「自分なくし」のススメ みうらじゅん『さよなら私』

人生でいろいろ悩み事や不安が多いのは、脳が作り出した「自分」がいるから。「自分」を捨てること、忘れることで、もっと楽に生きてみてはどうか、と説く、みうらじゅん的説法の書。

自分幸せか不幸かは、結局他人と比べてどうかを判断しているから。他人と「自分」を比べているから。じゃぁ「自分」を持ってるのが一番面倒なんじゃん、とみうらじゅんは言う。自分探しやモテたい願望とか、ボンノウとかプライドとか、もろもろの人生のネガティブを「自分」に落とし込んで、その根っこの「自分」をスコーンと飛ばしちゃうことで自由になっちゃえばいいじゃんと語りかける。

で、「自分」を飛ばしたあとどう生きるか、というと、「他人にやさしくする」という域までいくのだ。あのエロスクラップを集めて展覧会まで開いたみうらじゅんが、である。

仏像をめぐったり(『見仏記』)、街角の看板の文字で般若心経を作ったり(『アウトドア般若心経』)、最近ではタモリ倶楽部で地獄について解説したり、もともと仏教に感心のある人なので、たまに引用される仏教の考え方が語りに説得力をもたせている。そうかぁ。という気になる一方、文章が簡潔だけに「まだ読み取れてない、もっと深い意味がありそう」と思わされてしまう。

50歳になってもなおキープ・オン・ばかを貫くみうらじゅん。それでも結構悩んで悩んで、こういう悟りを持つにいたったのかな、と、サングラスの奥をちょっと覗いたような心境です。

ボンノウだらけの思春期のみなさんと、自分を見失いかけている30歳近辺の方々に、特にハマる本なんじゃないかと思います。