9月 272004
 

「殺したいやつがいるんだ。」
殺し屋だったという父の遺言で、拳銃を昔の相棒に届けることになった龍哉。同行を申し出た同居人の光平とくるみには、その拳銃を使って「やりたいこと」があった。3人の思惑をのせてサンダーバードは走る。新鋭が描く、痛みと癒しの青春ロードノベル。

拳銃と車を手に入れた若者三人のロードノベル、と帯で見て、暴力かハイテンションかと思って読み始めたら、穏やかでニュートラルで、そしてとてもクレバーな話だった。

三人それぞれが親兄弟にトラウマがあり、それはとても深く暗いのだが、ただ荒れる時は過ぎ「信頼できる仲間」という安息を得てから物語が始まるため、躁すぎず鬱すぎずのキャラ造形がとても大人に映る。かといって物語に起伏ないわけでは全然なく、ロードノベルの道から外れだしてからの展開は予想を上回る着地点でほぅと嘆息。いい!

Quality Of Life,Quest Of Love. 冷えすぎず熱すぎず、僕は僕の声を聞く。

8月 142004
 

750年前の事件と現代の事件。石動シリーズということはまず真っ直ぐには行かないわけで、本格の本道から路地に入って座り込んでタバコふかしてるような不良ぶり。今回は「750年前の幽霊が社長に取り憑いた」という設定で、中世と現代のギャップにうろたえる幽霊視点がかなりオモロイ(六本木ヒルズで黒蜘蛛にビックリ!とか)。ミステリ的には既存の本格をこねて叩いて壁にぶつけて観察するような、パロディと稚気の面白さ。いろんな意味で小ネタ満載の本でした。So Nice.

7月 312004
 

清水先生の面白理科話とサイバラの無気力挿絵ツッコミ。ちょいと理科に通じた人が読むと物足りない感じがするが、そこは理科嫌い向けに太陽系を中央線に当てはめたりなど一生懸命に文章を選んでいる清水先生の奮闘にエールを送るように楽しむべきであろう。がんばれー。

6月 292004
 

ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。彼らがその日経験した小さな出会い、せつない思い。5つの視点で描かれた小さな惑星の小さな物語。書下ろし「きょうのできごとの、つづきのできごと」収録。

宅飲みに集まった大学生たちのなんでもない一日。誰も特別でなく、なんでもない会話で、なんでもない夜のはずなのに、場面場面がこんなにも特別に感じるのは感傷のせいだけではないのだろう。さくっと読めるけど満たされる気持ち。登場人物が行間で饒舌な感じ。こういう時大阪弁はずるいなぁ。東北弁だどこうはいがねぇもんなぁ。