ま行の作家 Archive
三崎亜記『となり町戦争』
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となり町戦争 三崎 亜記 集英社 2004-12 |
第17回小説すばる新人賞受賞作。『本格ミステリ・ベスト10 2006』で石持浅海が1位に挙げていた作品。なぜー。
ある日届いた「となり町との戦争のお知らせ」。しかし日常は全然変わらない。となり町を通って普通に通勤する毎日。やがて偵察の辞令を受けた”僕”は、見えない戦争を確かめるため役場へ向かう。
戦争が「公共事業」として役所で淡々と処理される、というアイデアがシュールで、見えない所で戦争が進んでいる(広報の「人口のお知らせ」で戦死者の数だけ増えていったり)というのも背筋を寒くする要素を備えている。なんだけど…読み進むと恋愛が絡んだり戦争の様子がちょっとだけ見え始めてきて、この着想の良さが薄くなってくような気がしてしまう。うーん。
輪郭だけでこの物語が終わらせると良くできたショートショートになるんだけど、「戦争」というテーマについて深く掘り下げようとすると着想と合わなくなる。アンバランスな形なのかなぁ。アイデアや描写には力がある人だと思うので今後に注目したい。
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三雲岳斗『旧宮殿にて』
光文社 (2005/07/20)
売り上げランキング: 22,658
時はルネサンス期イタリア、ミラノ。舞台は宮廷に認められた建築家や芸術家が集まる「旧宮殿」。様々な揉め事に気をもむ宰相ルドヴィコが相談する相手、その人こそレオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチであった。
5編からなる短編集。中世なので人名が読みづらいカタカナで誰が誰やらだったのですが、慣れてくると舞台設定の特殊さがメインとなる謎に絶妙に絡んできて気持ちいい。衆人環視のなか右腕だけ残して消えた彫像、塔に幽閉された女が子羊の死体を残していなくなり、祝宴に飾られていた肖像画が謎の譜面を残して消失する。どれもなかなかにトリッキー。
そしてなんといっても注目は4つめの「二つの鍵」。『ザ・ベストミステリーズ〈2005〉』や『本格ミステリ05』にも収録され、
2005インターネットで選ぶ本格ミステリ短編ベストにも選ばれたのもうんうんと頷ける傑作短編。遺言状を入れる箱を特注した大富豪。その箱には金・銀二つの鍵がついていて、金の鍵で閉めると銀の鍵じゃないと開かないし、銀の鍵で閉めると金の鍵じゃないと開かない。銀の鍵三本を息子に配り、大富豪は金の鍵で箱を閉めた。自分の生きてる間に誰かが箱を開けたら相続権は愛人に渡ると言い放つ。そしてある晩、富豪が殺されて箱が持ち去られる。ここから始まるフーダニットはすーごーいーぞー。こんなにキマッた消去法ロジックは久々に見た。読む価値大アリです。
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松尾由美『雨恋』
帯には「『文学賞メッタ斬り』の大森望氏も涙!」の文字。鬼が泣いた、みたいな言われよう。いやでもこれホント泣きそうだわー。
雨の日にしか現れない幽霊・千波と、そのマンションに住むことになった渉。見えない千波に怯えているうちに彼女の死の真相を探ることになり、渉が動くことによって少しづつ事実が明らかになるのですが、見えなかった事実が明らかになる度に千波の姿が見え始めるという驚きのルールが判明。しかも足から徐々に。まるで推理の到達度メーターのような展開ですが、姿が完全に見えるようになるイコール謎が完全に解けたことになるわけで、そうなるともしや千波は…と、彼女に惹かれ始めた渉にとっては悩ましいことに。すごい。ミステリ部分の進捗=恋愛部分の進捗に繋がるとは…。
恋愛要素の切なさもさることながら、見落としがちなのがミステリ部分のレッドへリングと伏線の多さ。次々と可能性がつぶされてくように見えて、実は真相の手がかりがそこかしこにばら撒かれている、という理想形にかなり近づいているんじゃないだろうか。外堀が入念に掘られている印象あり。
というわけで、ミステリ要素・恋愛要素、共におススメの一冊。惹かれれば惹かれるほど近づいてくる別れの予感。しっとりと描かれる雨模様。「ラスト2ページの感動」の文句に偽りなし。タイトルもこれしかない嵌まり具合です。
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麻耶雄嵩『神様ゲーム』
んっ?んっ?んっ?読了後の沸き起こるなぜの嵐。何が起こったんだ!?ジュブナイルの皮をひとたびめくって覗き込めば、そこは「探偵役」と「神の視点」が共存する後期クイーン的世界。いやいやというかこの奇妙な後味はなんだ。ノドに小骨が靴に小石が。
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やってる人 : INO