久々の恩田陸だったけど、相変わらず「見えない不安」を書くのがうまいなぁ。インタビュー形式で少しずつ事件の不気味さがわかってくる様子が巧み。章毎に変わる質問者(or回答者)の会話に文字数を割ける分、絶妙な言い回しや様々なエピソードを挿入しやすいのも勝因か。そんな緊迫の序盤から後半は奇妙に捩れつつあらぬほうへ抜けてしまって、この辺も相変わらずな感じ。
それにしても帯が怖すぎる。bk1は書影に帯がなくて、Amazonにはあるのだけど、これだけで売り上げが変わりそうな予感が↓
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第一作。
テンション低め安定。緩やかに紡がれる短編のような長編。短編それぞれのネタはミステリ的には割と基本ネタだけど、出来事の前後にある「正義」の形がまた良いのだ。最初はうざかった陣内のキャラが終いには畏敬に変わってました。日向を歩く。まっすぐに。
「夜が好きなんだ」と泥棒は今日も盗みに入った。「救われたい」と青年は信者になった。「あの女のせいだ」とカウンセラーは不倫相手の妻を殺すことにした。「働きたいんです」と無職の中年は肩を落とした。「金で買えないものはない」と画商はふんぞり返った。泥棒が失態をおかし、青年が神の解体を知り、不倫カップルが車で人を轢き、中年が老犬と拳銃を手に入れ、画商が新幹線に乗ったとき、物語は急速に動き始める。
五つの人生が本人の知らぬところで交錯して干渉して邪魔して手助けして陥れて癒してと、大混乱の人生狂想曲。これに「バラバラ死体が元通りにくっついて歩きだす」という都市伝説が現実になったりしてなんかして、もうエンタテイメント満載。ラストでは全体を包む大仕掛けも明かされて、おなかいっぱいでご馳走様。
中盤にかけては徐々に絡んでくる程度なんだけど、実は伏線がそこかしこに張られているのが凄い。「この人達絡んでますよー」と見せつけるんではなく、そこで絡んでいたのか!と後で気づかせることで全体像を一気に浮かばせる。この辺が同じ多重人生交錯もの『ドミノ』とは違う感じ。巧みな言葉回しでそれぞれの人生も深く面白く描かれているし、これはいい!十人十色の人生模様を照らすのはたった一つの太陽。日はまた昇り繰り返していく。