あの全世代対応ホームドラマ、『東京バンドワゴン』(→感想)の続編。四世代同居の古本屋兼カフェ「東京バンドワゴン」の四季を4つの短編で綴る。古本とともに舞い込む謎。笑いと涙。おぼろげな光。

どんどん家族が増えていくなぁ。店の常連や近所の顔なじみなど登場人物も多彩。そのみんなが人情に溢れ、笑って泣いての物語はまさに下町の「性善説」。明るく騒がしいその裏にはつらい過去や悲しみがあって、シリーズが進むにつれ色んな秘密が明らかになり、どんどんキャラクターに厚みが出てきていますね。

売った本を1冊づつ買い戻す老人や、幽霊を見る小学生、中身がくり貫かれた百科事典など、「日常の謎」的ミステリ要素も健在。かといってそんなバリバリ伏線がというわけでもなく、かなりホームドラマに溶け込んでいる印象。あくまでスパイス。だがこれがとても相性がいいような気がする。特に幾つもの変な出来事が同時に進行したりすると、大家族の人海戦術も生かせるし、登場人物それぞれに見せ場が生まれたりもするし、大円団も茶の間で迎えられたりする。「日常の謎」と「ホームドラマ」はいい組み合わせなんだなぁと改めて感じたりしました。

そうそう、朝食のシーンが毎回冒頭にかかれているんだけど、このシーンを作者はとても大事にしているんじゃないかしらん。全員揃った食卓で、ワイワイガヤガヤと台詞が入り乱れ、賑やかに一日が始まる。家族の幸せここにあり。前作『東京バンドワゴン』の話がところどころ出てくるので、前作を読んでない人は前作を、前作を読んだ人は本作を是非お手にとっていただきたい。まぁつまりはみんなにおススメということであります。

5月 152007
 

巷の商品を勝手に広告アートにしてしまう本書。表紙にあるヴィッテルの貯水タンクにはじまり、牛乳石鹸の農場、三菱鉛筆の森など、アイデアとアートの融合が楽しい。

モノの大きさを自由に変えて発想しているのが楽しくて、例えばヘリコプターがTWININGSのティーバックを入れていたり、チップスターがタンクローリーの荷台になってたりする。極端にすることでモノの個性を際出させて、なおかつ全体は極端に尖らないようセンスで抑えられてる感じ。このバランスが絶妙なので、素直に楽しいなぁという気持ちになれるのかも。

そうそう、この本図書館で予約して借りたのですが、思いのほか大きな本でびっくり。色彩もヴィヴィットなので、まるで絵本のようでした。

※参考リンク(中身がちょっと見れます)
広告のようで広告でない、実験アート「勝手に広告」の世界 | エキサイト ウェブアド タイムス

 

健康マニアのルポライター芸人・水道橋博士が、自らの肉体を実験台に、様々な健康法に挑んだ様子を綴る健康本。まず帯からして「髪の毛が生えてきた!」という強烈な煽りであり、作者曰くこの帯のおかげでamazonでトップセラーもなったとのこと。

健康本とは言え、あるある大辞典のようなすぐに試せるエクササイズとかは全然なく、「異常な健康」を追求した本のためかなりマニアックな内容。第1 章のハゲ治療から始まり、近視矯正手術・ファスティング(断食)・アサイージュース、果ては胎盤エキス・バイオラバー・加圧トレーニングといった全然馴染みのない、なんだか怪しい印象のものまで体当たり。その全てにおいて自身で効果を確かめ、医者や製造元にまで仕組みを聞きに行き、それをいつもの軽快かつ熱い筆致で伝える水道橋博士の芸人魂・ルポ魂たるや圧巻である。

元はサプリメントで薬漬けだった作者が、健康を偏執に追い求めて辿り着いた幾つかの体験は、普通に眺めるとなにやら眉唾なものが多いのだが(バイオラバーなんて「体にいい電磁波が出て人体と共振する」とか言われる)、新聞の全国紙でガン治療に効果ありと発表されたり、東大の学者が論文を世界に発表してたり、と”裏づけ”が取れてるものばかり。それでもやっぱり騙されてるように感じるのだけど、じゃぁ医者からもらった薬がどうして病気に効くのか分かっているのかと問われると結局わからない。この執拗な健康の追求は、なんでも聞いてきちんと納得し、なんでも試して体で感じることが重要なのだ、というメッセージなのかもしれない。

