恋する空港―あぽやん〈2〉

  • 著者/訳者:新野 剛志
  • 出版社:文藝春秋( 2010-06 )
  • 単行本:372 ページ
  • ISBN-10 : 4163292608
  • ISBN-13 : 9784163292601
  • 定価:¥ 1,680

あの空港トラブル処理小説『あぽやん』(→以前の感想)の第2弾。今回もオススメ!むしろ前回に増して!

空港=airportを略してAPO。国内最後の水際であらゆるトラブルに対応する空港のプロフェッショナルをかつて旅行会社・大航ツーリストでは「あぽやん」と呼んだ―成田空港所勤務2年目を迎えた遠藤慶太は新人教育に恋のライバル登場に悪戦苦闘。しかも、親会社・大日本航空の経営悪化の煽りを受けて空港所閉鎖の噂が!?立派な「あぽやん」目指して今日も走る遠藤の運命やいかに?爽快お仕事小説。

短編6本からなる短篇集。成田空港のツアー客用カウンターが舞台。チケット渡しなどの出発業務を行うところ。しかしそこは空港。集合遅れ、予約重複、出発遅れなどのイレギュラー対応が日常茶飯事な場所。前作はパスポート不所持、子供置き去り、幽霊予約などのトラブルをなんとか乗り越えてお客様を出発させてきた”あぽやん”。

今回のトラブルも強敵揃い。出国審査まで時間稼ぎをしないといけないテロリスト疑惑の男、出発直前で息子が迷子になってしまう妊婦、新興宗教の教祖のパスポートをなくした営業マン、台風の直撃によって騒ぎ出す韓流スターファンのおばさま方…。空港のトラブルは飛行機出発までのタイムリミットがあるので、毎回毎回手に汗握るスリリング。お客様のために一生懸命走りまわり、知恵を閃かせ、状況によって乗り切っていく。

そして短編一編ごとにそれぞれのトラブルも処理しながらも、グァム勤務帰りののんびり新人の教育や、所内恋愛の行方、テロリスト疑惑の男が残した謎、空港所の閉鎖騒動などをつないだ連作形式になっている。この連作の”縦糸”の密度が前作以上。連作の題材とトラブルの解決を巧みに絡ませながら展開する様はホントにお見事だなぁ。

なんとしてもお客様を出発させる。誇りを胸に駆け回るあぽやんたちに胸が熱くなる。絶対映像化に向いてると思うなぁ。もうオススメ!

 

キッド・ピストルズの醜態

  • 著者/訳者:山口 雅也
  • 出版社:光文社( 2010-09-17 )
  • 単行本:304 ページ
  • ISBN-10 : 4334927319
  • ISBN-13 : 9784334927318
  • 定価:¥ 1,995

金融業者コーエンの散らかった部屋で、作家ノーマンは途方に暮れていた。机には白髪の老人の生首。自分の鞄には男のものらしき手首。手には、この死体がコーエンのもので、自分がその殺害にかかわったことを示唆するマザーグースの歌詞……。何が起こったのか? スコットランドヤードの腕利きパンク探偵、キッド・ピストルズが風変わりな密室見立て殺人の真相に挑む! 傑作本格ミステリ中編を3本収録した、シリーズ待望の最新刊。

2年ぶり6作目になるキッド・ピストルズシリーズ。久しぶりなんで世界の設定忘れたなぁ…と思ったら、前書きにちゃんと「パラレル英国の概説」と題した解説があった。よかったよかった。

舞台はパラレルワールドの英国。年代は我々のいる世界と同じだけど、パラレル英国では警察の権威が地に落ちており、代わりに探偵が事件解決の権限を持っている。警察では誰でも警察官になれるようになってしまって、パンク族まで入隊できちゃう。このシリーズの主人公、キッド・ピストルズもその「パンク刑事」の一人。持ち込まれるのは変てこな事件ばかり。しかも「マザーグース」になぞらえたものばかり…。

「だらしない男の密室 ー キッド・ピストルズの醜態」「《革服の男》が多すぎる」「三人の災厄の息子の冒険 ー キッド・ピストルズの醜態、再び」の中篇3編を収めた中編集。

上に挙げたあらすじの「だらしない~」と、投獄されてるはずの殺人鬼《革服の男(レザーマン)》の目撃情報から展開が二転三転する「《革服の男》が多すぎる」は伏線の絡ませ方と解き方が巧み。そういえばあそこに書いてあった!という王道の驚きと、王道からひねくれた展開の妙がおもしろい。

最後の「三人の~」だけちょっと毛色が違って、犯人や動機は?という謎ではなく、「このお話は一体なに?」という趣向。閉鎖病棟に閉じ込められて…という出だしなんだけどなんだか様子が変。お互い身に覚えがない三人の双子。消える死体。不完全な建物。頼みのキッドも泥酔状態。ただちょっと予想がつく割に冗長だったりなので、トーンダウンに感じてしまいました。趣向は面白いんだけどなぁ…。
 

 

ピーターの法則

  • 著者/訳者:ローレンス・J・ピーター レイモンド・ハル
  • 出版社:ダイヤモンド社( 2003-12-12 )
  • 単行本:222 ページ
  • ISBN-10 : 4478760853
  • ISBN-13 : 9784478760857
  • 定価:¥ 1,470

アホな上司、大企業の不祥事、政治家の信じられない失策、なんで管理統制の取れた社会で信じられないミスが起こるのか?

