「このどんでん返しがすごい!」たった一行で世界が反転するミステリ7選

人力検索はてなにこんな質問がありました。

【絶対にネタバレを見てはいけない小説】を教えて下さい。詳しくは以下の条件すべてを満たしての回答をお待ちしてます。 ★途中やラストに何がしかの真相が明かされ、怒涛.. – 人力検索はてな

「怒涛の展開・どんでん返し」がある小説を教えてください、という質問なのですが、「ミステリー以外」という条件付き。

いやーこれこそはミステリの腕の見せ所ではないのか、というわけで、上記の質問の回答に載ってるもの以外で、個人的に「たった一行」真相を書かれただけでひっくり返って驚いたミステリを7作品あげてみました。秋の夜長にいかがでしょうか。

なお、「この作品はどんでん返しがあるよ」と聞くだけでネタばれになる危険がございます。それを聞いてもなお面白い作品を選んだつもりですが、どうしてもネタばれが気になる方はご注意ください。

  • 綾辻行人『十角館の殺人』
  • 倉知淳『星降り山荘の殺人』
  • 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』
  • 筒井康隆『ロートレック荘事件』
  • 殊能将之『ハサミ男』
  • 歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
  • 泡坂妻夫『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』

綾辻行人『十角館の殺人』

言わずとしれたマスターピース。「あの一行」を号砲に始まった、新本格のスタート地点。「十角館」を目当てに瀬戸内海の孤島を訪れた大学ミステリ研の7人。彼らを襲う連続殺人と、半年後に本土で行われる真相の究明が交互に語られ、やがて出会う衝撃。やはり今でも忘れてないですなぁ。

倉知淳『星降り山荘の殺人』

一方こちらは陸の孤島。雪に閉ざされた山荘に集まったUFO研究家やスターウォッチャーを襲う惨劇。フェアな犯人当てと銘打って、各章のはじめに但し書きを細かく配置して、全ての推理の材料が提供されて…も、やっぱり騙される。これは悔しかった…。

東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』

“雪の山荘”をもうひとつ。『探偵ガリレオ』まさかの月9でおなじみ東野圭吾から。『仮面山荘殺人事件』もいいけど、あえてこちらを。オーディションに合格した7人がペンションに集められる。最終選考は「豪雪で閉じ込められた山荘での殺人劇」の設定での舞台稽古。しかし稽古のはずが、一人また一人と姿を消していく。芝居なのか?本当の殺人なのか?この設定だけでも心惹かれるのに待ち受けるサプライズは半端ない。

筒井康隆『ロートレック荘事件』

山荘つながりで。これもいわゆるクローズドサークル。ロートレックの作品で彩れられた邸内。決して広くない間取り、数少ない容疑者、それでも繰り返される殺人。読んだのだいぶ昔なんですが、あまりにびっくりして手が震え、ページをクシャっと折ってしまった思い出あり。最後まで読んだら必ずもう一度最初から読み直すはめになる、大御所の技の数々を堪能すべし。

殊能将之『ハサミ男』

クローズドサークルに飽きたらこれを。少女を殺害し、首にハサミをつきたてる連続殺人犯「ハサミ男」。次の犠牲者を探すハサミ男は自分の模倣犯の存在を知り、”犯人探し”を始める。シンプルかつ大胆に仕掛けられた一点の逆転。ミステリを読みこんだ人でもうっかりしてやられる巧妙さは必見。

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

2003年度「このミステリーがすごい!」第1位、「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第2位、第4回本格ミステリ大賞小説部門受賞、第57回日本推理作家協会賞長編部門受賞、まさにDHCのCMばりにランキング総なめだった本作を外すわけにはいかんかと。トリックで明らかになる表題の意味に感嘆した覚えあり。

泡坂妻夫『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』

最後にとっておきの飛び道具を。新興宗教の教祖継承騒動をめぐる二時間ドラマのような騒動、B級イラストの装丁、すっかり油断したラストに明かされる、全241ページに仕掛けられた驚愕の仕掛け!マジシャンでもある著者にしかできない、この世でたった一冊しか存在しないトリック。手に入れたら家宝にするべき。

ホントは10個にしたかったんですが、途中で力尽きて7つになっちゃいました。『慟哭』 『アヒルと鴨のコインロッカー』 『イニシエーションラブ』 『殺戮にいたる病』はもとのはてなの質問にあるので除外してますが、なんか足りない気がするんだよなぁ…。コメント欄を開放しておきますんで、あれを忘れてるよ!これもおススメだよ!ってのがあったらコメントいただけると幸いです。

e-NOVELS編『川に死体のある風景』

「自由に川を設定し、死体があるところか始める」という縛りでミステリ作家が短編を競作した短編集。e-NOVELSと東京創元社「ミステリーズ!」との連動企画であり、通称「川ミス」。

水面に浮かんでいた”死体”が起き上がり、自分を流した張本人に危険が迫っていると言う「玉川上死」(歌野晶午)/同じ場所に車が3台も沈んでいた長良川下流。偶然か?殺人か?「水底の連鎖」(黒田研二)/遭難者を探す山岳救助隊。小屋に残ったはずのリーダーがなぜか沢を滑落死。誰もいなかったのになぜ?「捜索者」(大倉崇裕)/舞台はコロンビア。蜂の巣にされた水死体と刑務所の脱走騒動の顛末「この世でいちばん珍しい水死人」(佳多山大地)/近所で見つかった水死体。見覚えのある顔は”あれ”に取り憑かれていた…「悪霊憑き」(綾辻 行人)/桜川に浮かぶ美しすぎる少女の水死体。それを撮った写真は何のために?「桜川のオフィーリア」(有栖川有栖)

執筆陣が豪華なだけあって、全体的にレベル高し。「川に死体」という設定が読み手のビジュアルを喚起しやすいためか、物語の中に没頭しやすい。最初聞いたときはそんなに惹かれる設定じゃなかったのだけど、読んでみて納得。作家の演出によっては幾つもバリエーションが生まれ、事実このシリーズでは似たシチュエーションは全くなし。まだまだ出来るんじゃないかな。

ずばりマイベストは「捜索者」(大倉崇裕)。ハウダニットの興味と犯人指摘の決め手のシャープさ、そして山岳ミステリ特有の男気が絶妙なバランス。もう川、というより山、なのだけれど、そんなことはお気になさらず。多種多様な川の流れに向けたミステリ作家の腕試し。e-NOVELSには特集ページもあります