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さ行の作家 Archive

小路幸也『東京バンドワゴン』

東京バンドワゴン
東京バンドワゴン
posted with amazlet on 06.05.23
小路 幸也
集英社 (2006/04)

東京下町の老舗古本屋「東京バンドワゴン」は、親子四世代が一つ屋根の下に暮らす大家族。騒々しい毎日の中で、事件も人情も万事解決の春夏秋冬。日向で綴られる人情噺。

いやー、面白かった。今年ベスト級の一冊と言ってしまおう。「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」「ムー一族」など昭和のホームドラマが平成の世に蘇る。家族の中にはシングルマザーあり、実家と勘当している嫁あり、プレイボーイのツアコンあり、”伝説のロッカー”あり、そして頑固一徹の親父あり、とキャラクターは豊富。ちゃぶ台を囲んで食事して、トラブル起きて解決して、傍らでは猫も鳴く。

それにしても登場人物が多い多い。大家族の8人が家の中を右往左往して、ご近所さんや常連客なども出たり入ったり、そこに起こるトラブルの関係者などなど、ざっくざっくの大騒ぎ。それがみんな根はいい人でできていて、さらに語り手のおばあちゃん(幽霊)が暖かく描写する。このおばあちゃんフィルターが”騒がしいながらも落ち着く”という大家族特有のムードを作りだしているように思った。

このホームドラマに日常の謎というミステリ要素も絡めつつ、笑って泣かせる作品に仕上がってます。たまらんなぁ。エピソードが濃縮されていて2時間スペシャルドラマみたいになってるけど、ここから連ドラ(シリーズ化)にして欲しいなぁ。親と子がいてLOVEがある。全世代対応型ホームドラマ、ぜひぜひぜひ!

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首藤瓜於『脳男』


脳男 脳男
首藤 瓜於

講談社 2003-09
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第46回江戸川乱歩賞受賞作。連続爆弾魔のアジトで見つかった「心を持たない男」。巨漢の刑事と精神科の女医が男の過去を追う。全てが作り物めいた男の本性とはいったい何なのか?というかこの男、通称「鈴木一郎」と呼ばれておりイチローの本名と同じだがいろいろと問題なかったのか?

大きく前半・後半と2つに分けることができる話で、この2つがそれぞれ違った形でスリリングに事が運び、結果として物語全体がテンションを保ったまま終えることに成功していますなぁ。

鑑定結果では全ての能力が平均値、紳士的に振舞うが感情を出さない、手ごたえがまるでない男。前半では男の本性を刑事と医者がそれぞれのやり方で追い、一つづつ薄皮が剥れるようにその過去が現れていく。僅かな手がかりのために女医が冬山登山までやりだすのはちょっとどうかと思うがまぁいいか。それはそれでスリリングだし。

後半は男が入院する病院に爆弾が仕掛けれ、遂に「鈴木一郎」が覚醒する。爆弾魔vs警察+「鈴木一郎」という知恵比べに見所が移り、ラストまで一気に。敵か味方か「鈴木一郎」。

難を言えば「欲張り」。上記ストーリーに加え、自閉症や脳についての記述、爆弾の知識、連続爆破事件のミッシングリンクなど、各要素が雑多に盛られた印象もあり。にしてもデビュー作でここまでやれれば満足でしょう。タイトルもこれしかないなー。

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住正徳『ロマンの木曜日』

ロマンの木曜日

@nifty デイリーポータルZのライター・住さんの約3年にも渡る連載からのベストセレクション。「The Romantic Thursday」という英語題に、小松崎茂の絵という、かっこよさ極まりない装丁。

内容は過去の連載のものなので、今でもWEBで見られるものばかり(「どこでもドアは実現できる」のみ書き下ろし。謎のメキシコ行きの真相が明らかに!)付録に田辺誠一との対談とかあったりしますが、もっと書籍用の小ネタとか欲しかったかな…。でもこうして本にしてみると、WEBで見てたときよりも「バカな行為」の重さが違う気がします。WEBだと気軽にやって上げたものが、本だとなんか重みを持つような。「脳ドックによろしく」なんてすごく切なくなって泣くかと思った。愛すべきバカ、極まれり。

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水道橋博士『本業―タレント本50冊・怒涛の誉め殺し!』

本業―タレント本50冊・怒涛の誉め殺し!
水道橋博士
ロッキング・オン (2005/08)
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水道橋博士『本業―タレント本50冊・怒涛の誉め殺し!』はタレントによるタレント本書評。日経エンタに連載されていた「本と誠」をベースに、著者がタレント本に書いた解説をボーナストラックとして収録。『お笑い男の星座』(→感想)でも発揮した水道橋のルポライター気質がここぞとばかりに大奮発。

普通の書評と一線を画く目的で交流録や現場の裏話も多く含まれており、そのため本のセレクトもちょっと偏っている(本のカバーに取り上げた本が全部書いてあります)。次は木村拓哉『解放区』に、という編集者のオファーを断って山田かな子『せんせい』にしちゃうくらいである。その分、好きな人・好きな本を取り上げているので、語り部は生き生きと、絶妙に引用し、笑わせ泣かせ感嘆させ、最後にすっと差し出して薦めるのだ。これが1冊あたり4ページでぎっしり。芸能知識の満腹中枢にて針が振り切れるほどの満足感です。

タレント本なんて結局売名行為や金儲けの一手段でしょ、と正直思っていたのだけど、『本業』を読んでちょっと思い直したなぁ。激ヤバエピソードだったり思わぬ文才があったりで、テレビや雑誌では語られない芸能人の等身大を映す、まさに「確定申告」。タレント本はメディアで表から見る芸能界の、その裏を覗き込む鏡でもあったのだ。水道橋博士の案内で行くタレント本の世界。ご堪能くだされ。

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佐藤雅彦『四国はどこまで入れ換え可能か』

四国はどこまで入れ換え可能か
佐藤 雅彦
新潮社 (2005/10)
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ネット配信されていたアニメーション「ねっとのおやつ」の文庫化。ほのぼの漫画にシャープな発想。

『イメージの読み書き』
『プチ哲学』
など、佐藤雅彦には思考の盲点をつかれることが多く、ハッとさせられることしばしば。この「思考の盲点をつく」という行為は「笑い」にも通じるわけで、本書にもその盲点が山盛りで楽しい。ベタなネタもあるけどそれも緩急と思えば。「いったいなにがあったのか!」「狼煙」「人生は選択の連続」「内面的なサイコロ」あたりがお気に入り。

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