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ま行の作家 Archive

道尾秀介『骸の爪』

取材のために滋賀県の仏所・瑞祥房を訪れた小説家・道尾秀介。そこには俗世から離れてひたすらに仏像を作り続ける人々がいた。その夜、仏所の中を出歩いた道尾は不可解な現象に遭遇する。口を開けて笑う千手観音、頭から血を流す仏像、茂みの向こうから聞こえる「マリ…マリ…」という声…。20年前に失踪した仏師の謎、天井についた血痕、そしてまた仏師が消え…。

舞台はほとんど瑞祥房の中で、関係者も10名に満たない。ページ数も400P弱。その中に仕込まれた伏線の多さ、そして物理トリックも心理トリックも絡めた全体像たるや、よくここまで詰め込んだなぁと感嘆。ラスト近くはめくってもめくっても新展開で、伏線の繰り出し方が巧いです。見事。

舞台が制限されているからか、読者が作品世界に浸りやすく、仏所という特殊な空間での「考え方」や「出来事」が受け入れやすくなっているのも成功の要因の一つかと(京極夏彦『鉄鼠の檻』などに通じる感じ)。無駄な要素ほとんどなし、謎と解決に純粋に奉仕する小説、これぞ本格ミステリだ。と言ってしまおう。

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水田美意子『殺人ピエロの孤島同窓会』

殺人ピエロの孤島同窓会
水田 美意子
宝島社 (2006/02/20)

第4回2006年『このミステリーがすごい!』大賞 特別奨励賞受賞作。帯にこれでもかと書いてあるとおり執筆当時作者は12歳。孤島で開かれた同窓会に集まった35人が、殺人ピエロによって一人また一人と惨殺されていく、いわゆる孤島もの。

バトルロワイヤル+なぜか能天気+無駄なエロ、そして最後にサプライズが用意されているのはお約束として、他にもいろいろと要素を絡めてきて、話を島だけに留まらせない。2ちゃんねる風のネット掲示板の書き込みとか、島に建てられた第3セクターのレジャー施設には旧日本軍のお宝が?、とか。というか12歳で「第3セクター」という言葉を出してくるのがもう驚きだったりするのだけど。

結果としては全体的に荒削りで若書きなのは否めない。でも、書いてる本人はすごい楽しいんだろうなぁというのは伝わってくるし、リーダビリティも備えてると思う(実際一気に読めた)。経験次第の原石。さぁこの先物買い、将来どう化けるか。

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道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏
向日葵の咲かない夏
posted with amazlet on 06.05.01
道尾 秀介
新潮社 (2005/11)

終業式の日、学校を休んだ同級生・S君の家に寄った主人公は、そこでS君の首吊り死体を発見する。慌てて学校に戻り先生に事情を説明。しかし先生と警察が駆けつけると、S君は消えていた。部屋で一人、困惑しているとS君の声がする。そこには一匹の蜘蛛。S君の声は、自分は蜘蛛になって生まれ変わったと言うのだ…。

同様の手法をつい最近見たので、どうしてもインパクトは減ってしまう…。主人公たちの行動の原点となる「推論」がどうも頭に入ってこないので、最初は主人公の家や担任教師の”キモイ”描写に目がいきがち。ホラー寄りの人でもあるし。

で、これが後半になるにつれ、あちこちの線が半ば強引に集まり始める。筋を通すために手段を問わない繋ぎぶり。最初に本筋ありきでそれに近づけていく方法論ではなく、この収拾の付かない事態に蹴りをつけるために物語が暴走してます。あーあーえらいこっちゃー。眩暈による胸のむかつきをずっと抱えたまま読んだような、独特の読後感です。

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松尾由美『スパイク』

スパイク
スパイク
posted with amazlet on 06.04.12
松尾 由美
光文社 (2004/11/12)
売り上げランキング: 99,443
おすすめ度の平均: 4

飼い犬の散歩で訪れた下北沢で、緑は同じビーグル犬を連れた幹夫と出会う。二匹の犬は姿もそっくりで名前も同じ「スパイク」。初対面から意気投合した二人は、来週も同じ場所で会おうと約束。しかし約束の日に幹夫は現れず。正直言って幹夫に一目惚れの緑は、がっくりしてアパートに帰還。一人の部屋で「どうして来なかったんだろう」と独り言を呟くと、「まったくだ、どうしてだろうね」という声。驚いて振り向けば、スパイクが渋い男の声でしゃべっているではないか!

こうして奇妙な「探偵団」が幹夫の消息を追うことになるのですが、これが普通の人探しではないのですよ。スパイクがなぜしゃべれているのか、というところにSF的設定が作られていて、そのルールに従いつつ探さねばならぬのですが…ここから先は興をそいじゃうので、なんとも紹介がもどかしい。ううむ。

ともすればトンでもSFになりかねんこの話。これを渋い声でクール、悲観的で辛らつだけど頼れるビーグル犬、スパイクのキャラがストーリーを引き締めてるのが魅力。非常識な現実を冷静な視点で語り、しっかりと話の中心にいる。ふらふら揺れる人間の心模様を、一匹の犬が支えているのであった。

で、こんなSF状況下でどう落とし前つけるのか、と色々な意味でハラハラしていましたが、しかしまぁそれでも暖かく優しい恋を紡ぎだしてくるから松尾由美はほんと侮れないですな…。SF・ミステリ・恋愛、様々な要素織り成す損なしの一冊。

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麻野 一哉 飯田 和敏 米光 一成『日本文学ふいんき語り』

日本文学ふいんき語り 日本文学ふいんき語り
麻野 一哉 飯田 和敏 米光 一成

双葉社 2005-11-30
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Exciteブックスで連載されていたベストセラー本ゲーム化会議の単行本化。前作『ベストセラー本ゲーム化会議』であらゆる本を妄想でゲーム化しちゃったゲームデザイナー3名が、今度は日本近代文学に挑む。『文豪の部』と『ベストセラーの部』の2部構成。なんとPR用のブログまであります→日本文学ふいんき語り

このお三方、特に近代文学に詳しいとか一家言あるわけでもないため、フラットな状態からそれはそれは自由に文豪たちをいじくりまくり。太宰治の台詞廻しに爆笑したり、宮沢賢治を中二病扱いしたり、夏目漱石『こころ』の優柔不断の先生に「ほうれんそう(報告・連絡・相談)がなっていない!」と突っ込んだり。もう自由自由。「国語」にこんなに自由なツッコミをかます、というのがまず新鮮。

その自由の末に生まれるゲームたるや、『こころ』恋愛シミュレーションや『痴人の愛』ネット募金や江戸川乱歩ランド構想まで多種多彩。ゲームという木枠にグリグリと文豪を押し当てて、新たな鑑賞ができる一枚の絵に仕立て上げちゃう。馬鹿話の末の夢物語。おもしろい。

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