金城一紀『GO』

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10月 032007
 

GO (角川文庫)

大変いまさらではありますが、おなじみMYSCON代表shakaさん(読み捨てられてゆく言葉たち)のオススメがあって読んでみた。

すごくよかった。

適度なユーモア、血が通ったキャラクター、ドライブ感あふれるテンポ、なによりも主人公からみなぎるパワーとエネルギーと愛。

なんか文字にすると安く見えてしまうなぁ。ちょっと語れない。聞けば映画版も原作を裏切らない出来栄えとか。観なくては。観なくては!

なんだか何も言えてない感想ですいません。これからこの本を読む幸福な人は、予定のない夜に、2時間くらいの時間を見て、携帯電話の電源を切り、一気に読みきることをオススメします。

作中で桜井が杉原に勧めていたジャズのCD、ホレス・パーラン『アス・スリー』をamazonお急ぎ便で買ってしまうほど、僕はこの本が好きです。

9月 202007
 

インシテミル (文春文庫)

「時給11200百円」。誤植だろと思いつつ高額アルバイトに応募した12人。「実験モニター」と称されたその仕事の内容は、1週間のあいだ地下の館「暗鬼館」で過ごすというもの。全員が地下に閉じ込められたその時、放送で「ルール」が説明される。破格の時給に加え、ボーナスが出るという。「人を殺した者」「人に殺された者」「人を殺したものを指摘した者」に…。

「館」で「クローズドサークル」である。これがワクワクせずにいられるかってものですよ奥さん。しかも「クローズドサークル内の殺人ゲームを観察する」目的で施設が作られているので、「ローカルルール」と「ガジェット」がてんこもり(抜け道の存在や各種凶器、12体のインディアン人形まである)。これが本格ミステリの持つゲーム性を否応無しに高めてくる。

設定だけを取り出したら、これまでにもトンでもないルールやおかしな館の作品は幾多もあれど、『インシテミル』独特の面白さは「型の包括」にあると思うのである。

「名探偵 皆を集めて さてと言い」みたいなベタな本格の型を客観的に見つつも、もう一回り大きな枠で包んで話を展開させているのだ。メタ的な趣向でありながらも、話の筋はきちんと館の中に納まっている。あまり詳細に書けないのがもどかしいんだけど、この「一回り大きな枠」の構造はミステリのマニアであるほどツボにはまるんではないか。

古典の本格があって、新本格があって、さらにもう一段階本格ミステリを進めたのが、この王道かつ異形なミステリなのでは、とまで思う次第であります。

構造の妙だけではなく、もちろん幾多ものサプライズや伏線の回収にも彩られている。本格ミステリを読むときのあのワクワク感がまた味わえる。間違いなく2007年の収穫となるだろう、本作を読み逃してはならんですよ。

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人力検索はてなにこんな質問がありました。

【絶対にネタバレを見てはいけない小説】を教えて下さい。詳しくは以下の条件すべてを満たしての回答をお待ちしてます。 ★途中やラストに何がしかの真相が明かされ、怒涛.. – 人力検索はてな

「怒涛の展開・どんでん返し」がある小説を教えてください、という質問なのですが、「ミステリー以外」という条件付き。

いやーこれこそはミステリの腕の見せ所ではないのか、というわけで、上記の質問の回答に載ってるもの以外で、個人的に「たった一行」真相を書かれただけでひっくり返って驚いたミステリを7作品あげてみました。秋の夜長にいかがでしょうか。

なお、「この作品はどんでん返しがあるよ」と聞くだけでネタばれになる危険がございます。それを聞いてもなお面白い作品を選んだつもりですが、どうしてもネタばれが気になる方はご注意ください。

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首無の如き祟るもの (講談社文庫)

ホラー映画とか、怪談とか、百物語とか、ホラーにからっきし弱い僕である。もう怖い話とかダメなんですよ。だって怖いんだもの。なのでホラー寄りと噂の三津田信三は読んだことがなかったのですが、本作、かなり本格ミステリ度高めということで読んでみました。あんまり怖くなかったよ。よかったよかった。

奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。
二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。
その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。
犯人は現場から消えた長寿郎なのか? 
しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。
一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、
いずれも首無し死体で見つかる。
古く伝わる淡首様の祟りなのか、
それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか──。

いやもうド本格ですよ。戦前と戦後におきた二つの殺人事件が本作のコア。幾多の「首無し死体」を巡り、軽く30を超える謎が、”たった一つの事実”を元にどんどんひっくり返っていく様子は圧巻。複雑な作りなのにちょっとの糸口でスルスルほどけるのがスゴイ。

この話、事件を担当した駐在の奥さん(小説家)が当時を振り返りながら書いた小説、という形をとっている。未解決事件を再度まとめることで全体像をつかみたい、という狙いで書かれてるんですが、この全体を覆う枠も効果をあげているのです。読んでる最中は読みづらかったり乗れなかったりした部分(特に解決のあたり)もあったんだけど、あとから考えるとあーこの「作中作」構成にやられてるのか、と思い当たる節あり。つくづく良くできてる。

直球本格なので、その辺りのコードを心得てる人ほどこの作品はオススメ。これは今年のベスト入るなぁ。

5月 282007
 

先日『夜は短し歩けよ乙女』で吉川英治文学賞を受信した森見登美彦、初めて読みましたよ。面白い!

デビュー二作目にあたる『四畳半神話大系』の舞台は京都の四畳半。4つの章からなる話だけど、すべての章の出だしは同じ。大学に入ってからの2年間がいかに無意味なものだったかを語るモノローグ。出てくる人や場所や時間は同じなのに状況は4つの章で少しずつ異なる。最初は何が起こったかわからず、しかも全く同じ文章のコピペも多数あって手抜きかぁとか思ったけど、全部通して読んでその構成力に驚いた。そんな絵を見せるかぁ。

どうでもいいことに難解な日本語をあてていく主人公の独特の語り口も面白い。でも最後まで読むと、この語り口が悪友やだらだらした生活に対する「照れ隠し」のように見えてきたのですよ。上滑りの言葉の中に胸に閉まった本心が覗いてきて、なんだか急に主人公が生身になった気がしましたよ。本音で話せない時ってなんか変なテンションで毒づいたりとか、語尾で笑い取ったりとかするよねぇ。

四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)

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