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‘あ行の作家’ カテゴリーのアーカイブ

志村、後ろ後ろ! 奥泉光・いとうせいこう『世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周』

2010 年 6 月 16 日 コメント 1 件

奥泉光といとうせいこうが北沢タウンホールで定期的に行っている『文芸漫談』の書籍化第二シリーズ。1回に一冊「薄いブンガクの本」を題材に二人がセンターマイクを挟んで語るという形式(イベントではその後奥泉光のフルートといとうせいこうの朗読があるらしい)

前作『文芸漫談』ほど枕は長くなく、途中の脱線も少ない(あと漫談に茶々ばかり入れていた脚注がなくなったのは個人的にうれしい)。カフカ『変身』や夏目漱石『坊ちