劇団ひとり『陰日向に咲く』

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3月 152006
 
陰日向に咲く 陰日向に咲く
劇団ひとり

幻冬舎 2006-01
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お笑い芸人・劇団ひとりの初めての小説。帯には「ビギナーズラックにしてはうますぎる」という恩田陸の推薦。売れて売れて17万部超えたらしいですよ。すごいなー。

世の中からちょっとだけ落ちこぼれた人たちがちょっとだけ見つける幸せ。5編の短編を収めた連作集。台詞や言い回しがベタだったり臭かったりするところが気になる人もいるかもですが、劇団ひとりのネタを見ればわかるようにこれが元々の持ち味。変なシチュエーションに落ちた人を臭い台詞で可笑しく寂しく表現していく。

最初少し読んだ印象では、まぁネタの延長線上かなぁ、と思っていたんだけど(ホームレスに憧れるあまり夜中に”コスプレ”するサラリーマンとか)、進むにつれ段々巧くなっていってるような気がする。他の短編の登場人物が別の短編に出てきたり、という連作短編の形をとっているものの、ちょっと顔が出るくらいの繋がりであまり気にしてなかったんですが、最後の「鳴き砂を歩く犬」でこの形が巧いこと使われて感心。すっかり油断してた。こう来るのかー。

お笑い芸人だからこそ書ける切なさ、という面もあり、恩田陸の推薦帯の通り「あと2冊は書いてもらわなきゃ。」ですな。油断して読んだらなんか良かった、というボディブロー。気づかぬところでその花はひっそり咲いていたのだった。

西澤保彦『異邦人―fusion』

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3月 052006
 
異邦人―fusion 異邦人―fusion
西澤 保彦

集英社 2005-01
売り上げランキング : 50,667
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2000年12月31日。20世紀最後の日、実家に帰省すべく飛行機に乗った私。到着してみるとなんか様子がおかしい。持ち物はいくつかなくなっており、通っていたはずのバスもない。不思議に思って実家に電話してみると父が出た。23年前、何者かに殺害されて、死んだはずの父が…

主人公は幼いころこの家の養子になっており、血の繋がらない姉がいるのですが、この姉が同姓しか愛せない性癖の持ち主。主人公がタイムスリップした23年前というのは、頑固一徹の父と姉はこの性癖が原因で仲違いして、姉は家出同然の状態で音信不通になっている。そしてタイムスリップした4日後が、まさに父が殺害される日なのだ。

姉には幸せに暮らして欲しいし、父には死んで欲しくないし、でも父が死ねば姉が自由になるのかもしれんし、その他にも実家の後継者の問題、姉の恋人(女性)や姉に対する好意、タイムスリップに伴うルールなど複数の悩ましい要素が絡みあう。主人公悩みまくりである。

タイムスリップと殺人事件の真相に西澤保彦お得意のSFミステリの手腕が発揮されていますが、それにも増して親子愛・兄弟愛・同姓愛を一つの物語の中に編込んでいくため話の筋がとても深い。ラストに現れる”新しい絵”にはちょっとほろりと来る、まさにオトナのタイムスリップ譚であります。

3月 052006
 

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

  • 著者/訳者:太田 忠司
  • 出版社:中央公論新社( 2005-12 )
  • 新書:228 ページ
  • ISBN-10 : 4125009244
  • ISBN-13 : 9784125009247
  • 定価:¥ 945

大戦の傷跡をまだ深く残しつつも、人々が希望を胸に復興をとげてゆく時代―一九五〇年の十二月。それは三百年以上続く由緒ある旧家、西郷家に届いた一通の手紙から始まった。便箋に書かれた“すべての事件の謎は我が解く”の一文。その意味する「謎」とは?壮麗な旧家の屋敷を舞台に繰り広げられるおぞましき人間関係、次々と起こる奇怪な事件。はたして犯人の正体は?そして、その目的は一体何なのか…!?

と、amazonの紹介文にあるわけなんですが…いやーこれは面白かった。爆笑してしまいました。あの最終章は作者自身が「さぁ、この本を壁に投げておくれよ!」と明るく誘っているとしか思えんですよ。綺麗な放物線を描けるよに本にちょっと重りをつけたいくらいですよ。

高慢な探偵役と気弱なワトソン役の対比、旧家の諍い、お屋敷と執事と美術品など、本格ミステリのお約束ガジェットをこれでもかと配置して、最後に下にあったテーブルクロスを一気に引き抜くような大オチ。記録よりも記憶に残るミステリがまた一つ誕生しましたよ。ひでぇ~なぁ~(←褒め言葉)

2月 262006
 

吾輩はシャーロック・ホームズである 吾輩はシャーロック・ホームズである
柳 広司

小学館 2005-11
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ワトソンの元に連れられてきた奇妙な日本人。K・ナツメという名の彼は自分のことをシャーロックホームズだと思い込んでいるらしい。折りしもホームズは不在。知人の依頼により、治療の目的でナツメを預かることになったワトソンであるが…

イギリス留学中の夏目漱石が、渡航のストレスから自分をホームズと思い込むという、なんともトンでもなスタート。初対面のワトソンを思いっきり格下扱いですが、部屋に転がってるステッキから持ち主を推理するものの大ハズレ。女子に弱くて自転車にも乗れない。偉そうだけどトンチンカンな愛すべきキャラになってます。

この二人が参加した降霊会で殺人事件が起こるわけです。で、一見、本格ミステリ的に「ベタ」に見えるこの事件が、時代背景やホームズの世界感を絡めた大きな流れに乗っかっていくのが見どころでしょうか。不可能状況の解決とその背景にあるもの、この核と枠を既存のホームズ作品から再構築する手際はなかなかに高度。おぉー。

そうそう、事前に「バスカヴィル家の犬」と「ボヘミアの醜聞」を読んでおくとモアベターかもですよ。

2月 202006
 

激走 福岡国際マラソン―42.195キロの謎 (小学館ミステリー21)

  • 著者/訳者:鳥飼 否宇
  • 出版社:小学館( 2005-11 )
  • 単行本:234 ページ
  • ISBN-10 : 4093876231
  • ISBN-13 : 9784093876230
  • 定価:¥ 1,470

ドキュメンタリーのようなタイトル。バカミスの雄、鳥飼否宇であるがまさか…と本を開くと、レース開始から刻々と綴られる参加選手たちのモノローグ。まさかホントにドキュメンタリーなのか、と思ったその時、ランナーが倒れた。

しかしラスト近くまでミステリーらしいことはほとんど起きません…。バカミス的殺人トリックと後付け感がぬぐえない大オチ。スポーツ小説として読めないこともないと思うのですが、鳥飼好きとしてはうーん軽いかなー…。

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