霞流一『スティームタイガーの死走』

人間消失に列車消失、はたまた出版元(ケイブンシャ)も倒産で消失という消え物づくし。

霞流一にしては二人しか人が死んでないのにスピード感溢れる展開。バカトリック・バカギミック大盛りと二重三重のラストでこのページ数ならお得感もあろうというもの。事件が解決されるのが正義のためでもなんでもなく、不可能状況に陥った登場人物が「スッキリする」ためだけに存在しているのもある意味潔いか。

柴崎友香『きょうのできごと』

ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。彼らがその日経験した小さな出会い、せつない思い。5つの視点で描かれた小さな惑星の小さな物語。書下ろし「きょうのできごとの、つづきのできごと」収録。

宅飲みに集まった大学生たちのなんでもない一日。誰も特別でなく、なんでもない会話で、なんでもない夜のはずなのに、場面場面がこんなにも特別に感じるのは感傷のせいだけではないのだろう。さくっと読めるけど満たされる気持ち。登場人物が行間で饒舌な感じ。こういう時大阪弁はずるいなぁ。東北弁だどこうはいがねぇもんなぁ。

クリスチアナ・ブランド『疑惑の霧』

深い霧の中の疑心暗鬼の七人。それぞれが犯人を指摘しあって仮説だらけの中盤終盤。あんだけ引っ掻き回したくせに真相は姿を見せず、あげくドエライところに隠れていて驚き千万。霧の煙幕に五里霧中。

エリザベス・フェラーズ『私が見たと蝿は言う』

ミス・フラーとミス・フラワーが同じアパートに住んでるのはいかがなものか。両方とも性格悪いしで最初区別つかなかったよ…。フェラーズは相変わらず登場人物全員怪しすぎ。それがミスディレクションにもなるのだけど、犯人の意外性が薄くなってしまうのもまた諸刃の剣。