夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

  • 著者/訳者:森見 登美彦
  • 出版社:角川グループパブリッシング( 2008-12-25 )
  • 文庫:320 ページ
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こんなお話読んだこと無い。傑作!快作!そして、祝!森見登美彦氏ご成婚!

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

「先輩」視点と「乙女」視点で語られる、春夏秋冬に分かれた4編の連作短編集。1編ごとに舞台は異なり、キテレツなキャラクターと奇怪な出来事が、夢幻と現実の狭間で右往左往する。あぁ、なんと表現したものか。

「先輩」視点は『太陽の塔』『四畳半神話体系』でもお馴染み非モテダメ学生なのだけど、「乙女」視点がまた、作者の妄想の賜物ともいえるピュア女子像。二つのすれ違う視点を行き来するのがとても楽しい。そして、一見、勢い任せの珍騒動に見えながらも、実は周到に伏線が張られていたりと油断ならず、大変おなかいっぱいのできばえ。

色とりどりで、ハイテンションで、それでいて柔らかい、幻想と妄想の爆発。これからの人生、思い出しては何回か繰り返し読み返す予感がする。

   

 

震度0

  • 著者/訳者:横山 秀夫
  • 出版社:朝日新聞社( 2005-07-15 )
  • 単行本:410 ページ
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閉ざされた空間での心理戦。たどる結末は、震度ゼロの衝撃。

阪神大震災のさなか、700km離れたN県警本部の警務課長の不破義人が失踪した。県警の事情に精通し、人望も厚い不破がなぜ姿を消したのか? 本部長の椎野勝巳をはじめ、椎野と敵対するキャリア組の冬木警務部長、準キャリアの堀川警備部長、叩き上げの藤巻刑事部長など、県警幹部の利害と思惑が錯綜する。ホステス殺し、交通違反のもみ消し、四年前の選挙違反事件なども絡まり、解決の糸口がなかなか掴めない……。

6人の警察幹部の視点をザッピングしながら、警務課長をめぐる心理戦が展開される。有力情報を秘密にしたり、命令にこっそりそむいたり、実は全然違うこと考えてたりと、視点をグルグル変えることで6人の権力争いが立体的に見えてくる。

舞台は警察署内部と官舎しかなく、演劇っぽい感じでもある。読者は外部から箱庭の中の大騒ぎを眺めてる状況で、かつ次々と新しい情報が来るものだからずっと目が離せない。うまいなぁ。官舎ではそれぞれの幹部の奥さんも登場して、奥さん同士の心理戦もあるのだ(警察幹部よりドロドロしてる!)

もう一つのポイントとして、この事件は阪神大震災の日に起こったという設定になっている。テレビで震災の激しさを見ながらも、目の前の権力争いにやっきになる幹部達。その対比に、箱庭の戯れの感が増す。

あんなにいろいろグルグルやったのに、十分衝撃な結末も用意されて、大満足の一冊。WOWOWで映像化もされていて、原作よりよかったという声も。これも観たいなぁ。

 

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

  • 著者/訳者:金城 一紀
  • 出版社:角川グループパブリッシング( 2008-09-25 )
  • 文庫:281 ページ
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『GO』『SP』の金城一紀がもつシリーズ「ザ・ゾンビーズ・シリーズ」の第1弾。眩しい。眩しすぎる。

君たち、世界を変えてみたくないか?
オチコボレ高校に通う「僕」たちは、三年生を迎えた今年、とある作戦に頭を悩ませていた。厳重な監視のうえ強面のヤツらまでもががっちりガードするお嬢様女子高の文化祭への突入が、その課題だ。

「レヴォリューションNo.3」「ラン、ボーイズ、ラン」「異教徒たちの踊り」短編3本を収録。文庫の装丁だとアホバカ高校生みたいだけど、本編はもっと不良で暴力的でハードボイルド。喧嘩もすれば悪巧みもする。テンションMAXで暴れまくる。

一方、メンバーそれぞれの個性を生かしたトラブルシューティングがとても気持ちいい。女子高への突入、カツアゲされた金の奪還、ストーカー退治といった難題に、これぞといった気の利いた解決をもってくる。

暴力と知力のバランスが絶妙で、かつキャラ立ちも十分(”史上最高の引きの弱さ”山下の爆笑エピソードは一読の価値あり!)十代の衝動とブレーキとを鮮やかに描ききっております。オススメ!