このカラクリを「なぜなら上司は大体みんな無能だから」とザックリ説明できちゃう法則がある。その名も『ピーターの法則』。ちょっと面白かったのでまとめてみました。

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白戸修の狼狽

  • 著者/訳者:大倉 崇裕
  • 出版社:双葉社( 2010-04-06 )
  • 単行本:392 ページ
  • ISBN-10 : 4575236896
  • ISBN-13 : 9784575236897
  • 定価:¥ 1,785

社会人になったばかりの白戸修。アルバイト先や、落とし物を拾ったところで事件に巻き込まれる。人の頼みを断れない、困っている人を見過ごせない、そんなお人好し青年だけど、いつの間にか事件を解決。サクッと読めてクスッと笑える癒し系ミステリー。

『白戸修の事件簿(旧題:ツール&ストール)』に続く稀代のお人好し・白戸修。東京・中野に行くと必ず事件に巻き込まれるという特異体質(?)の持ち主である。

その内容は、落書き犯人を追う「ウォールアート」、コンサート会場設営に潜む妨害「ベストスタッフ」、隠された盗聴器に仕組まれた裏の裏「タップ」、都内中を巡るスタンプラリーと暴力スリ集団「ラリー」、コンサート会場警備にまたしても罠「ベストスタッフ2 オリキ」を含む短編5編。

会場設営や盗聴バスターズ、アイドルの熱烈ファンまで、「その道のプロ」が白戸修を巻き込んでいく。「その道」の世界には「その道」の常識や隠語があって、日常から一歩踏み込むとまた別の世界が広がるのが面白い。特にアイドルファンの「オリキ」はホントにこんなんなってんの!?というくらいちょっとおっかない世界である(でもやっぱりホントっぽい→ オリキとは – はてなキーワード

ある意味マニアックな世界とそこでの犯罪を描きながらも、お人好しキャラ白戸修のおかげで救いのある物語となり、全体として後味のよいライトな仕上がりになっております。軽めだけどしっかししたミステリをお求めの方に。

 

モノクロームの13手

  • 著者/訳者:柄刀一
  • 出版社:祥伝社( 2010-02-09 )
  • 単行本:319 ページ
  • ISBN-10 : 4396633335
  • ISBN-13 : 9784396633332
  • 定価:¥ 1,890

加門耕次郎が気がつくと、見たこともない異様な世界にいた。荒れ果てた大地、濁った空、そして大地に描かれたマス目に配置された人々―。たくさんの人々が倒れている中、目覚めているのは4人だけ。生者の上空には白い丸が、死者の上空には黒い丸が浮かんでいた。どうやら、この世界はオセロゲームのルールに則って生死が決定されるらしい。圧倒的に不利な状況の中、神の手に対抗し、より多くの人々を甦らせる逆転の手はあるのか?一手ごとに緊張感が高まる中、加門たちの運命は。

死後の世界は8×8のオセロ盤。1マスに1人。四隅の2×2の16マスが空いていて、中央の2×2の4マスが白石の生者、残り44マスが黒石の死者という状況。盤の外をふらふら歩いてる「さまよえる者」が次の石となる。だいぶムチャクチャな世界です。

いかに白石の生者を増やして終わるか、という、もう完全にオセロゲームの話になってしまうのだけど、工夫はいくつかされている。次の一手までに制限時間があり、オーバーすると全員死んでしまう。良かれと思って白(=生者)を増やしていくと、色んな人がワイワイ言い出して次の一手がなかなか決まらない。次の一手の論争と迫るタイムリミットがサスペンスを盛り上げる。

また、盤上には知り合い同士が存在している。親子、夫婦、恋人、友人、宿敵…。この人を生き返らせてくれ。あいつを殺してくれ。それぞれの思惑が交錯して盤上は混迷を極める。

この辺の人間模様の交錯をうまく出せればもっと面白くなると思うのだけど、視点人物が一部に固定されていてあまり考えの多様性が出てなかったり、終盤はどうしても次の一手が限定されたりして、ちょっともったいない。ラストも…な感じ。

神の采配により、四隅の石はどうしても黒になってしまう。この状況下での逆転は面白いものの、ちょっと小説としてはつらいなぁ…と思いました。この後、龍之介シリーズの『人質ゲーム、オセロ式』が出てるので、ひょっとして壮大な前フリなのだろうか…。

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