えにするはずがない)」を大前提に、小瓶の位置や死体の姿勢を事細かに検証していく。まるでもう一度荒波に落とされたように、マンションの一室は漂流する。
丹念な推理合戦はとてもスリリングであり、もはや作者の真骨頂なのだが、動機となるとこれも真骨頂で、相変わらず「高度」なものになってしまうのだった…。今回は登場人物が特殊な繋がりなのもあって度合いが増している印象です。
それにしても、『扉は閉ざされたまま』
で「扉を破らない密室もの」を書き、本作でも「心の底までわかりあっている者たちのクローズドサークル」を作り出す。今年の石持浅海はセオリーの逆を行く。そこに今までの本格推理のまだ見ぬ平野が広がっているのかもしれないですなぁ。
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石持浅海『扉は閉ざされたまま』
ドアを破らない密室もの!
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
本格推理はこんなことができるのか。密室状態を破ることなく進む犯人対探偵の倒叙もの。彼はなぜ部屋から出てこないのか、という疑問をベースに知と知が生み出すこのスリル。推理の穴や動機の腑に落ちなさはともかくとして、ここは思考遊戯の極みを楽しみたい。いやー、面白かった。
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石持浅海『水の迷宮』
行動原理的は荒唐無稽だが、感動方面のベクトルがめっぽう上向き。元々その傾向があった作者だけど、今回はその乖離が飛びぬけて激しいなぁ。小さなトラブルに対する対処等はとてもクレバーな面があるのだけど、全体通すと「そんなことしなくたって!」とツッコミの虫がうずくのだった。評価難しい作品だと思う。割と二つに分かれるのではないのか。
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