ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。
『春期限定いちごタルト事件』 『夏期限定トロピカルパフェ事件』(→感想)に続く、「小市民」シリーズの第三弾。探偵役はもうやりたくない「狐」小鳩くんと、復讐の暗い悦びを忘れたい「狼」小山内さん。『夏季限定~』での出来事からそんなに日も経たずに始まる、1年にもわたる追跡と暗躍…。
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南海キャンディーズのツッコミ、山里亮太が2006年に書いた自叙伝。相方・しずちゃんに注目が集まるわ、容姿がブサイクだわで、テレビではいじられキャラな山ちゃんであるが、その豊富な語彙と的確なコメントは以前から割と好きなのであった。
その彼が芸人を志してからM-1決勝にいたるまでの獣道。てれびのスキマさんの「山里亮太・天才の公式(前編/後編)」で紹介されたのをきっかけに手にとってみました。
その彼が書いたこの本を読むと、彼がいかに小心者で、それゆえに努力家あることに驚かされる。芸人になりたい。しかし自分は「天才」ではない。でも「天才」と思われたい。そこで彼が取った行動は、過去のちょっと褒められた記憶を溜め込んだり、相方に厳しいダメ出しをして優位を保ったりで、「張りぼての自信」を作ることだった。
その張りぼての自信を保つゆえ、「こんな努力をして栄光をつかんだ」という話ではなく「こんな執着でここまでたどり着いた」という内容になっている。
その執着たるや容姿以上に「キモイ」と思われても仕方ないほど。
相方に厳しすぎたため二度もコンビを解消されたり、面白いと思った芸人のネタを写経のように書き写したり、当時別のコンビを組んでいたしずちゃんをケーキバイキングで口説き落として略奪したり、千葉出身なのに「芸人になるために大阪に行くため」に関西大学に進学したりする。
(そういえばロザン宇治原も芸人になるために京大に入っていた(『京大芸人』より)。勉強しなさいよ勉強を)
小さな成功のたびに過信して挫折し、何度も心が折れる音を聞きながら、面白く思われたいと切に願う。そんな山谷を繰り返しているうちに「いじられる」ことをプラスに変えて進めるようになる。
ただのよくしゃべるブサイク、と思われがちな山ちゃんは、手探りと努力で今のポジションまでやってきたのだった。そのネガティブとポジティブの反転のしかたたるや。この本が新書になってるのもある種の”教え”を含んでいるからと思う。
そして今年。M-1グランプリ2009。3回目のM-1決勝進出を果たした南海キャンディーズ。結果は決勝9組中8位となったが、終了後の記者会見にて島田紳助が「大会の総括」を聞かれ、南海キャンディーズについてこう語っている。
南海キャンディーズの山里(亮太)は天才やと思ってる。漫才では無理だけど、山里は才能あるんですわ
【M-1優勝インタビュー】新王者パンクブーブー&紳助との一問一答
これでまた山ちゃんの張りぼての自信貯金にチャリンチャリンと預金が増えたのかもしれないけど、もうその自信は張りぼてじゃなくてもいいんじゃないの、と思う。
ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。
と、いう煽りで紹介されてはおりますが、本書はどちらかというとサスペンス・ホラーの領域なので、ラスト一行で世界が反転するというよりはゾッとする、という感じ。5編収録された短編集で、特筆すべきはラスト一行のことよりも、「使用人(女子)がメインキャラクターとなる短編ばかりの短編集」であることだと思う。
お嬢様に従順な付き人、暇でたまらない山荘の管理人、高飛車すぎる料理人など、1編ごとに異なる名家の異なる使用人が、話のカギを握る存在となる。主人に忠実な存在であり、命令には実直に従うが、何を考えているかわからない存在として書かれる彼女たち。彼女たちが犯す「奇行」には彼女たちなりの理屈があり、それがいわゆる「狂人の論理」として機能し、最後の一行に向かって収束する。5編それぞれ主観人物や構成も異なり、よく練られてるなぁ。
それにしてもかなりダークな手触り。おっかないですわ。もう。アミルスタン羊とかさぁ。
閉ざされた空間での心理戦。たどる結末は、震度ゼロの衝撃。
阪神大震災のさなか、700km離れたN県警本部の警務課長の不破義人が失踪した。県警の事情に精通し、人望も厚い不破がなぜ姿を消したのか? 本部長の椎野勝巳をはじめ、椎野と敵対するキャリア組の冬木警務部長、準キャリアの堀川警備部長、叩き上げの藤巻刑事部長など、県警幹部の利害と思惑が錯綜する。ホステス殺し、交通違反のもみ消し、四年前の選挙違反事件なども絡まり、解決の糸口がなかなか掴めない……。
6人の警察幹部の視点をザッピングしながら、警務課長をめぐる心理戦が展開される。有力情報を秘密にしたり、命令にこっそりそむいたり、実は全然違うこと考えてたりと、視点をグルグル変えることで6人の権力争いが立体的に見えてくる。
舞台は警察署内部と官舎しかなく、演劇っぽい感じでもある。読者は外部から箱庭の中の大騒ぎを眺めてる状況で、かつ次々と新しい情報が来るものだからずっと目が離せない。うまいなぁ。官舎ではそれぞれの幹部の奥さんも登場して、奥さん同士の心理戦もあるのだ(警察幹部よりドロドロしてる!)
