無欲 岡田がおかだである理由。

  • 著者/訳者:岡田 圭右 ますだおかだ
  • 出版社:あさ出版( 2009-12-04 )
  • 単行本(ソフトカバー):197 ページ
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パァ!!出た!!ワォ!! 岡田でーす!
いやぁ~~、俺の本!!
いやいや~~、俺で本!!
こんなうすっぺらい人間が本を出す。まさにキセキの一冊だ。
(「はじめに」より)

冒頭からこのノリです。ますだおかだ岡田の初の著書。雑誌連載のコラムをまとめたもの。もう最初に言わせてほしい。誰に向けた半裸なのか。

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雪野原に立つ民家で、初めて会った者同士が一夜を過ごし、翌朝、死体発見(『六つの玉』)
姪に話して聞かせる、十五年前の「大学生・卒業研究チーム」爆死事件の真相(『五つのプレゼント』)
大学の補講中、マジック好きな外国人教授が死んだ、ESPカード殺人事件(『四枚のカード』)
中味を間違えた手紙と残された留守電が、エリート会社員殺害の真相を暴く(『三通の手紙』)
特注の掛軸は、凝ったイタズラが大好きな、地方の名士がが殺された謎を知っている(『二枚舌の掛軸』)
決定的な証拠がありありとそこに存在した、ベテラン作家邸殺人事件(『一巻の終わり』)
見た目は「太ったチャップリン」!? 林茶父が、今日もどこかで事件解決。

短編集なんですが、それぞれのネタが1つの短編に納まる分量じゃなくて、もうギュウギュウな感じ。後半はずっと謎解きのためにしゃべりっぱなし。生放送で残り時間少ない、みたいな急ぎよう。ギュウギュウ、ということは裏を返せばそれはもう濃いわけで、フーダニットもアリバイものも伏線・手がかりをみっちり配置して事にあたってます。

『三通の手紙』のロジックとか、『二枚舌の掛軸』のフーダニットとか、一つ一つ感心しつつ、最後の『一巻の終わり』を読み終わったあとの遊びにニヤリ。本格推理を読み慣れた方向け。

 

福家警部補の再訪 (創元クライム・クラブ)

  • 著者/訳者:大倉 崇裕
  • 出版社:東京創元社( 2009-05-22 )
  • 単行本:256 ページ
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鑑識不在の状況下、警備会社社長と真っ向勝負(「マックス号事件」)
売れっ子脚本家の自作自演を阻む決め手は(「失われた灯」)
斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける(「相棒」)
フィギュアに絡む虚虚実実の駆け引き(「プロジェクトブルー」)
好評『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第二集。

前作『福家警部補の挨拶』に続くシリーズ第2作。コロンボや古畑任三郎みたいに犯人側の犯罪が先に出てきて段々暴かれる、いわゆる倒叙もの。メガネ女子の童顔警部補が今回もネチネチと容疑者を追い詰める。今年の正月にはNHKで単発ドラマ化されたりもしました(主演:永作博美、電線音頭:小松政夫)

『~挨拶』もそのクオリティの高さに大満足でしたが、今回もすごいなぁ。特に好きなのは「マックス号事件」かなぁ。警備会社社長が犯した殺人を偶然乗り合わせた福家が追い詰めるのだけど、舞台は航海中の船上なので鑑識が来れない。船を下りられると逃げられてしまうので、タイムリミットも迫る。不利な状況下ながら、最後のページの最後の最後まで決め手を明かさない構成。おおおと唸ることうけあいです。

ただちょっと、どうしても気になるのが「童顔の福家が聞き込みに行くと、警察の人と思われず門前払いにされそうになり、福家もなかなか警察だと名乗らず、押し問答の末にやっと警察手帳を見せて、すいませんねぇとなる」というくだりが全編かけて何度も出てきてですね、お約束なんだろうけども毎度毎度同じなのでどうもちょっとイラっとしてしまうこともあってですね、「最後まで刑事と思われないまま聞き込み完了」とかバリエーションをちょっと変えたりしてもらえるともっと良いかなぁとか思ったりもしました。

 

モダンタイムス (Morning NOVELS)

  • 著者/訳者:伊坂 幸太郎
  • 出版社:講談社( 2008-10-15 )
  • 単行本:540 ページ
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『ゴールデンスランバー』(→感想)と対をなす、540ページの冒険。『魔王』(→感想)から50年後の世界で起こる「監視」とは。

主人公の渡辺拓海はシステムエンジニア。浮気を疑う妻が差し向けた刺客に、拷問を受けるところから物語は始まる。仕事でかかわることになった「ゴッシュ」なる会社の検索システムに異常なコードを見つけた渡辺たち。その後、ある言葉で検索した人々に次々に不幸が襲い掛かる。

モーニングに1年間連載されたものを元に加筆修正した本作。上のあらすじでいきなり拷問だ検索だときてますが、まだまだこんなもんじゃなく、展開は予想もつかないループコースター。

独特の言い回しや強烈なキャラクターなど、伊坂幸太郎の世界を楽しめるのはもちろんなのですが、同時期に書き下ろされた『ゴールデンスランバー』とどうしても比べてしまう。緻密な伏線が効いた『ゴールデン~』に比べ、連載という形態もあってか本作はどうも一本槍で、予想のつかない展開も悪く言うと「行き当たりばったり」に感じてしまったり。

とはいえ、『魔王』を楽しめた人は絶対読むべきで、『魔王』を読んでない人は読んでから読むべき。モーニングに掲載されたときの挿絵を一緒にのせた特別版もあります。

 

聖域

  • 著者/訳者:大倉 崇裕
  • 出版社:東京創元社( 2008-05 )
  • 単行本:313 ページ
  • Amazonで詳細を見る

安西おまえはなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。事故か、自殺か、それとも――3年前のある事故以来、山に背を向けて生きていた草庭は、好敵手であり親友だった安西の死の謎を解き明かすため、再び山と向き合うことを決意する。すべてが山へと繋がる、悲劇の鎖を断ち切るために――。
「山岳ミステリを書くのは、私の目標でもあり願いでもあった」と語る気鋭が放つ、全編山の匂いに満ちた渾身の力作。著者の新境地にして新たな代表作登場!!

『川に死体のある風景』 収録の「遭難者」にて、切れ味鋭い山岳ミステリを書いていた著者、念願の長編。著者自身も登山の経験があり、何の説明もなく山岳用語が乱れ飛ぶけど、リーダビリティが高く一気に読める。

安西が滑落した塩尻岳では、過去に安西の恋人も命を落としている。事故か、自殺かと調べていくと、塩尻岳の「山小屋存続運動」というきな臭い存在が出てくる。複数の死と複数の推測という糸が、最初は細く、やがて太く編みあがっていく展開に目が離せない。

主人公の環境と断ち切れぬ山への想い、登山をめぐる人と金、そしてなにより厳寒の冬山登山の描写が見事にあわさってる。ミステリの仕掛け的には全然複雑でもなくむしろ古典的ですらあるのに、終盤まで全く浮かばなかった。没頭してた。

広く知られていない分野、主人公の葛藤と成長という意味では近藤史恵『サクリファイス』 を連想したりもする。負けず劣らずの大倉崇裕渾身の代表作。やろうと思えばもっとお涙頂戴感動ものもできるところ、冷静に処理しているのもクール。

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