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さ行の作家 Archive

佐藤雅彦『四国はどこまで入れ換え可能か』

ネット配信されていたアニメーション「ねっとのおやつ」の文庫化。ほのぼの漫画にシャープな発想。

『イメージの読み書き』
『プチ哲学』
など、佐藤雅彦には思考の盲点をつかれることが多く、ハッとさせられることしばしば。この「思考の盲点をつく」という行為は「笑い」にも通じるわけで、本書にもその盲点が山盛りで楽しい。ベタなネタもあるけどそれも緩急と思えば。「いったいなにがあったのか!」「狼煙」「人生は選択の連続」「内面的なサイコロ」あたりがお気に入り。

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小路幸也『ホームタウン』

札幌の百貨店に勤める柾人。仕事の内容は”内偵”。ある日柾人の元に妹の木実から手紙が届いた。もう数年会っていない妹。結婚するという知らせだった。式も間近になった頃、妹とルームシェアしている女性が尋ねて来た。木実が突然いなくなったという。しかも手ぶらで。調べてみると木実が消えた一週間前に婚約者も消えていた。失踪か。それとも…。仕事で得たスキルを秘め、柾人は故郷の旭川に向かう。木実と二人で逃げ出した”あの事件”以来近づかなかった、あの故郷に。

帯が乙葉なのね。人探しの過程はミステリらしく進み、その中途で出会う人々との出会い・再会を絡め、故郷・家族というキーワードから終盤は泣かせにやってくるこの展開。リーダビリティ高く一気読み。適材が適所に嵌まる様子はもはやお家芸の様相。

ただ、物語の筋道がまっすぐ一本通っているとしたら、その周りに行き当たりばったりな線がたくさん引いてあるような、エピソード同士がちぐはぐな印象があるんですよ。一つ一つの欠片は魅力的で、読んでる時はあまり気にしなかったんだけど、読了して遠くから眺めると形に違和感があるというか。その線たちが同じ方向をビシッと向いた時、もっとすごい作品が出来上がる予感はするのだけど…。

ホームタウン
ホームタウン
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小路 幸也
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蘇部健一『ふつうの学校―稲妻先生颯爽登場!!の巻』

登場シーンとドンジャラに特化しているせいか、ちょっと物足りないのですがこれは続編を読まねばならぬ感じか。帯にもあるようにとても”いい子”には薦められない本ですが、一番の見所はあとがきの作者の恐縮ぶりのような気がします。

ふつうの学校―稲妻先生颯爽登場!!の巻

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小路幸也『Q.O.L』

「殺したいやつがいるんだ。」
殺し屋だったという父の遺言で、拳銃を昔の相棒に届けることになった龍哉。同行を申し出た同居人の光平とくるみには、その拳銃を使って「やりたいこと」があった。3人の思惑をのせてサンダーバードは走る。新鋭が描く、痛みと癒しの青春ロードノベル。

拳銃と車を手に入れた若者三人のロードノベル、と帯で見て、暴力かハイテンションかと思って読み始めたら、穏やかでニュートラルで、そしてとてもクレバーな話だった。

三人それぞれが親兄弟にトラウマがあり、それはとても深く暗いのだが、ただ荒れる時は過ぎ「信頼できる仲間」という安息を得てから物語が始まるため、躁すぎず鬱すぎずのキャラ造形がとても大人に映る。かといって物語に起伏ないわけでは全然なく、ロードノベルの道から外れだしてからの展開は予想を上回る着地点でほぅと嘆息。いい!

Quality Of Life,Quest Of Love. 冷えすぎず熱すぎず、僕は僕の声を聞く。

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殊能将之『キマイラの新しい城』

750年前の事件と現代の事件。石動シリーズということはまず真っ直ぐには行かないわけで、本格の本道から路地に入って座り込んでタバコふかしてるような不良ぶり。今回は「750年前の幽霊が社長に取り憑いた」という設定で、中世と現代のギャップにうろたえる幽霊視点がかなりオモロイ(六本木ヒルズで黒蜘蛛にビックリ!とか)。ミステリ的には既存の本格をこねて叩いて壁にぶつけて観察するような、パロディと稚気の面白さ。いろんな意味で小ネタ満載の本でした。So Nice.

キマイラの新しい城

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