ほぼ日刊イトイ新聞 – おとなの小論文教室。の書籍化第二弾、第三弾。いっぺんに通読したので感想もまとめちゃいます。前作『おとなの小論文教室。』(⇒感想)からでは「自分を表現する力」をテーマの中心に据えていたが、『理解という名の愛がほしい』では「人とつながる力」が、『17歳は2回くる』では「自分の潜在能力を生かす力」がテーマとなっており、連載されたコラムからテーマにそったものが選択されまとめられている。

つくづく本気の人だ、と思う。自分がマイナス方向に向かったときの感触を客観視して、向き合って、痛みながら、感情の矛盾を解きほぐして、自分なりの「仮説」を立てる。その「仮説」はプラスに向かうため、生きるための言葉。「仮説」は自分の人生の中で実践し、人とつながろうとしていく。自ら人生のモルモットとなることを選び、生き様を自分の言葉で伝えることで、よりよく生きる方法を探ろうとしている。傷つき凹んでも止めることはない。本気の人なのだ。

表現者としてスランプになった時、人に哀しい嘘をつかれた時、通じなかったり不安になったり届かなかったりした時、思い出したいフレーズがたくさんあるのだけど、ガーッと読んじゃったせいか頭から抜けちゃってるなぁ…。もう自分で編集してベスト版をつくりたい。マイ・ベスト・ズーニー。

生きていれば、世界は回る。はだかの言葉でぶつかれば、きっと伝わる。「経験」と「問い」に裏づけされた、本気の人の言葉は人に届くのだ。

理解という名の愛がほしい~おとなの小論文教室。II
山田 ズーニー
河出書房新社 (2006/03/10)
17歳は2回くる おとなの小論文教室。(3)
山田 ズーニー
河出書房新社 (2006/05/18)
 

おとなの小論文教室。 (河出文庫)

  • 著者/訳者:山田 ズーニー
  • 出版社:河出書房新社( 2009-02-04 )
  • 文庫:236 ページ
  • Amazonで詳細を見る

ほぼ日刊イトイ新聞 – おとなの小論文教室。の書籍化第一弾。長らく受験生の小論文を教えてきた著者が、自分を表現力したいおとなのためにちょっと背中を押すコラム26本。

3章に分かれていて、第1章で「問い」「要約」「世界観」など自己表現するためのヒントを提供し、第3章では「一人称がない」人々を巡って読者と考察していく。わかりやすい言葉でぐいぐい伝わってくるし、1本終わるごとに一回本を閉じて自分について考えたくなる。しかし、それにも増して、僕にとっての白眉は第2章『自分の才能って?』だった。

第2章では「自分のやりたいことはなにか?」「自分は何になりたいのか?」という問いに向き合い、「才能は自分の中にあるのではなく、他者/社会の中にある」と逆の着想を持ってくる。自分のやりたいことを自分で考えるのは、逆に「他者」とのつながりを断ち切るのではないかと。自分の中でぐるぐると考えず、ひらき、受け入れるのだと。「自分はどこにいきたいのか?」という思考の壁にちょろりとロープを足らすのだ。開放し外を見るという視界の逆転に、目からウロコが、と言うよりはよりゆっくりと、ジワジワと言葉が体の隅々にいきわたるような体験だった。

タイトルからすると、文章書きのハウツー本に見えるかもしれない。しかし、この本は自分を表現するという事の絶大なる効果を説き、かつ、読んでる側をその気にさせるに十分な力を持っている、「自分を生きる方法」のハウツー本なのだ。「やりたいことが見つからない」という人に特におススメしたい。伝えたい。話しがしたい。たとえ届かなくても、僕は僕の声を出すのだ。

【関連書籍】
『理解という名の愛がほしい??おとなの小論文教室。II』
『17歳は2回くる おとなの小論文教室。III』

4月 182006
 
夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信
東京創元社 (2006/04/11)

小鳩くんと小山内さんの二人の高校生が、中学までの己の特性を隠してつつましく”小市民”を目指す『春期限定いちごタルト事件』の続編でございます。緊張の夏、小市民の夏。

夏休みスイーツ巡りに伴う日常の謎、という形で進んでいく序盤から、後半から大事件に発展する急展開、さらに終章での謎の収束と二人の対話。ページ数にして200Pちょいなのに、この密度たるや、まさに濃厚なスイーツ!こんなに薄い圧巻があっただろうか。

探偵役はもうやりたくない「狐」と、復讐の暗い悦びを忘れたい「狼」。小市民になるために、感情の発露をおさえてきた末の通過点。二人の内なる歪みが走り出す本作は、ぜひ前作から続けて読むことをおススメします。この夏は、甘くない。

2月 262006
 

吾輩はシャーロック・ホームズである 吾輩はシャーロック・ホームズである
柳 広司

小学館 2005-11
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ワトソンの元に連れられてきた奇妙な日本人。K・ナツメという名の彼は自分のことをシャーロックホームズだと思い込んでいるらしい。折りしもホームズは不在。知人の依頼により、治療の目的でナツメを預かることになったワトソンであるが…

イギリス留学中の夏目漱石が、渡航のストレスから自分をホームズと思い込むという、なんともトンでもなスタート。初対面のワトソンを思いっきり格下扱いですが、部屋に転がってるステッキから持ち主を推理するものの大ハズレ。女子に弱くて自転車にも乗れない。偉そうだけどトンチンカンな愛すべきキャラになってます。

この二人が参加した降霊会で殺人事件が起こるわけです。で、一見、本格ミステリ的に「ベタ」に見えるこの事件が、時代背景やホームズの世界感を絡めた大きな流れに乗っかっていくのが見どころでしょうか。不可能状況の解決とその背景にあるもの、この核と枠を既存のホームズ作品から再構築する手際はなかなかに高度。おぉー。

そうそう、事前に「バスカヴィル家の犬」と「ボヘミアの醜聞」を読んでおくとモアベターかもですよ。

 
ほぼ日手帳の秘密―10万人が使って、10万人がつくる手帳。
山田 浩子 ほぼ日刊イトイ新聞
幻冬舎 (2005/11)
売り上げランキング: 78236

去年から「ほぼ日手帳」を使っています。1日1ページ、という構成は「そんなに書くことあるかなー」とか思ってたのですが、1年振り返ってめくってみると意外と書き込んでいたりする。スケジュール帳にもなればネタ帳にもメモにもなんでも使える奥深さ。その自由度の高さから、「他の人はどう使ってるんだろうなぁ」と気になる手帳でもあります。

ほぼ日手帳初の公式本『ほぼ日手帳の秘密』はそんな声に答えてか、43人(!)の使用例インタビューをカラーで紹介。罫線を大胆に無視したり、交換日記にしたり、写真を貼ったり…とユーザの「自由」がこれでもかと連発。43人でも足りないなー。他に「糸井重里インタビュー」と「ほぼ日手帳の歴史」の3部構成なのですが、使用例インタビューがもっともっと見たかった。奥が深いなぁ。

2006年版も購入したので来年もお世話になります。まさに今追加販売の真っ最中なので、買い逃し方はこれを機にどうぞ。

そうそう、この本、カバーがほぼ日手帳のカバーを模しているわけですが、これをめくるとまたビックリ、中身もほぼ日手帳の中身を模しているのです。手元にある方はお試しを。芸が細かいなー。

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