もう一つのポイントとして、この事件は阪神大震災の日に起こったという設定になっている。テレビで震災の激しさを見ながらも、目の前の権力争いにやっきになる幹部達。その対比に、箱庭の戯れの感が増す。
あんなにいろいろグルグルやったのに、十分衝撃な結末も用意されて、大満足の一冊。WOWOWで映像化もされていて、原作よりよかったという声も。これも観たいなぁ。

『ミステリーズ』
『マニアックス』
に続く”Mシリーズ”の最新作。納められてる中篇短編の通しテーマはタイトル通りの「モンスター」。怪談あり、ハードボイルドあり、終いにはヒトラーや吸血鬼や狼男が出てくるミステリあり、とバラエティな内容。
ただ、今回、特に目を見張る巧緻や趣向に欠けた印象で、個人的には消化不良でした…。うーん。「ミステリーズ」「マニアックス」に見られたメタフィクション的な趣向が好きだったので、シリーズ通しての期待値を求めると下がってしまうのかもしれません。
『続・日本殺人事件』
とか、本格だったはずなのに論理も理屈もふっ飛んだのがまた読みたいな、と思うのです。というか今はじめて文庫版の装丁見たけどすごいカッコいいなぁ。
こんな例でこの本は始まる。
「何を言うか」よりも、「だれが言うか」が雄弁なときがある。例えば同じニュースでも、どのメディアが言うかで、ぐっと印象は変わる。
ついに宇宙とコンタクト(日本経済新聞)
ついに宇宙とコンタクト(東京スポーツ)
自分と相手が「通じる」ためのコミュニケーション論。とは言え、単なる技術論にあらず。自分の想いを伝えて、相手に受け止めてもらって、共感と信頼を得るまでの、著者の考え抜かれた想いがギュッと詰まっている。もうこの時点で著者から読者へ言葉が通じまくりなのだ。
冒頭の例は「メディア力」と表現されている。どんな言葉でもそれを言う人によって捕らえ方が変わる。「メディア力」を持っている人ほど話が通じやすい。では「メディア力」上げるにはどうしたらいいのか?
ここで作者は小手先の交渉テクニックを持ち出したりはしない。話を通じさせるには、まず通じさせる自分の意見をはっきり持つこと。自分の意見をはっきり持つためにはまず考えること。そう、この本では「考える方法」に主眼を置かれて書かれているのである。
なぜ正論が通じないのか、全く言葉が通じない時に振り返るべき点はなにか、共感が生む効果とは…などなど、人と通じ合うための「根っこ」が余すところなく語られている。
NHKのテキストにもなった『話すチカラをつくる本―この一冊で想いが通じる!』
もこの本がベース。『話すチカラ~』もエッセンスを取り出して読みやすいけれど、より作者の想いが綴られている本書の方が僕は好きです。
いたるところに気づきがあって、読み終わったあともこの気づきを忘れたくないと切に思う。うわべではない核心の話をしてくれる、まさに人とつながるための教科書。著者は言う、案ずる無かれ、みんな最初は初対面だったのだ、と。
「古典部」シリーズ最新作。古典部のメンバー4人の入学直後から『クドリャフカの順番』で舞台となった文化祭を経て、春休みの出来事までをピンポイントに取り出した短編集。これまでの長編3作の合間にあった「日常の謎」が明らかに。
”省エネ主義”なのに解決役を頼まれて、結果として安楽椅子探偵っぽくなってしまう主人公・折木奉太郎は健在で、校内放送で『九マイルは遠すぎる』をやってしまう「心当たりのあるものは」は推理作家協会賞候補にもなった良作。
しかしやはり白眉は「手作りチョコレート事件」と「遠まわりする雛」。日常の謎を織り交ぜながら、古典部男女4人の人間関係が動き出す。気づかないふりをしていた気持ちが、見過ごせないほど大きくなっていく。あぁ青春やなぁ。
シリーズを通して読んでる人ほど本作の展開は最重要。1年が終わり、そして春が来るのである。