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【オススメ本】 Archive

森見登美彦『四畳半神話大系』

先日『夜は短し歩けよ乙女』で吉川英治文学賞を受信した森見登美彦、初めて読みましたよ。面白い!

デビュー二作目にあたる『四畳半神話大系』の舞台は京都の四畳半。4つの章からなる話だけど、すべての章の出だしは同じ。大学に入ってからの2年間がいかに無意味なものだったかを語るモノローグ。出てくる人や場所や時間は同じなのに状況は4つの章で少しずつ異なる。最初は何が起こったかわからず、しかも全く同じ文章のコピペも多数あって手抜きかぁとか思ったけど、全部通して読んでその構成力に驚いた。そんな絵を見せるかぁ。

どうでもいいことに難解な日本語をあてていく主人公の独特の語り口も面白い。でも最後まで読むと、この語り口が悪友やだらだらした生活に対する「照れ隠し」のように見えてきたのですよ。上滑りの言葉の中に胸に閉まった本心が覗いてきて、なんだか急に主人公が生身になった気がしましたよ。本音で話せない時ってなんか変なテンションで毒づいたりとか、語尾で笑い取ったりとかするよねぇ。

四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)

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中村至男+佐藤雅彦『勝手に広告』

巷の商品を勝手に広告アートにしてしまう本書。表紙にあるヴィッテルの貯水タンクにはじまり、牛乳石鹸の農場、三菱鉛筆の森など、アイデアとアートの融合が楽しい。

モノの大きさを自由に変えて発想しているのが楽しくて、例えばヘリコプターがTWININGSのティーバックを入れていたり、チップスターがタンクローリーの荷台になってたりする。極端にすることでモノの個性を際出させて、なおかつ全体は極端に尖らないようセンスで抑えられてる感じ。このバランスが絶妙なので、素直に楽しいなぁという気持ちになれるのかも。

そうそう、この本図書館で予約して借りたのですが、思いのほか大きな本でびっくり。色彩もヴィヴィットなので、まるで絵本のようでした。

※参考リンク(中身がちょっと見れます)
広告のようで広告でない、実験アート「勝手に広告」の世界 | エキサイト ウェブアド タイムス

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道尾秀介『骸の爪』

取材のために滋賀県の仏所・瑞祥房を訪れた小説家・道尾秀介。そこには俗世から離れてひたすらに仏像を作り続ける人々がいた。その夜、仏所の中を出歩いた道尾は不可解な現象に遭遇する。口を開けて笑う千手観音、頭から血を流す仏像、茂みの向こうから聞こえる「マリ…マリ…」という声…。20年前に失踪した仏師の謎、天井についた血痕、そしてまた仏師が消え…。

舞台はほとんど瑞祥房の中で、関係者も10名に満たない。ページ数も400P弱。その中に仕込まれた伏線の多さ、そして物理トリックも心理トリックも絡めた全体像たるや、よくここまで詰め込んだなぁと感嘆。ラスト近くはめくってもめくっても新展開で、伏線の繰り出し方が巧いです。見事。

舞台が制限されているからか、読者が作品世界に浸りやすく、仏所という特殊な空間での「考え方」や「出来事」が受け入れやすくなっているのも成功の要因の一つかと(京極夏彦『鉄鼠の檻』などに通じる感じ)。無駄な要素ほとんどなし、謎と解決に純粋に奉仕する小説、これぞ本格ミステリだ。と言ってしまおう。

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『気分は名探偵―犯人当てアンソロジー』

2005年、「夕刊フジ」に犯人当て懸賞ミステリーとしてリレー連載されたものを単行本化。夕刊フジにこんなマニアックなもの載せて大丈夫だったのか、と思ったら結構応募があったらしく、正解率もそこそこあったらしい(各短編ごとに正解率が書いてある)。

有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」
路上で起こった”視線の密室”殺人。見つからない凶器どこに?
貫井徳郎「蝶番の問題」
別荘で劇団員5人が全員変死。残された手記から犯人を捜す。
麻耶雄嵩「二つの凶器」
現場は大学の研究室。殺害に使われたレンチの他に手付かずのナイフが見つかる。
霧舎巧「十五分間の出来事」
新幹線のデッキで昏倒してるのはたちが悪かった酔っ払い。とどめを刺したのは誰だ?
我孫子武丸「漂流者」
島に流れ着いたボート。記憶をなくした男。持ってた手記には惨劇の記録。オレは誰?
法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」
被害者の部屋を荒らした痕跡に不自然な点。容疑者は三人の”ヒラド・ノブユキ”

これだけの作家が揃ってほぼ同じ枚数の犯人当てを書く、というイベントがもう楽しい。肝心の犯人当ては作家の個性が色濃く出て、京大推理研出身の麻耶、法月、我孫子の三人はしっかりツボを押えた論理プロセスを書ききってみせたり、貫井徳郎は夕刊フジ相手に”飛び道具”を使ったために正答率1%になってしまったり、とそれぞれ。

巻末に6人の作家の覆面座談会(これも懸賞付き。解答は公式サイト)があったり、探偵役にシリーズキャラ(木更津悠也、法月綸太郎、吉祥院先輩)が使われてたりして、もはや一つの祭り。納涼・犯人当て祭り。またやってほしいなぁ。

全員が匿名の座談会の最後に、なぜかひょっこり探偵小説研究会の蔓葉氏が出てくるのが個人的ヒットであった。

鳥飼否宇『樹霊』

「神の森で、激しい土砂崩れにより巨木が数十メートル移動した」という噂を聞いて、北海道の古冠村へまでやってきた植物写真家の猫田夏海。かつてはアイヌ民族が住んでいた神の森であったが、今はテーマパーク建設のため乱開発が進んでおり、開発推進派と反対派が村全体を巻き込みぶつかっていた。そんな折、反対派の議員が謎の失踪。土砂崩れで移動した巨木が人を飲み込み、別の30メートル級の巨木が裾野から尾根へ移動し、街では街路樹が4本も移動を繰り返し、村役場から墜落死体が発見される。もう、猫田、大パニック。

『中空』『非在 』の<観察者>探偵・鳶山リターンズ。あらすじ書いてみたけど、もう何がなにやら。トラックが1台消えるし、巨木はヒューヒュー鳴くし、重機が密室状況にあるのに植樹がされてるし、書ききれないほどの不可思議状況が乱れ打ち。この一つ一つに解決をつけて、それぞれ結び付けたり切り離したり、アイヌの伝承や北海道の大自然を絡め、大きな大きな全体像が出来る様子はため息が出るほど大変な道のり。

大変な道のりゆえ、その像は多少歪んで無理やり感もあり。また、事前知識が必要な所があって純粋論理だけで解ける話でもなくなってます。でもこの大風呂敷が魅力なのが鳥飼否宇。もーここまでやってくれれば僕は満足です。木の葉を隠すための森が、巨大な謎となって立ちはだかる。

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