海外の作家 Archive
P.G.ウッドハウス『比類なきジーヴス』
国書刊行会 (2005/02)
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「参ったなぁ、ジーヴス。いったい君の知らないことはあるのか?」
「申し上げかねます」
主人のバーティーには表向き従順で、どんな揉め事も手際よく解決、でもファッションセンスは譲れない、至上最高執事『比類なきジーヴス』。おもしろいなぁ。語り手は主人のバーティーなんだけど、知的な語り口にみせて中身はおバカなのがたまらん。バカシブ。どんなブサイクにも恋をする友人のビンゴも頭悪すぎ。
だからってバカ一直線に落ちるとたぶんつまらないんだろうなぁ。一線ぎりぎりで踏みとどまる危うさはまさに曲芸師。パターンが一定なのが難と言えば難だけど、新聞の四コマみたいなゆるいマンネリ感まで到達すると味が出てきます。
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アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』
未読でした。で、もっと白状しますと、ポアロを初めて読みました。もー、足かけ8年も読書系サイトやってるに。『「ABC」殺人事件』まで読んでるのに。先日『クドリャフカの順番』を読んで、もうそろそろ読まないと…とカミさんの本棚に手を伸ばした次第。
ある日ポアロの元に届いた奇妙な殺人予告。その予告通りに、頭文字Aの街で頭文字Aの人物が殺され、次はB、Cと繋がって…という例のあれです。トリックや真相はさすがに古典なので基本パターンなのですが、決して古いだけでなく、シンプル故にスマートな印象を残す作り。ちょっと偶然多くないかというの疑問はさておき、犯人との対決を煽るサスペンスも効いて、あぁやっぱり読んどくべきだよクリスティ、と反省する男。
ポアロはベルギー人なので、ロンドンでの英会話の端々にフランス語が顔を出して、これがイタズラっぽくまたインチキっぽい外人の雰囲気を出しているのですが、これを日本に置き換えたら日本語の会話の端々に英語が、ということになって、「んー、時間がロングですねー」とか考えるとどうしても長嶋茂雄(≒プリティ)が浮かんでしまう罠。というかひょっとしてこれはポアロ読者にとってはベタなネタなのか。
早川書房 (2003/11/11)
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エラリー・クイーン『シャム双子の謎』
ニッポン硬貨の謎を読む前に必須、という話を聞きつけて読了。実は国名シリーズは全て未読。またシリーズものを途中から読んでしまった…。
山火事に追われて山頂の山荘に飛び込んだクイーン父子、怯える人々、異形の研究者、”骸骨”、”蟹”、そして殺人。迫り来る火事に囲まれたクローズドサークルで、火の手が迫るタイムリミットがサスペンスを盛り上げ、一方殺人事件の検証はトランプや指輪といった小さな証拠をこねくり回す。火事の恐怖と殺人の恐怖。外の内のスケール感の違いが味でもあり弱点でもある(「そんなことしてる場合か」的な)。ダイイング・メッセージものは解釈が多岐に渡るためロジックに不安を覚えることが多く、本作も例外じゃないのだけど、ダイイング・メッセージがどう残ったかという外枠を二転三転させる企みに唸る。外と内、枠と中、観察者と実行者。迫る業火に燃やされるのは人か、罪か。
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キース・ロウ『トンネル・ヴィジョン』
結婚式を目前に控えたロンドン地下鉄おたくが仲間の挑発に乗って1日でロンドンの全部の地下鉄駅267駅を回ることに。しかも賭けたのは新婚旅行のチケットやパスポート。全駅回らないと結婚式にすら行けないからさぁ大変。ロンドン版電車男の冒険が始まる。
実は先月新婚旅行で行ったロンドンで、自分もロンドン地下鉄に惹かれてしまい、そういえばこんな本あった、と図書館で借りる。路線図首っ引きで読まないと何をやってるのかさっぱりわからんけど、効率的なルートを探りつつ様々なトラブルを切り抜けていく様子はゲーム的で面白い。そんなによく運休するんか、という突っ込みはともかく。
で、地下鉄乗り継ぎばかりでなく、結婚式を目前にした男女の揺らぐマリッジブルーも絡めてあるのだけど、正直あんまり効いてないような…。なにかとすぐに悩みを象徴する夢を見て目が覚めてビックリ、というパターンはいかがなものか。読みどころが違うのかもしれないけど、もっともっとはちゃめちゃな地下鉄の冒険を読みたかったなぁ。
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シャーロット・アームストロング『毒薬の小壜』
解説にある通りまさに「善意のサスペンス」。よかった。猛烈によかった。よかったー!(窓を開けて絶叫)。様々なきっかけから、主人公が悲しきネガティブに沈んでいく前半から事態は一転、優しさとポジティブに溢れた後半のロードムービー的展開たるや。長い助走から急上昇。台詞一つ一つに込められた魂の光。暖色に彩られた素晴らしき日。タイトルと装丁の愛想のなさから予想もつかないような暖かさが待っています。読もう。読もうよ。
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やってる人 : INO