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な行の作家 Archive

法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』

講談社ミステリーランド第9回配本。ニューヨークに住む怪盗グリフィン。「あるべきものを、あるべき場所に」を信条とする彼の元に、メトロポリタン美術館のゴッホの自画像を盗んで欲しいという依頼が舞い込む。信条に反する依頼を断るグリフィンだったが、その絵は贋作だと聞かれされて…というのが第1部。第2部の舞台はいっきにカリブ海。ボコノン共和国のパストラミ将軍が保管している「人形」を奪うというミッションだが、人形とは実は『呪いの土偶』で…。

陰謀、陰謀、また陰謀。怪盗の冒険活劇はスリリングで、小さな逆転から大きなどんでん返しまで、一冊で何度もひっくり返される。楽しいなぁ。子供向けのシリーズですが、真作と贋作の目まぐるしい逆転劇は大人もついてくるのがやっとのロジック。子供のころからこんな「英才教育」を受けたらミステリが楽しくてしょうがないだろうなぁと羨ましい。

ちょっとハードボイルドで洒落もので憎めない怪盗グリフィン。可愛い挿絵の効果も上々。法月綸太郎が生み出したこのジュブナイルは、後期クイーン問題で悩める姿など微塵もない、わくわくする快作に仕上がっております。英題を”The Caribbean Ring Finger”にしているのがまた心憎い。

怪盗グリフィン、絶体絶命
法月 綸太郎
講談社 (2006/03)
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西澤保彦『異邦人―fusion』

異邦人―fusion 異邦人―fusion
西澤 保彦

集英社 2005-01
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2000年12月31日。20世紀最後の日、実家に帰省すべく飛行機に乗った私。到着してみるとなんか様子がおかしい。持ち物はいくつかなくなっており、通っていたはずのバスもない。不思議に思って実家に電話してみると父が出た。23年前、何者かに殺害されて、死んだはずの父が…

主人公は幼いころこの家の養子になっており、血の繋がらない姉がいるのですが、この姉が同姓しか愛せない性癖の持ち主。主人公がタイムスリップした23年前というのは、頑固一徹の父と姉はこの性癖が原因で仲違いして、姉は家出同然の状態で音信不通になっている。そしてタイムスリップした4日後が、まさに父が殺害される日なのだ。

姉には幸せに暮らして欲しいし、父には死んで欲しくないし、でも父が死ねば姉が自由になるのかもしれんし、その他にも実家の後継者の問題、姉の恋人(女性)や姉に対する好意、タイムスリップに伴うルールなど複数の悩ましい要素が絡みあう。主人公悩みまくりである。

タイムスリップと殺人事件の真相に西澤保彦お得意のSFミステリの手腕が発揮されていますが、それにも増して親子愛・兄弟愛・同姓愛を一つの物語の中に編込んでいくため話の筋がとても深い。ラストに現れる”新しい絵”にはちょっとほろりと来る、まさにオトナのタイムスリップ譚であります。

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貫井徳郎『悪党たちは千里を走る』

悪党たちは千里を走る 悪党たちは千里を走る
貫井 徳郎

光文社 2005-09-26
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小市民な詐欺師たちが一攫千金を企んだ「犬の誘拐」。お金持ちの犬をさらって身代金を、と思ったら、ターゲットの家の子供が話しかけてきて…。二流詐欺師の犯罪喜劇はどんどんあらぬ方向へ。

イベントが次から次へとやってきて、状況がくるくる変わる早い展開。スピードがあって飽きさせない。登場人物たちの会話も小気味良く…なんですが、どことなくベタな感じなので(”表面上”憎まれ口を叩きあう詐欺師/男と詐欺師/女みたいな)、ちょっとインパクト不足なところも。

誘拐事件そのものは携帯やネットといった現代の小道具を使ったものではあるんだけど、なんかドキドキが足りない感じ。読者を騙すような欺くような、”見えない”演出がもっと欲しかったと思ってしまう。『慟哭』『光と影の誘惑』といった作者の他の誘拐ものと比べてしまうと、本作は喜劇色を強めたという違いはあれど、もっと期待値が高まってしまうのであった。

作者の傾向からすると異色の流れですが、シリーズ化するのならばちょっと気になる、憎めないお話であります。
 

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西澤保彦『パズラー 謎と論理のエンタテイメント』

パズラー 謎と論理のエンタテイメント

意外なことに西澤保彦初のノンシリーズの本格ミステリ短編集。『夏の夜会』で見せた曖昧記憶の暗い穴「蓮華の花」、もはやスタンダードの西澤流反転「卵が割れた後で」、ただのかくれんぼのはずが「時計じかけの小鳥」、都筑道夫へのオマージュ「贋作「退職刑事」」、大仕掛けの大胆さはまさに「チープ・トリック」、アリバイがあるのに主張しない犯人の恐るべし意図「アリバイ・ジ・アンビバレンス」の6本

副題が「謎と論理のエンタテイメント」とあるようにまさに都筑道夫リスペクト。論理重視のパズラー小説が6本立て続け。参加型の犯人当てではなく、目の前で繰り広げられる論理のアクロバットを客席砂被りでとくとご覧あれの一冊。ノンシリーズなのでキャラでなく話の筋に注目できるのも本気勝負のパズラーを感じさせます。個人的には「アリバイ・ジ・アンビバレンス」の構図がもう衝撃です。あんなことになっていたなんてなー。

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西澤保彦『フェティッシュ』

フェティッシュ
フェティッシュ
posted with amazlet on 07.06.20
西澤 保彦
集英社 (2005/10)
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黒タイツ萌え老人、有機物ダメ看護婦、もてなし好き中年、自殺願望主婦、女装癖刑事、彼らの前に現れた絶世の美少年。「触ると死んでしまう」その儚さと謎に惑わされ、狂わされ、壊れていく5人。

5人の視点から交互に描かれる美しすぎる少年。一見死んだように見えて気がつくと消えている、という謎を持っていて、これに連続殺人事件が関って、そしてそれぞれの欲望が絡み付いて、読み進めるにつれてどんどん異型の塊が膨れ上がっていく。強引とも見える落しどころも妙に心にひっかかったままで取りきれない。読者をも絡めとろうというのか。

目が離せない話運びはさすがの西澤保彦ですが、ちょっとグロいシーンが結構あるのが個人的に苦手でうーうー。面白いけど怖いよー。

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