蒼井上鷹 『九杯目には早すぎる』

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12月 192005
 

小説推理新人賞受賞作「キリング・タイム」を含む、著者デビュー作『九杯目には早すぎる』。短編5本と合間にショートショート4本という珍しい構成。

軽妙な語り口、というか可もなく不可もない運び方で、ふんふん普通やね、と読んでいったら一本目の「大松鮨の奇妙な客」であっけなくひっくり返されてダウン。あとから見たら推理作家協会賞短編部門の候補作だったのね。ネタ自体はどこかで見たような気がするのに、語り口ですっかり油断してしまった。

全編通してみると、無害そうな外見なのに中に強い毒を持っている、という印象。セコい人やイライラする人の描写がやけに巧くてとてもヤキモキします。外と中のギャップの埋め方をどう処理していくのか、それとも処理せずこの方向で進むのか、これから気になる作家さんであります。

 

海馬―脳は疲れない (新潮文庫)

  • 著者/訳者:池谷 裕二 糸井 重里
  • 出版社:新潮社( 2005-06 )
  • 文庫:344 ページ
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来月30歳になる予定(未定)なんですけどね、今これ読んでよかったなぁ。「30歳から頭はよくなる」「海馬は増やせる」「脳はいくら使っても疲れない」…池谷 裕二・糸井重里『海馬―脳は疲れない』で、目からウロコが溢れ出る。

脳の研究者・池谷氏と、脳の使い手・糸井氏の脳対談は、まるでメカニックとドライバーがマシンについて語らっているようなシチュエーション。お互い共通の認識を持ちながらそれぞれ歩み寄っていく様はとても刺激的で面白い。

糸井氏がちょっと関係ない話題のボールを打っても、池谷氏がキャッチして脳の仕組みを投げ返す。ノックを繰り返す度に、「そうか!」と互いに気がついて、二人の守備範囲が広がっていく。読者もそこに乗っかって、ゆったりした満足感に浸れる対談に仕上がってます。

一読すれば脳ってやっぱりそうなんだよね!とスッキリ爽快。悩み解決のコツまで載ってます。特に今年30歳になった’75年生まれの皆様、そして来年30歳になる’76年生まれの皆様におススメ。読むと勇気がでまっせー。

11月 202005
 

言いまつがい (新潮文庫)

  • 著者/訳者:糸井 重里 ほぼ日刊イトイ新聞
  • 出版社:新潮社( 2005-03-29 )
  • 文庫:351 ページ
  • Amazonで詳細を見る

ほぼ日刊イトイ新聞の名物コーナー『言いまつがい』の書籍化で、2004年4月に出版された単行本の文庫版。

言い間違いについての読者投稿が何百と掲載されて、もうトランス状態です。終いの方はちょっとした間違いでもびくともしない耐性が身につきます。「空耳アワー」をずっと見ていると普通に日本語歌詞にしか聞こえなくなるかのように、言いまつがいの世界の住人になってしまうのだった。思い出した時に少しづつ読むと長く楽しめるかもしれません。

「まめ天狗」「セクシー・ハウス」「ナイス・パー」「ジュ~ドォ~ル」辺りはしばらく笑ったなぁ。こんなアホな本なのに新潮文庫なんで、しおり用の紐がついてるのが無駄に重装備な感じです。

11月 142005
 
ボタニカル・ライフ―植物生活
いとう せいこう
新潮社 (2004/02)
売り上げランキング: 49,749

狭さこそ知恵、貧しさこそ誇り。庭のない都会暮らしで植物を愛でる自称「ベランダー」のいとうせいこうの植物生活エッセイ。第15回講談社エッセイ賞受賞作。

広い庭を扱うガーデニングを横目に見ながら、狭いベランダを駆使して植物を育てる自らを「ベランダー」と呼ぶ。ベランダーの一人称は「俺」であり、強い子になれと鉢を西日に送り出したり、枯れた植物をなかなか認めようとしなかったり、トイレにレモンポトスを伸ばし放題にしたり、煙草を吸いながら蓮の泥をかきだしたりなど、「園芸家」という日向なイメージから遠くいて、もはや園芸ヤンキー、孤高の不良ぶりです。

それでも植物の愛がそこかしこから伝わってくる。無償の愛、というより、嫉妬や羨望であり、彼らの命の手綱を握っておきながら、彼らは生命は自分の手の届かないところにいることを感じて憧れる。その様子は強がりでいじらしい。植物を愛でるとは、なんと切なく愛おしい様なのか!

深まる冬に向けて春の緑が待ち遠しくなる一冊。落ちているアロエさえ拾い、植木市に色めき立ち、諦めかけてた鉢から若葉が覗いたのを発見するや狂喜する、ハードボイルド・ベランダー。これはもはや、植物に対するツンデレと言っても過言ではない。

乾くるみ『リピート』

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11月 112005
 

リピート (文春文庫)

「リプレイ」+「そして誰もいなくなった」=…がアレになってるとは!本格ミステリというより思考実験の末のおもろい法螺話。真相とそこに至るまでがエキサイティングだけど、それだけにそこから先の畳み掛けがちょい浮きぎみな気も。もっとクレバーな姿が見たかった感じ。止まらない運命のメビウスの輪。主人公モテすぎなのは「リプレイ」の主人公を踏襲した結果なのか。

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