「最近忘れっぽい」が「みんな気のせい」な4つの理由 上大岡トメ&池谷裕二『のうだま2』

「脳細胞の数は子供の頃がピークであとは減るばかり」って、何かから教わりませんでした?

「1日に脳細胞が何万個も減るから頭が~」みたいに脅されませんでした?

……ウソなんですって。

マンガと共にわかりやすく脳のヒミツを教えてくれる「のうだま」シリーズの2作目。『キッパリ!』の上大岡トメ&『海馬』の池谷裕二のコンビ。

で、最初の話。脳細胞がどんどん死んでいくと思ってたよー。違うの?40歳も見えてきて、忘れっぽくなるし、覚えられなくなるし、年々頭が悪くなっているような…

というボヤキに、池谷さんはまさに”キッパリ”こう言うのです。

「気のせいです」

いやいや!そんだけ!?

でも本当に気のせいなんですって。脳細胞の数は3歳以降ほぼ一定で、100歳まで生きてもほとんど変化がない。劣化しない。ハードウェアは壊れない。問題はソフトウェアにある。

2011年12月(去年!)発表されたこんな研究がある。

18~22歳の若者と、60~74歳の年輩者を集めて記憶力テストを行う。「これはただの心理学の試験です」とだけ説明すると、若者と年輩者の点数はほぼ差がない。

ところが試験前に「このテストでは通常、高齢者のほうが成績が悪い」と説明を加えると、若者の点数は変わらないけど、年輩者の点数が約3割下がっちゃう。

「年齢を重ねると記憶力が下がる」という暗示にかかっているだけ

いや、でも、そのテストの時だけじゃないの…?とまだ疑ってみるけど、まだまだ「気のせいの理由」がある。

気のせいの理由、4つ

その1:大人のほうが知識量が多い

子供のころの世界は狭い。知り合いは親戚や学校の中に閉じている。対して大人。付き合いは増えるし、知識も経験も子供よりめっちゃある。

人名が思い出せなくなって…といっても、大人は知り合いや芸能人や歴史上の人物まで覚えてるわけだから、検索に時間がかかっちゃう。頭が悪くなったんじゃなくて、記憶量が増えたからすぐ出てこないのだ。

その2:若い頃は勉強中心の生活だった

小・中・高、大学、専門学校などなど、若い頃は一日の大半を学校での勉強=覚えることに費やしていた。

当時ですら期末テストなんかでヒーヒー言って覚えてた。対して大人、そんなに勉強に時間を使うわけじゃない。いつのまにか1日終わってる。つまり、覚える努力をしていないから、覚えてない。

その3:子供の頃と時間の流れ方が違う

「あの人の名前なんだっけ!最近会ったのに…」って言っちゃうけど、その「最近」って、いつからいつまで?

以前 子供と大人の「さっき」の違い でも書いたんだけど、子供の頃は1日がすごく長かったのに、大人だとアッ!という間にすぎる。「最近会った」が1ヶ月前のことかもしれない。1ヶ月前のことである。覚える努力もしてないなら、そりゃ忘れる。

その4:子供の頃と時間の流れ方が違う~パート2

「最近ド忘れが多くて…」の「最近」も同じ。

調査によると、子供も大人と同じくらいド忘れをすることがわかっている。子供の「最近のド忘れ」の期間が3日分くらいで、大人の「最近のド忘れ」の期間が半年ぐらいとすれば、そりゃ半年間のド忘れの数のほうが多いに決まっている。年を取ってド忘れが増えたんじゃなくて、集計する期間が伸びている。

脳の「トリセツ」

ここまで挙げられると、もうグウの音も出ず。脳、お前だったのか。いつもそばにいてくれたのは…。

などと「ごんぎつね」ばりの後悔をしても始まらない。

上の4つの「気のせい」は本書の序盤で出てきて、早くも脳に対しての常識がゆらぐ。じゃぁ本当はどういう仕組みなの!?というところ、トメさん目線でマンガで説明してくれる。トメさん=読者目線なので、難しい脳科学がホントわかりやすい。

脳が記憶をする仕組み、覚える仕掛け、忘れない理由をどんどん教えてくれる。覚えるコツまである。つまりこれ、「脳の取扱説明書」の「記憶の章」と言ってもいい。

トリセツが無かったから覚えられなかったのか!

というわけで、このトリセツを読めば、いくつになっても勉強がめっちゃはかどる!はず。

少なくても衰えを感じ始めるアラフォーは元気が出るよ!あとね、年のせいにできないから、逃げ場が無くなる!気をつけて!