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【オススメ本】 Archive

近藤史恵『サクリファイス』

サクリファイス【sacrifice】— いけにえ、犠牲。

自転車のロードレースがこの作品の舞台。この本を読むまで知らなかったんですが、実はかなり奥が深い競技なんですな。自転車ロードレースは団体競技であり、「エース」と「アシスト」という役割が存在するとのこと。

アシストはエースが勝つための駒として働くのが仕事。エースの先を走ることでエースにかかる空気抵抗を減らしたり、集団から飛び出して全体のペースを乱したり、エースの自転車がパンクした時は自分の自転車の車輪を提供したりする。駆け引きの中に身を投じ、目まぐるしく変わる状況の中で活路を見出すスポーツなのだった。

この物語の主人公は「アシスト」の白石誓。勝つことに意味が見出せず、アシストとしての役割に徹するつもりであった白石。しかし、その実力やレースでの経験から、自分のために走ることを意識し始める。気になるのはチーム内のエース・石尾。彼は自分以外のエースを認めないとの評判が立っていた。彼に潰された選手もいたと言う…。

物語の半分以上を過ぎ、青春小説としてぐいぐい引き込まれてる最中、「惨劇」の章で起こる事件が読者も登場人物も揺さぶっていく。そこから二転三転し、ラストへの急展開。全てが鳥肌。

サクリファイス。いけにえ、犠牲。その言葉が本作でなす意味は、あまりに重い。

金城一紀『GO』

大変いまさらではありますが、おなじみMYSCON代表shakaさん(読み捨てられてゆく言葉たち)のオススメがあって読んでみた。

すごくよかった。

適度なユーモア、血が通ったキャラクター、ドライブ感あふれるテンポ、なによりも主人公からみなぎるパワーとエネルギーと愛。

なんか文字にすると安く見えてしまうなぁ。ちょっと語れない。聞けば映画版も原作を裏切らない出来栄えとか。観なくては。観なくては!

なんだか何も言えてない感想ですいません。これからこの本を読む幸福な人は、予定のない夜に、2時間くらいの時間を見て、携帯電話の電源を切り、一気に読みきることをオススメします。

作中で桜井が杉原に勧めていたジャズのCD、ホレス・パーラン『アス・スリー』をamazonお急ぎ便で買ってしまうほど、僕はこの本が好きです。

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米澤穂信『インシテミル』

「時給11200百円」。誤植だろと思いつつ高額アルバイトに応募した12人。「実験モニター」と称されたその仕事の内容は、1週間のあいだ地下の館「暗鬼館」で過ごすというもの。全員が地下に閉じ込められたその時、放送で「ルール」が説明される。破格の時給に加え、ボーナスが出るという。「人を殺した者」「人に殺された者」「人を殺したものを指摘した者」に…。

「館」で「クローズドサークル」である。これがワクワクせずにいられるかってものですよ奥さん。しかも「クローズドサークル内の殺人ゲームを観察する」目的で施設が作られているので、「ローカルルール」と「ガジェット」がてんこもり(抜け道の存在や各種凶器、12体のインディアン人形まである)。これが本格ミステリの持つゲーム性を否応無しに高めてくる。

設定だけを取り出したら、これまでにもトンでもないルールやおかしな館の作品は幾多もあれど、『インシテミル』独特の面白さは「型の包括」にあると思うのである。

「名探偵 皆を集めて さてと言い」みたいなベタな本格の型を客観的に見つつも、もう一回り大きな枠で包んで話を展開させているのだ。メタ的な趣向でありながらも、話の筋はきちんと館の中に納まっている。あまり詳細に書けないのがもどかしいんだけど、この「一回り大きな枠」の構造はミステリのマニアであるほどツボにはまるんではないか。

古典の本格があって、新本格があって、さらにもう一段階本格ミステリを進めたのが、この王道かつ異形なミステリなのでは、とまで思う次第であります。

構造の妙だけではなく、もちろん幾多ものサプライズや伏線の回収にも彩られている。本格ミステリを読むときのあのワクワク感がまた味わえる。間違いなく2007年の収穫となるだろう、本作を読み逃してはならんですよ。

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「このどんでん返しがすごい!」たった一行で世界が反転するミステリ7選

人力検索はてなにこんな質問がありました。

【絶対にネタバレを見てはいけない小説】を教えて下さい。詳しくは以下の条件すべてを満たしての回答をお待ちしてます。 ★途中やラストに何がしかの真相が明かされ、怒涛.. - 人力検索はてな

「怒涛の展開・どんでん返し」がある小説を教えてください、という質問なのですが、「ミステリー以外」という条件付き。

いやーこれこそはミステリの腕の見せ所ではないのか、というわけで、上記の質問の回答に載ってるもの以外で、個人的に「たった一行」真相を書かれただけでひっくり返って驚いたミステリを7作品あげてみました。秋の夜長にいかがでしょうか。

なお、「この作品はどんでん返しがあるよ」と聞くだけでネタばれになる危険がございます。それを聞いてもなお面白い作品を選んだつもりですが、どうしてもネタばれが気になる方はご注意ください。

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三津田信三『首無の如き祟るもの』

ホラー映画とか、怪談とか、百物語とか、ホラーにからっきし弱い僕である。もう怖い話とかダメなんですよ。だって怖いんだもの。なのでホラー寄りと噂の三津田信三は読んだことがなかったのですが、本作、かなり本格ミステリ度高めということで読んでみました。あんまり怖くなかったよ。よかったよかった。

奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。
二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。
その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。
犯人は現場から消えた長寿郎なのか? 
しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。
一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、
いずれも首無し死体で見つかる。
古く伝わる淡首様の祟りなのか、
それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか──。

いやもうド本格ですよ。戦前と戦後におきた二つの殺人事件が本作のコア。幾多の「首無し死体」を巡り、軽く30を超える謎が、”たった一つの事実”を元にどんどんひっくり返っていく様子は圧巻。複雑な作りなのにちょっとの糸口でスルスルほどけるのがスゴイ。

この話、事件を担当した駐在の奥さん(小説家)が当時を振り返りながら書いた小説、という形をとっている。未解決事件を再度まとめることで全体像をつかみたい、という狙いで書かれてるんですが、この全体を覆う枠も効果をあげているのです。読んでる最中は読みづらかったり乗れなかったりした部分(特に解決のあたり)もあったんだけど、あとから考えるとあーこの「作中作」構成にやられてるのか、と思い当たる節あり。つくづく良くできてる。

直球本格なので、その辺りのコードを心得てる人ほどこの作品はオススメ。これは今年のベスト入るなぁ。

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