放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)

  • 著者/訳者:相沢 沙呼 市井 豊 鵜林 伸也 梓崎 優 似鳥 鶏
  • 出版社:東京創元社( 2010-11-27 )
  • 文庫:345 ページ
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相沢沙呼、市井豊、鵜林伸也、 梓崎優、似鳥鶏。東京創元社発の五人が書き下ろす”学園ミステリ”短篇集。全員1980年代生まれ。

元々持ってるシリーズが学園ものである相沢沙呼(『午前零時のサンドリヨン』)、似鳥鶏(『理由あって冬に出る』ほか)はシリーズものの新作だし、デビュー前の鵜林伸也を先行チェックできるし、昨年『叫びと祈り』で話題をさらった梓崎優の新作も読めるという、なんとも贅沢三昧。文庫書下ろしでお財布にも優しい。

梱包して送ったはずのビデオテープがなくなってる、100球あるはずのボールが99球しかみつからない、バレンタインデーに生徒たちのチョコたちが教壇の前に集められてる…人殺しなんて出てこない、いかにも学園ものの謎解き。若い作家が若人を描くためか、筆致もキャラも生き生きとしてて楽しい。”学園ミステリ”という縛りが効果的に働いているなぁとしみじみ。

その中で特にオススメしたいは梓崎優「スプリング・ハズ・カム」。15年ぶりの同窓会で掘り出したタイムカプセル。中から出てきた、”卒業式放送室ジャック事件”の犯行声明。放送部員たちはあの日を振り返りながら推理合戦を繰り広げる。その結末たるや…!同窓会と卒業式という2つの舞台を行き来して確かめられる、大人になってわかる事と若かったからできた事。ミステリ的な仕掛けもキマっていて、久しぶりにミステリを読み終わって呆然としてしまいました。短編でこれだけのものを詰められるのスゴい。ため息。

間違いなく今年の収穫ですよ。オススメです。

 

思考の整理学 (ちくま文庫)

  • 著者/訳者:外山 滋比古
  • 出版社:筑摩書房( 1986-04-24 )
  • 文庫:223 ページ
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◆”思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。”

1983年刊行の本書が、盛岡の書店員のPOPがキッカケで大ブレイク。「東大・京大で一番読まれた本」という帯もついて、気がつけば100万部を突破。

20年の時を経ても色あせないその秘密はなんだろ?と読んでみると、最初の章「グライダー」はこんな感じの内容。

近年、学校教育では知識を詰め込むだけの教育になっている。頭を使うということは、自ら発想する力にある。引っ張られて飛ぶだけの「グライダー人間」ではなく、自分で飛べる「飛行機人間」になるべきだ。物を覚えたり単純な作業をするのはコンピューターにやらせればよろしい───

えー…全く色あせてません…。20年以上前から全然変わってないんだなぁ。

というわけで本書、思考の整理学と銘打ってるけど、勉強法や記憶術の話ではなく、アイデアの生み方・生かし方を解説している本なのです。
 

◆思いつきの「熟成」

自身の実体験や豊富な事例から、アイデアが産まれる瞬間や逸話を紹介してくれる。各章、5,6ページという短さのエッセイで構成されててとても読みやすい。

で、日々産まれる思考の断片、たわいもない思い付きを一つのアイデアに「忘れる」ことを勧めている。

せっかく思いついたのに忘れんの?と、一見矛盾してるようだけど、こういうことらしい。
 

一度書き留め、忘れる。見返して、再度ふるいにかける。時の試練を経て、個人の頭の中に古典をつくる。

よく「時間が解決する」みたいなことがあるけど、自分の中で「忘れる」ことで時間の解決を早めちゃうのだ。一回忘れて風化させちゃう。風化して残った思いつきを、他のと結びつけたりして新たなアイデアにする。覚えておくだけなら機械でもできる。

なんかこれって、クラウドやGTDっぽいところもあるなと思った。気になる事を全部書き出して、思いついたをEvetnoteに放り込んで、頭の処理容量を記憶ではなく考えることに使う。まさに最近よくある仕事術の話と結びつくなぁと思った。

作中では何度も「見つめる鍋は煮えない」という言葉が使われる。忘れることにより熟成させる。じっと留まっていても考えは固まってしまう。忘れることでどんどん進んで、回して、産んでいく。

うまく忘れることって、コンピューターにできない、人間の特権だものね。

20年の時を感じさせない、まさに普遍のバイブル。研究テーマからブログネタまで、発想の現場で幅広く使える話が満載です。

 

単純な脳、複雑な「私」

  • 著者/訳者:池谷裕二
  • 出版社:朝日出版社( 2009-05-08 )
  • 単行本(ソフトカバー):421 ページ
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いやー、面白かった!