 

空港のトラブルシューター、喜怒哀楽の果ての勧善懲悪。面白いなぁー。直木賞候補作。

空港に常勤する旅行代理店のスーパーバイザー、空港のカウンターの裏で様々なトラブルを解決する彼らはの愛称は「あぽやん」。頼れるトラブルシューターの彼らではあるが、空港勤務の「閑職」のため最近は会社の出世コースから外れた「島流し」のイメージがついてしまっている。
上司の不評を買って成田空港勤務に飛ばされた主人公、遠藤慶太。すっかりやる気をなくした男が、上司や女性スタッフに助けられ、なんとしてもお客様を笑顔で出発させるために奔走、プロとしての仕事に目覚めていく。

短編6本からなる短編集。もう、起きるトラブルがどれも大変なのである。再入国許可がないため出発したら帰国できないブラジル人少女、パスポートを忘れたために家族旅行から一人空港に残される少年、新婚旅行のはずが航空機の予約が消えてる新婚夫婦…。どないせぇっちゅうねん、と言わんばかりのトラブルは、飛行機の出発時間がタイムリミットとなるため、嫌がおうにも緊張感が増す展開。知恵と偶然と人脈で事態が切り開かれるまで、目が離せないのだ。

また、本社vs空港という図式もある。無理難題(ヤクザの出迎えとか)を押し付けようとする本社との戦いは、さながら「事件は会議室で~」の空港版。空港スタッフ達の結束が爽快感を生む。

女性スタッフとの恋愛、老人・子供といった泣かせどころもあり、いかにもテレビドラマになりそうな「わかりやすい」要素を備えながら、登場人物の配置やトラブルの見せ場の上手さでぐいぐい引っ張られる。空港に行きたくなる、そんな気持ちになった段階で、もう作者の勝ち。オススメ。
 

 

聖域

  • 著者/訳者:大倉 崇裕
  • 出版社:東京創元社( 2008-05 )
  • 単行本:313 ページ
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安西おまえはなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。事故か、自殺か、それとも――3年前のある事故以来、山に背を向けて生きていた草庭は、好敵手であり親友だった安西の死の謎を解き明かすため、再び山と向き合うことを決意する。すべてが山へと繋がる、悲劇の鎖を断ち切るために――。
「山岳ミステリを書くのは、私の目標でもあり願いでもあった」と語る気鋭が放つ、全編山の匂いに満ちた渾身の力作。著者の新境地にして新たな代表作登場!!

『川に死体のある風景』 収録の「遭難者」にて、切れ味鋭い山岳ミステリを書いていた著者、念願の長編。著者自身も登山の経験があり、何の説明もなく山岳用語が乱れ飛ぶけど、リーダビリティが高く一気に読める。

安西が滑落した塩尻岳では、過去に安西の恋人も命を落としている。事故か、自殺かと調べていくと、塩尻岳の「山小屋存続運動」というきな臭い存在が出てくる。複数の死と複数の推測という糸が、最初は細く、やがて太く編みあがっていく展開に目が離せない。

主人公の環境と断ち切れぬ山への想い、登山をめぐる人と金、そしてなにより厳寒の冬山登山の描写が見事にあわさってる。ミステリの仕掛け的には全然複雑でもなくむしろ古典的ですらあるのに、終盤まで全く浮かばなかった。没頭してた。

広く知られていない分野、主人公の葛藤と成長という意味では近藤史恵『サクリファイス』 を連想したりもする。負けず劣らずの大倉崇裕渾身の代表作。やろうと思えばもっとお涙頂戴感動ものもできるところ、冷静に処理しているのもクール。

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