5月 232011
 

「考えすぎる」脳をどうやってクールダウンさせるか?
 
イライラ・不安といった負の感情を、仏教の教えに照らしながら、どのように抑えて穏やかに過ごすかを説いた本。「話す」「聞く」「食べる」「育てる」など、人の動作ごとに章分けがされていて、それぞれの所作や考え方を具体的に述べている。
 

根っこにある問題は「心は常に刺激を求めて暴走する」ということ Continue reading »

2月 022010
 

明治三年。脱疽のため右足に続き左足を切断した名女形、沢村田之助の復帰舞台に江戸は沸いた。ところが、その公演中に主治医が惨殺され、さらには、狂画師・河鍋狂斎が描いた一枚の幽霊画が新たな殺人を引き起こす。戯作者河竹新七の弟子・峯は捜査に乗りだすが、事件の裏には歌舞伎界の根底をゆるがす呪われた秘密が隠されていた…。

北森鴻のデビュー作(第六回鮎川哲也賞)。芝居小屋を取り巻く連続殺人、一枚の幽霊画がその根底にあり…という筋だけど、時代物に馴染みがないのもあり、人物名を覚えるのにちょっと苦労してしまいました…。登場人物自体も多く、名前や屋号で呼ばれたりするので…。

登場人物の多さに起因するものではないのですが、全体的にいろいろサービスが盛り込まれていて、風通しが悪くなってしまっている印象。しかし、あとがきで作者本人も言うように、デビュー長編ということもあり、そこに若さや熱さを感じることができる。この作品で勝負をかけるという作者の意気込みと、作中で舞台に執念を燃やす沢村田之助がオーバーラップする。

平成22年1月25日、北森鴻さんは心不全で亡くなられましたた。48歳という若さで。民俗学、骨董、料理といったフィールドを本格ミステリとつなげる稀有な作家でした。僕は特に『メイン・ディッシュ』 が好きでした。蓮丈那智も、冬狐堂も、香菜里屋も、裏京都も、もう新作が出ないと思うと大変大変残念です。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

1月 192010
 

本業、翻訳家。岸本佐知子のエッセイ集第二弾が文庫化。

前作『気になる部分』同様、妄想おとぎ話が止まらないエッセイ。文庫にして3ページ分が1編で、それが約50本ノンストップで続きます。

コアラの鼻の材質が気になって翻訳が手につかなくなる、小さな富士山を手元におきたくてたまらなくなる、「一生ひとつの表情しかできない」となったらどんな顔にしたいいか悩む、郵便局で列に割りこんだおばさんと脳内コロッセオで激しい戦いを繰り広げる…。

日常の小さな疑問から大きな妄想に発展していったり、子供の頃の暗い記憶を発掘したり、日常と見せかけていきなり妄想劇だったり(商店街の話かと思ったらゾンビの街だったり、新宿丸井の前に大きな穴が開いたり)、とにかく手がつけられない脳の中身。

それでいて、これらが落ち着いた筆致で、翻訳家ならではの豊富な語彙で語られていく。これが、もう、クスクス笑いが止まらない。あんなこと書いてる最中もたぶん真顔なんだろうなぁ。面白いなぁ。

ご本人曰く「気がつかない星人」(裏を読めない、物事を額面通りに受け取る、写真屋のおじさんに鳩が出ますとと言われて本気で待ち続ける)なのに、ちょんまげという髪型の不自然さや「人の間と書いて”人間”って?」と、アサッテのことばかり気がついてしまうこのアンバランスさが、日常から斜め方向にずれていく原動力なのかもしれません。

装丁と挿絵を担当しているクラフト・エヴィング商會も「固そうで超馬鹿馬鹿しい」この本の雰囲気を保っていて、いい仕事してます。一遍につき文章3ページ、挿絵1ページ。パッと見、無駄にかっこいい。

テンションは低く、攻撃力は高く。あぁ、こんな文章かけるようになりたい。

7月 062009
 

誰もが振り向くような自慢の恋人をエリート医師に奪われてしまった省吾。あることからこの医師が彼女を殺してしまうと「知った」彼は、全てをなげうって奔走する。そんな省吾の「執着」に、周囲の人間はあきれ、次第に離れていってしまうのだが…。やがて、事態は思いも寄らない方向へ転じていく。痛々しいほど真っ直ぐな気持ちだからこそ、つかむことのできた「真実」とは。

帯には乾くるみ推薦の文字。ってことはあんな感じの仕掛けがゲフンゲフンと思ったらそうでもなく。

あらすじには「全てをなげうって奔走」とあるのですが、そんな体のいいものではなく、やっていることはもろストーカー。元カノと医師を監視し付け回す。その執着・粘着たるや、全然感情移入できない。なにをそんなに惚れることがあるのかとちょっと引き気味である。

事件にいったん解決がつくのが全体の4分の3ぐらいのところ。とはいえなんか変なとこあったよなぁと思っていると、そこからさらに急展開が待つ。クルリ、クルリと反転していく事実。終わってから振り返れば、その考えぬかれた構成はなるほど乾くるみ推薦って感じの寄木細工。タイトルの『リバース』は「反転」のreverseでもあり、「再生」のre-birthでもあるのだ。

ただどうしても主人公に肩入れできないのが残念で。彼の物語なのに、なんか彼の味方になれない。あんなに目の前しか見れなかったストーカーが、終盤であんな長い謎解きできるなんてと、どうもちぐはぐな印象が残ってしまうのだった。

11月 282008
 

『GO』『SP』の金城一紀がもつシリーズ「ザ・ゾンビーズ・シリーズ」の第1弾。眩しい。眩しすぎる。

君たち、世界を変えてみたくないか?
オチコボレ高校に通う「僕」たちは、三年生を迎えた今年、とある作戦に頭を悩ませていた。厳重な監視のうえ強面のヤツらまでもががっちりガードするお嬢様女子高の文化祭への突入が、その課題だ。

「レヴォリューションNo.3」「ラン、ボーイズ、ラン」「異教徒たちの踊り」短編3本を収録。文庫の装丁だとアホバカ高校生みたいだけど、本編はもっと不良で暴力的でハードボイルド。喧嘩もすれば悪巧みもする。テンションMAXで暴れまくる。

一方、メンバーそれぞれの個性を生かしたトラブルシューティングがとても気持ちいい。女子高への突入、カツアゲされた金の奪還、ストーカー退治といった難題に、これぞといった気の利いた解決をもってくる。

暴力と知力のバランスが絶妙で、かつキャラ立ちも十分(”史上最高の引きの弱さ”山下の爆笑エピソードは一読の価値あり!)十代の衝動とブレーキとを鮮やかに描ききっております。オススメ!