穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。
初野晴は初めて読みます。4編からなる短編集。吹奏楽部の部員を増やす=難題を解決して仲間にする、という、これだけ取り出すとRPGみたいな展開。1編づつ奏者を仲間にしていく中で、いわゆる日常の謎系の青春ミステリになるんだろうけど、全然「日常」じゃないのがポイント。
4編のあらすじはそれぞれこんな感じ。
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NHK教育『みいつけた』内の1コーナー、「おててえほん」が超おもしろい。
子どもたちが両手のひらを絵本にみたてて、自分の創作したストーリーを話す、というものなんだけど、もう、お話の展開が想像の斜め上を行って、ここに落ちるかと思ったらオチがなかったり、空中でパンと消えてしまうように終わったり、もうメチャクチャのスットコドッコイなのだ。
例えばこんな感じ。7歳の女の子の作品。
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身代わりの、身代わりの、身代わりは、身代わりの、身代わりだった―!?名作『依存』から9年。変わらぬ丁々発止の推理合戦、あの4人が長編で元気に帰ってきた!書き下ろし長編ミステリ。
『依存』からもうそんなに経つんだなぁ。『依存』で傷を負ったタックが回復するまでにこれほどの年月がかかったような錯覚も覚える。この作品単体でも成り立つようにできてるけど、『依存』の後日談となる作品であるので、事前に『依存』を読んでおくことをおすすめします。というか『依存』も過去シリーズ読んでおいたほうがいい作品だしなぁ…もうどこまで遡ったものやら…。
二つの事件が出てくる。それぞれに不自然な点がたくさんあり、いろいろ明らかになるにつれもうわけがわからなくなる。ひとつは深夜の公園で女性ともみ合ってる間に刃物が刺さって死んでしまった男の事件。男は一駅分離れた居酒屋で飲んでから歩いてその公園に向かっている。普段の行動範囲とは全く異なる公園に。強盗にしては不確実、女性と知り合いにしても待合せが不自然。しかも居酒屋を出た時点で男は手ぶら。
もう一つ、一軒家の中で女子高生とパトロール中の警官の絞殺死体が見つかるという事件。警官がその家を訪れるのは誰にも予測できないはず。しかも、女子高生と警官の死亡推定時刻には数時間の開きがある。犯人は家に留まっていた?にしてもなぜ来るかどうかわからない警官まで殺す?
過去のタックシリーズ同様、シリーズメンバーが酒をがぶがぶ飲みながらの推論を重ねるわけだけど、タックの回復が万全でもないので、仮設につぐ仮説、といったこれまでの作品よりは推論は厚くない。でもいくもの「?」がほろほろと吸い出され嵌められていく様子はもうおもしろくてしかたなし。
オススメです。この作品以降、またタックシリーズの刊行ペースが上がるといいなぁ。
鑑識不在の状況下、警備会社社長と真っ向勝負(「マックス号事件」)
売れっ子脚本家の自作自演を阻む決め手は(「失われた灯」)
斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける(「相棒」)
フィギュアに絡む虚虚実実の駆け引き(「プロジェクトブルー」)
好評『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第二集。
前作『福家警部補の挨拶』に続くシリーズ第2作。コロンボや古畑任三郎みたいに犯人側の犯罪が先に出てきて段々暴かれる、いわゆる倒叙もの。メガネ女子の童顔警部補が今回もネチネチと容疑者を追い詰める。今年の正月にはNHKで単発ドラマ化されたりもしました(主演:永作博美、電線音頭:小松政夫)
『~挨拶』もそのクオリティの高さに大満足でしたが、今回もすごいなぁ。特に好きなのは「マックス号事件」かなぁ。警備会社社長が犯した殺人を偶然乗り合わせた福家が追い詰めるのだけど、舞台は航海中の船上なので鑑識が来れない。船を下りられると逃げられてしまうので、タイムリミットも迫る。不利な状況下ながら、最後のページの最後の最後まで決め手を明かさない構成。おおおと唸ることうけあいです。
ただちょっと、どうしても気になるのが「童顔の福家が聞き込みに行くと、警察の人と思われず門前払いにされそうになり、福家もなかなか警察だと名乗らず、押し問答の末にやっと警察手帳を見せて、すいませんねぇとなる」というくだりが全編かけて何度も出てきてですね、お約束なんだろうけども毎度毎度同じなのでどうもちょっとイラっとしてしまうこともあってですね、「最後まで刑事と思われないまま聞き込み完了」とかバリエーションをちょっと変えたりしてもらえるともっと良いかなぁとか思ったりもしました。