脳科学者の著者が母校で行った講演&三日間の特別授業の講義録。もともと語り口が柔らかい人なんだけど、高校生を相手にしてよりわかりやすい言葉運びになっている。

わかりやすい、の最大の理由は、論文や実験をたくさん紹介してくれるところ。実際に「そんなことあるなぁ」っていう日常の”あるある”が、実は脳の働きだと証明されてたりとか、もう興味津々。すぐに実例や実験結果を出して説明してくれて、3,4ページに一つは例を出してるんじゃないか。そんなペース。

で、しかもその実験たるや、とにかくおもしろい。脳波を見るだけじゃなくて、脳の狙った部分ピンポイントに刺激を与えたりマヒさせたりしちゃうのだ。庭いじりならぬ「脳いじり」の数々が衝撃的。こんな感じ。

  • 運動を司る神経を刺激すると、勝手に右手が動いたりする
  • 「心が痛む」ときは脳で本当に痛みを感じている
  • 脳のある神経をマヒさせると、写真に写っているのが自分が他人かわからなくなる
  • 脳のある神経を刺激すると、幽体離脱を経験できる
  • ラットの脳内の快楽を司る神経を刺激し続けると、餓死する(食べるのより気持ちいいから)
  • ゴルファーの脳波を観測すると、パットを打つ前に入るか外すかわかる

 

もう、えらいことになっている。完全にSFの世界。でももう科学はここまで来ちゃってるのだ。この時点でグッとひきつけられる。

でも、著者はもっと深いところまで入り込んでいく。

例えば、何か物を取るとき。

脳と身体の仕組みを考えると、脳から「あれを取れー」って命令が出てから手が動く、と思いがち。

しかし実は逆で、脳が先に手に命令を送ってて物を取った時はじめて自分で「取った」と認識するらしい。言わば身体が先らしいのだ。無意識のほうが早い。

ということは、僕らは無意識にあやつられている。自分が思っている「自分」は無意識で動いた結果の「後付け」。自分探し、なんてホントはできない。じゃぁいったい自分ってなんなの?自分の意志はどこにあるの?自由はあるの?

科学に基づいた脳の仕組みから、「心」「自由」「命」などを考察していく。自分の脳で「自分」を考える。もはや哲学の領域に入っていくのだ。

自分ってなんだろう?と多感な思春期の若者と共に、「脳」という地図を持った科学者が探検を試みる。それはとてもアカデミックで、なんともエキサイティング!

「そうなの!?」「そうなんだ!?」「そっかー!」と、なんどものけぞる脳の摩訶不思議。著者自身も「今までで一番好きな作品」と言う本書。諸手を挙げてオススメです!

 

 
東日本大震災から100日が経った。

やっと100日、もう100日、まだ100日。時の流れは早くって、でも現実は遅くって。

瓦礫の処理・仮説住宅の建築・雇用の確保・産業の回復など、被災地はまだまだ問題が山積みで、原子力発電所の動向は毎日刻々と変化しているし、政治家たちは内輪もめで信用を落としている。

あれから何か変わっているのだろうか。

100日前を振り返ろうと思って、『PRAY FOR JAPAN』を読み返した。
 

PRAY FOR JAPAN ‐3.11世界中が祈りはじめた日‐

あの巨大地震と津波のあと、ぼろぼろになった姿を見て、日本中、世界中から様々な言葉が生まれた。この本は地震直後に現地やTwitterから寄せられたメッセージを集めた本だ。

救出されながら「大丈夫、また復興しましょう」と笑顔で話すおじいさん。

「地震を逮捕しに行く!」と家を飛び出した男子。

停電で真っ暗な仙台で「みんな星がきれいだよ。上を向くんだ」と鼓舞する声。

歩いて帰宅する人々にコーヒーやトイレを提供する人。

救出した赤ん坊を愛おしそうに抱く自衛隊、ろうそくを前に祈りを捧げる異国の子供たち、たくさんの花束など、たくさんの写真も掲載されている。

悲劇的なものはなく、困難を前にしてもあたたかい人々を照らしたものばかりだ。
 

あの日、被災地外の僕達は、テレビにネットに釘付けだった。

被災地の状況を少しでも知ろうと思った。やっと届いた映像にショックを受け、親や知人の安否を確かめようと必死になり、デマにも翻弄されながら、自分にできることはないかと胸を痛めていた。

胸を痛めた人たちがつながって、なにか大きな流れが産まれるのを感じた。

そして必ず復興すると信じた。必死で自分に言い聞かせていた。

『PRAY FOR JAPAN』のページをめくりながら、あの時の、モヤモヤした、ザワザワした、そんな気持ちがよみがえってきた。
 

あれから100日。

もう一度、考えようと思う。

自分になにができるかを。

もう一度、思い出そうと思う。

あの時感じた、みんながつながる瞬間を。
 

 

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 著者/訳者:アービンジャー インスティチュート 金森 重樹 冨永 星
  • 出版社:大和書房( 2006-10-19 )
  • 単行本(ソフトカバー):280 ページ
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職場や家庭での人間関係というのは永遠のテーマなわけですが、それが「実はすべて自分が原因で引き起こしているのです」と言われたら、どう思います?

