吾輩はシャーロック・ホームズである 柳 広司 小学館 2005-11 |
ワトソンの元に連れられてきた奇妙な日本人。K・ナツメという名の彼は自分のことをシャーロックホームズだと思い込んでいるらしい。折りしもホームズは不在。知人の依頼により、治療の目的でナツメを預かることになったワトソンであるが…
イギリス留学中の夏目漱石が、渡航のストレスから自分をホームズと思い込むという、なんともトンでもなスタート。初対面のワトソンを思いっきり格下扱いですが、部屋に転がってるステッキから持ち主を推理するものの大ハズレ。女子に弱くて自転車にも乗れない。偉そうだけどトンチンカンな愛すべきキャラになってます。
この二人が参加した降霊会で殺人事件が起こるわけです。で、一見、本格ミステリ的に「ベタ」に見えるこの事件が、時代背景やホームズの世界感を絡めた大きな流れに乗っかっていくのが見どころでしょうか。不可能状況の解決とその背景にあるもの、この核と枠を既存のホームズ作品から再構築する手際はなかなかに高度。おぉー。
そうそう、事前に「バスカヴィル家の犬」と「ボヘミアの醜聞」を読んでおくとモアベターかもですよ。