数々の強烈なインパクトを読者に与える本書であるが、僕的に一番のインパクトはハゲ治療の回に出てきた、「プロピアのヘアコンタクトを着用した江頭2:50の写真」であった。頭フサフサで「もの申ーす!」のポーズですよ!

■関連リンク
「博士の異常な健康」厳選リンク集←公式のリンク集
・唐沢 俊一『育毛通』← 作中でおススメされてる「育毛トリビア本」

5月 232006
 

東京下町の老舗古本屋「東京バンドワゴン」は、親子四世代が一つ屋根の下に暮らす大家族。騒々しい毎日の中で、事件も人情も万事解決の春夏秋冬。日向で綴られる人情噺。

いやー、面白かった。今年ベスト級の一冊と言ってしまおう。「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」「ムー一族」など昭和のホームドラマが平成の世に蘇る。家族の中にはシングルマザーあり、実家と勘当している嫁あり、プレイボーイのツアコンあり、”伝説のロッカー”あり、そして頑固一徹の親父あり、とキャラクターは豊富。ちゃぶ台を囲んで食事して、トラブル起きて解決して、傍らでは猫も鳴く。

それにしても登場人物が多い多い。大家族の8人が家の中を右往左往して、ご近所さんや常連客なども出たり入ったり、そこに起こるトラブルの関係者などなど、ざっくざっくの大騒ぎ。それがみんな根はいい人でできていて、さらに語り手のおばあちゃん(幽霊)が暖かく描写する。このおばあちゃんフィルターが”騒がしいながらも落ち着く”という大家族特有のムードを作りだしているように思った。

このホームドラマに日常の謎というミステリ要素も絡めつつ、笑って泣かせる作品に仕上がってます。たまらんなぁ。エピソードが濃縮されていて2時間スペシャルドラマみたいになってるけど、ここから連ドラ(シリーズ化)にして欲しいなぁ。親と子がいてLOVEがある。全世代対応型ホームドラマ、ぜひぜひぜひ!

首藤瓜於『脳男』

 さ行の作家, 読書感想文  コメントは受け付けていません。
2月 182006
 

脳男 脳男
首藤 瓜於

講談社 2003-09
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第46回江戸川乱歩賞受賞作。連続爆弾魔のアジトで見つかった「心を持たない男」。巨漢の刑事と精神科の女医が男の過去を追う。全てが作り物めいた男の本性とはいったい何なのか?というかこの男、通称「鈴木一郎」と呼ばれておりイチローの本名と同じだがいろいろと問題なかったのか?

大きく前半・後半と2つに分けることができる話で、この2つがそれぞれ違った形でスリリングに事が運び、結果として物語全体がテンションを保ったまま終えることに成功していますなぁ。

鑑定結果では全ての能力が平均値、紳士的に振舞うが感情を出さない、手ごたえがまるでない男。前半では男の本性を刑事と医者がそれぞれのやり方で追い、一つづつ薄皮が剥れるようにその過去が現れていく。僅かな手がかりのために女医が冬山登山までやりだすのはちょっとどうかと思うがまぁいいか。それはそれでスリリングだし。

後半は男が入院する病院に爆弾が仕掛けれ、遂に「鈴木一郎」が覚醒する。爆弾魔vs警察+「鈴木一郎」という知恵比べに見所が移り、ラストまで一気に。敵か味方か「鈴木一郎」。

難を言えば「欲張り」。上記ストーリーに加え、自閉症や脳についての記述、爆弾の知識、連続爆破事件のミッシングリンクなど、各要素が雑多に盛られた印象もあり。にしてもデビュー作でここまでやれれば満足でしょう。タイトルもこれしかないなー。

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