霞流一『プラットホームに吠える』

いつも作品に動物を絡ませる霞流一ですが、今回のテーマは「狛犬」と「鉄道」。そのココロについてはあとがきで作者が述べているので割愛しますが、うーん正直どちらも生かしきれてないような…。

「マンションからマネキンと共に墜落した女」「プラットホームで起きた通り魔事件の不可思議な動線」「密室状況で丸いギロチンで切断された男」という事件の裏に「狛犬」という縦糸が通っている構図。よく考えられてはいるものの、読み終わってもスッキリしない。ギロチン密室は見取り図もないのに延々と建物について論争してたりとか、被害者心理の解釈が予定調和っぽいとか、所々に雑味を感じてしまう。端役・脇役まで濃いキャラ付けをしてるせいか、証言一つ取るにもすごい喋られて大騒ぎなのも一因か。

神社で立ち聞きした「狛犬に関する奇妙な会話」から『九マイルは遠すぎる』のような推論を展開するところまでは面白いなぁとは思うのですが、全体的にどうにもこうにもゴテゴテした手触りのお話でした。うーん。

霞流一『スティームタイガーの死走』

人間消失に列車消失、はたまた出版元(ケイブンシャ)も倒産で消失という消え物づくし。

霞流一にしては二人しか人が死んでないのにスピード感溢れる展開。バカトリック・バカギミック大盛りと二重三重のラストでこのページ数ならお得感もあろうというもの。事件が解決されるのが正義のためでもなんでもなく、不可能状況に陥った登場人物が「スッキリする」ためだけに存在しているのもある意味潔いか。

霞流一『ウサギの乱』

登場人物がおっさんばかりで区別がつかないまま終わってしまった…。

全体的になんか無駄が多いなぁ。ゴテゴテしてる。前代未聞の密室トリックが出てくるんだけど、いまいちサプライズにつながらない。このころにはバカミスのオーラに包まれまくっているので、どんな不可能犯罪でも「ふーん」になってしまうのだった。

慣れとは恐ろしい。