いやいやいや。

だってあの部長がさー、とか、うちのカミさんはね…、とかなりますよね。そりゃそうなんです。そうなんですけど、この本は「自分に原因があることに気づく」から出発して、人間関係トラブルを一気に解決に導く本なんです。全米ビジネス書ベストセラー、という触れ込みで、日本でも10万部を突破したらしい。Amazonのレビューも188件中130件が5つ星。なんかすごそう。

カバーの折り返しにはこんな言葉が書いてある。

知っておくべきこと
◇自分への裏切りは、自己欺瞞へ、さらには箱へとつながっていく。
◇箱の中にいると、業績向上に気持ちを集中することができなくなる。
◇自分が人にどのような影響を及ぼすか、成功できるかどうかは、すべて箱の外に出ているか否かにかかっている。
◇他の人々に抵抗するのをやめたとき、箱の外に出ることができる。

これだけ見てもなんだかよくわからない。とりわけ「箱」というキーワードが重要そうな感じ。タイトルにも出てるし。そしてそこから脱出するって書いてある。しかも「箱」の中には自分が入っているらしい。
 

中身は小説次立てになっている。

とある会社の管理職が幹部と1体1の研修をうけることになる。この管理職は一ヶ月前に転職してきた、家庭を顧みない仕事バリバリの人。成果もあげつつあり、なんの研修かよくわからないけど大丈夫っしょ、と行ってみると、幹部からは開口一番「君には問題がある」と宣告される。はぁ!?

その研修こそ「箱」という考え方について学ぶもの。そこから全編通して管理職の心を解きほぐしながら、読者も「箱」についてかんがえる。
 

人は自分を裏切った途端、「箱」の中に入ってしまう、とその幹部は言う。

「あれをやらなきゃな」と思いつつ、疲れていたから、面倒だから、自分がやんなくてもいいから、…と結局やらないまま、なんてことよくありますが、そうやって「やらなきゃな」という自分の思いを裏切ってしまったとき、人は「箱」に入ってしまう。

自分が正しいもん、と「箱」に入ってしまったので、「箱」の中からは外の世界は敵ばかりに見える。こんな疲れてるのは誰のせいだ、これはそもそもあいつがやるべきじゃないか、そうだそうだ、と防御の構えになってしまう。注意されても「だって!」と反論する。

そうこうしているうちに相手も「箱」の中に入ったりして、お互いがお互いを責め合って、事態はまったく進まなくなってしまう。「箱」の中に入る、イコール、仕事にも家庭にもよろしくない結果を産んでしまうのだ。

じゃぁ「箱」の外に出るにはどうしたらいいの?となるけどこれが難しい。本書でもかなり丁寧に慎重に言葉を選んで解説している。キーワードは「相手を人間として尊重すること」

んなこと言っても相手が「箱」の中にいたらどうやって出すの?そんなにずっと「箱」の外にいられるもんなの?「箱」の外に出るってことは自分を正当化しないんだから結局損じゃないの?

様々な疑問・反論を、例を出して問答しながら一つ一つほぐしていく。例が豊富なので、読者もどうしても自分の胸に手を当てて考えてしまうようにできている。「おとなタバコ養成講座」でお馴染み、寄藤文平のイラストもわかりやすい。
 

本書はコミュニケーション本という位置付けになるのだろうけど、小手先のテクニックではなく、もっと根っこの、もっと心の深ーいところの部分をグラグラ揺らしてくる。人生観が変わった、という人が出るのも納得するくらい、なんかここには大事なことが書いてある気がする。

気がする、って書いちゃったのは、まだこの本の言ってることがちゃんと頭と体に入ってないと思うから。「箱」の概念は掴めたようでスルリと逃げてしまう。再読して、血となり肉となって、初めてわかることも多々あるだろう。

人と暮らす以上、人間関係は避けられないもの。素晴らしい未来にみんなで行くために、「箱」から飛び出していけたらな、と願う。オススメ本です。

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