池上彰ヒストリーから学ぶ、伝えたいという気持ち 『わかりやすく〈伝える〉技術 』

2013-02-20 16.05.06

ご存知池上さん。もはや「わかりやすい」の代名詞、伝道師であります。

池上さん、NHK出身ということは割と知られていると思うんですけど、「元アナウンサー」だと思ってる人いませんか?

僕もつい最近まで勘違いしてたんですけど、池上さん、元は記者なんですよね。元々しゃべりが本職じゃないんですよ。

それであの語り口なんです。

本来しゃべる職業じゃない記者が、どうやってあの「語り」を身に付けるに至ったか。その経験から「わかりやすさの技術」を教えてくれる本書は、まさに「池上彰ヒストリー」。

すべては「現場」を伝えるために

池上さんが「わかりやすさ」について真剣に考え始めたのは「現場リポート」をするようになってから。

当時は中継を映像を流しながらアナウンサーが原稿を読むのが主流。今では当たり前の「現場レポート」を、記者としてやるようになった先駆けだったそうです。

先駆けなので、やったことがある先輩がいない。全てが手探り。アナウンサーが読んだ原稿を、再び現場で読んでも意味がない。現場の状況を伝えないといけない。「いまどうなってる」を伝えないといけない。臭いを伝えたり、カメラを連れて現場を歩いたり、他人が書いた原稿を書き換えたり、自分でいろいろ工夫をした。

そんな「わかりやすさ」の試行錯誤をしていたら、今度は記者の自分がキャスターに抜擢される。平日20:45から15分間の首都圏向けニュース。もちろん生放送。ガチガチに緊張する池上さん。

自分はしゃべりのプロではない。ではなぜ起用されたのだろう…と考えて、記者ならではの解説を求められているのだ、と行きつく。毎日のニュースを図解して、解説して、フリップも作る。

その後「週刊こどもニュース」に起用されるが、今度は子供たちに自分の「常識」が通じないことに愕然とする。そこから説明がいるのか!ということばかり。ここでもまた、「わかりやすさ」を求めていく。

池上さん、「わかりやすさ」を追い求めた結果、いろんな仕事が後からついてきてるのだ。

「わかりやすさ」は誰のためのものか

池上さんが必要としてきた「わかりやすさ」は、現場ごとに違う。

つかみを大事にして原稿を書いたり、階層を意識してプレゼンしたり、模型を使って説明したり、池上さんはその現場に合わせて「わかりやすさ」を考えてきた。

この本ではそれぞれのノウハウを惜しげも無く公開してくれる。でもノウハウだけ真似しても、たぶん池上さんには近づかない。

伝えたい事、伝えたい相手、場所や時間やタイミング、すべてをきちんと考えて「わかりやすさ」はできるのだ。「わかりやすさ」は自分のためじゃなく、相手をおもってこそなのだ。

伝えたいことは、もろい。

相手の心に届くまで、変形し、歪み、黒ずんだりする。

伝えたいことを、なるべくそのまま、優しく優しく、相手の心に運ぶ。

その柔らかな手つきこそが、「わかりやすさ」を生むのだと思う。

「池上彰が密室殺人事件をわかりやすく解説!」

昨夜Twitterで、あっ!と思ったこと。

@tsuruba: 誰もいわないというか、聞いたことがないのでいうけれど、池上彰さんの語り方って「名探偵」そのものじゃないですか。

「白黒学派」の蔓葉信博氏の発言より。(彼が寄稿した「ユリイカ2011年3月号」絶賛発売中!)言われてみれば確かになぁー。

話の落ちる先をわかっていながら、わからない人と同じところから話をスタートして、徐々に落としどころに誘導していく。まさに池上彰=名探偵の謎解きの論法じゃないか。

ちょっとやってみましょう。

池上彰「さて、みなさんにお集まりいただいたのは他でもありません。」

「池上彰が密室殺人事件をわかりやすく解説!」

池上彰「今回の事件のポイントを3つにまとめてみました」

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もしも池上彰がテレビに出続けていたら

あけましておめでとうございます。

池上彰氏が3月末でレギュラー番組を全て降板するらしい。

本業の執筆活動やジャーナリストとして足を使った取材ができない、というのが理由とのこと。特番ぐらいは出るらしい。

「いい質問ですねぇ!」が流行語に選ばれたりしてるけど、この前なんかテレ東で「池上彰が解説するサウンド・オブ・ミュージック」なんてやってて、このままだとテレビにいいように使われてしまうところだったかもしれない。

テレビに出続けてたら、変な仕事が次々きちゃうところだったはずだ。
 

・「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対」を池上彰が分かり易く解説!
 

・そうだったのか!池上彰の絶対笑ってはいけないニュース24時
 

・ゴチ12に池上彰参戦!飲食店の利益の仕組みを分かり易く解説!
 

・いけがみ!
 

・「カウントダウンTVをご覧の皆様こんばんは。池上彰です」
 

・歌丸「さて、近頃は領土問題や金融不安など外交の課題が増えてきています。そこで皆さん、各国の首脳になって悩みをうち明けてください。私が「そりゃ困りましたねぇ」と返しますので、さらに続けて答えてください。おっ、池上さん早かった」 
 

まったく、危ないところであった。 それにしても自分のやりたい仕事にブレがないのは偉いことだと思う。本当に。

1975年12月20日生まれ

僕の誕生日は1975年12月20日です。ユリ・ゲラーと同じ。

誕生日の花ってのがあるじゃないですか。誰が決めたのかよく分からないですが、誕生石みたいに366日それぞれに花が当てはめれているやつ。本があったりネットで検索したりすると出てきます。

これによると12月20日の誕生花は「パイナップル」と「クリスマスローズ」らしいんですよ。

この寒いのになんでパイナップルなんだ、そもそも花なのか、と思うのだけど、この花言葉がすごい。「完全無欠」。もうなんか自分が生まれながらに完璧であるような錯覚に陥りかけるのですが、もう一つのクリスマスローズの花言葉が「私の不安を取り除いて」。ちっとも完全無欠じゃなかった。不安だった。
 
そんな僕が先月の12月20日、人知れず34歳になりました。

そして今日、本屋でたまたまこんな本を見かけました。

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