『ゴールデンスランバー』(→感想)と対をなす、540ページの冒険。『魔王』(→感想)から50年後の世界で起こる「監視」とは。
主人公の渡辺拓海はシステムエンジニア。浮気を疑う妻が差し向けた刺客に、拷問を受けるところから物語は始まる。仕事でかかわることになった「ゴッシュ」なる会社の検索システムに異常なコードを見つけた渡辺たち。その後、ある言葉で検索した人々に次々に不幸が襲い掛かる。
モーニングに1年間連載されたものを元に加筆修正した本作。上のあらすじでいきなり拷問だ検索だときてますが、まだまだこんなもんじゃなく、展開は予想もつかないループコースター。
独特の言い回しや強烈なキャラクターなど、伊坂幸太郎の世界を楽しめるのはもちろんなのですが、同時期に書き下ろされた『ゴールデンスランバー』とどうしても比べてしまう。緻密な伏線が効いた『ゴールデン~』に比べ、連載という形態もあってか本作はどうも一本槍で、予想のつかない展開も悪く言うと「行き当たりばったり」に感じてしまったり。
とはいえ、『魔王』を楽しめた人は絶対読むべきで、『魔王』を読んでない人は読んでから読むべき。モーニングに掲載されたときの挿絵を一緒にのせた特別版もあります。

Googleストリートビューがすごくって、あちこち見ています。街中に立ってぐるぐる見回すのが癖になる。これ、首都圏だけじゃなくて仙台もカバーしているので、伊坂幸太郎めぐりができるかも?と思った。
というわけで、伊坂幸太郎作品の中に出てくる仙台の場所をいくつか拾ってみました。
仙台駅。『チルドレン』、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『ラッシュライフ』などに登場。
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書下ろし1000枚の本作はまさに「ベスト・オブ・伊坂幸太郎」といったおもむきですよ。政治の闇は『魔王』、親子の絆は『重力ピエロ 』、学生時代の友情が『砂漠』で、殺し屋といえば『グラスホッパー』。これら今まで発表した作品のエッセンスを1つに注ぎ込んだのが、この『ゴールデンスランバー』、と言うぐらいの伊坂全部盛りです。
仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。同じ頃、元宅配ドライバーの青柳は、旧友に「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と促される。折しも現れた警官は、あっさりと拳銃を発砲した。どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ。この巨大な陰謀から、果たして逃げ切ることはできるのか?
逃亡アクションものとしてはまだアイデアを盛り込める余地がありそうで、行き当たりばったりな展開もありますが、この作品の中心は繰り返し使われる「信頼と習慣」という言葉にあるような気がします。普通の人が逃げなければいけない目になったとき、何をどう信じたらよいのか?見えない絆が生む奇跡に心やられます。
リンクも健在で、見落としてる伏線もまだあるような気がするなぁ。読み終わった方は第2章と第3章をもう一度読むことをオススメします。伊坂幸太郎の入門としても、ファンサービスとしても、十二分に耐えうる一冊。タイトルの元になった、ビートルズが聞きたくなってしかたがない。

グッドウィルの折口会長の髪型が何かに似てるなぁーと思って、あ、Dr.マシリトじゃないか!?と思って調べてみたらそこまで似てなかった。
微妙すぎて話しが膨らまない。
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斉藤和義と伊坂幸太郎のコラボレーションの話をいまさら知りましたよ。次のシングルの初回限定版に書き下ろし小説がつくらしい。短編が2本。プレミアの予感がするけどどうなのか。入手困難になるかあっさり短編集に組み込まれたりするのか。激しく迷う。

人間嘘発見器・演説の達人・体内時計・天才スリの4人組銀行強盗が大活躍の『陽気なギャングが地球を回す』の続編。4人それぞれにスポットをあてた第1章は、刃物男・幻の女・謎の招待券・殴打事件と別々の事件が登場し、2章以降から社長令嬢誘拐事件と奇妙ににからんでいく。
相変わらずの好テンポで安心して楽しめる。第1章は元々独立した4つの短編をリライトしたもので、それぞれの主人公にスポットを当てている。なので、このシリーズの持ち味である「仲間同士のくだらない会話の応酬」を楽しめるのが2章以降(全体のほぼ半分)なってしまうし、それぞれの能力を組み合わせてトラブルを解決するのが面白かったりするので、この辺ちょっと物足りないのが残念かなあ…。
B級エンタの仕上がりを狙ったものの、狙いよりもちょっと低いところに球が当たっちゃったような印象。タイトルからして「日常」なのでライトな展開だけども、一からがっしりプロットを組んだものも読みたいなぁー、と、僕の中でますます期待値が高まる結果になっています。
「あと8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する」と発表されて5年後の世界。発表後こそ秩序は乱れ、殺人や略奪が横行したが、最近は小康状態が保たれている。舞台は仙台北部の住宅団地。混乱と終末の狭間で、人々は何を思い、過ごしているのか。
勘当した娘の訪問に心で怯える父親「終末のフール」、3年後に世界が終わるのに子供ができた「太陽のシール」、それでもトレーニングを重ねるキックボクサー「鋼鉄のウール」、屋上に建てたやぐらと家族のこれから「深海のポール」他を含む短編8つからなる短編集。連作になっているので、他の短編に他で出た登場人物があらわれたりして、世界が立体的になっていく。
地球滅亡を描いた小説・物語は多いが、本作の「8年前に地球滅亡がわかって5年後」という設定は独特のテンションを持っている。略奪や自殺が多発したため、物語中では人の死はあっけなく描かれ、混乱の爪あとはそこかしこに書き込まれている。その反面、舞台となっている団地は「安全な地を求めて移動する事をやめた人々」が集まっているので、どこか落ち着いた人が多い。平和でもなく地獄でもない、白でも黒でもないグレーな感じ。これがネガティブさを持ちながらポジティブにもなれる世界を作っている。
終わりが見えてきたからこそ生きることを考える人々を、伊坂幸太郎は独特のユーモアとシリアスを混ぜて描き出す。引用したい文がたくさんあるがやめとこう。一生を生きることは、明日を生きることと等価なんだと感じた。グレーを抱える彼らの姿に没頭する300ページ。世界が終わる前に、この本を。
伊坂幸太郎『砂漠』(→感想)内で、西嶋が愛読書としていた本書。『砂漠』にすっかりはまった身として、サブテキストのつもりで読んでみた。
小説かと思ったらエッセイに近い。サン=テグジュペリの飛行士として経験と、自然や人間の生き方について、思いのたけを綴った200P。ちょっと読みづらい箇所もしばしばあれど(原文も読みづらいみたい)、砂漠に不時着してから生還するまでを綴った章「砂漠のまん中で」からは目が離せず、生と死をさ迷っただけに次の章「人間」の内容が生きて見える。全体からどれだけ理解できたかいささか心許ないが、たまに現れる印象的なフレーズは確かに心動かすものだった。これからの人生で繰り返し読んでみたいと思う。