七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。
出だしがコントのような不条理な設定だったりするのです。たとえば「七階闘争」。町で起こる事件がマンションの7階で発生することが多いため、市議会で「7階を撤去する」ことに決定されてしまう。7階に住んでる主人公は当然困惑する。7階を撤去しても、8階がそのまま7階になるんじゃないの?会社の同僚(女子)に誘われて反対運動に参加すると、7階の歴史をこんこんと説明され(古来、最初の7階は地上にあったのです!とか)、完成間近のマンションに忍び込んで階数表示をすべて7階にするテロ行為を行ったりする。
もうこう書くと爆笑短編集みたいな感じになるのだけど、いやいやどうして、終わりのほうはすごいしんみりするのだ。真顔で冗談を言っている人に最初は笑いながら、だんだん話しに引き込まれていって、やがてその不条理世界に感情移入してしまう。”その世界”のルールで語られる悲しみや決意がすんなり入ってくるようになる。うまいなぁ。
廃墟が国の文化遺産となる世界で廃墟を新築することに魂を注ぐ「廃墟建築士」、夜になると目覚める”図書館の野性”(本が飛び回る!)を調教する「図書館」、人類よりも先に建てられたという”意思を持つ蔵”を守る「蔵守」、どれも建物という共通点があるけど、もうひとつ”プロの仕事とは”というテーマがある。失われつつある技術だったり、理解されにくい職業だったりする中で、どう誇りをもって仕事にあたるか、という異世界の仕事人の話でもあるのだ。
不条理な世界を笑いつつ、その世界にはまる。この奇想と着地のバランスはいいなぁ。すごく楽しめました。これより前にでた短編集『バスジャック』も読んだほうがいいみたいなので、おいおい読んでみたいと思います。
「面白きことは良きことなり!」
第20回山本周五郎賞受賞第一作!著者が「今まで一番書きたかった作品」と語る渾身の作。偉大なる父の死、海よりも深い母の愛情、おちぶれた四兄弟……でも主人公は狸?!
時は現代。下鴨神社糺ノ森には平安時代から続く狸の一族が暮らしていた。今は亡き父の威光消えゆくなか、下鴨四兄弟はある時は「腐れ大学生」、ある時は「虎」にと様々に化け、京都の街を縦横無尽に駆けめぐり、一族の誇りを保とうとしている。敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、すっかり落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗「赤玉先生」――。多様なキャラクターたちも魅力の、奇想天外そして時に切ない壮大な青春ファンタジー。
作者自ら「毛深い子」というほどに、狸メインのおはなし。狸・天狗・人間の三つ巴のドタバタ劇を楽しんでいると、ふいに訪れる家族愛。これがなんとも目頭を熱くさせ、もう、これが『太陽の塔』を書いた人と同じ人かと思うほど。
なにぶん狸と天狗なので、京都を舞台にした奇想が自由すぎ。人に化け、風を起こし、狸鍋に恐れをなし、船が飛び、街を叡山電車が暴走する。 『夜は短し歩けよ乙女』よりも、やりたい放題やってます。楽しいなぁ。
そんな様々な騒動で京都の街を縦横無尽に駆け回る「動」と、時に回想で挟まれる家族話の「静」が、森見登美彦独特の飄々とした文体で編まれていき、なんともいい塩梅のエンターテイメントの仕上がり。シリーズ化されるとのことで、これは見逃せないですね。
こんなお話読んだこと無い。傑作!快作!そして、祝!森見登美彦氏ご成婚!
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。
「先輩」視点と「乙女」視点で語られる、春夏秋冬に分かれた4編の連作短編集。1編ごとに舞台は異なり、キテレツなキャラクターと奇怪な出来事が、夢幻と現実の狭間で右往左往する。あぁ、なんと表現したものか。
「先輩」視点は『太陽の塔』『四畳半神話体系』でもお馴染み非モテダメ学生なのだけど、「乙女」視点がまた、作者の妄想の賜物ともいえるピュア女子像。二つのすれ違う視点を行き来するのがとても楽しい。そして、一見、勢い任せの珍騒動に見えながらも、実は周到に伏線が張られていたりと油断ならず、大変おなかいっぱいのできばえ。
色とりどりで、ハイテンションで、それでいて柔らかい、幻想と妄想の爆発。これからの人生、思い出しては何回か繰り返し読み返す予感がする。
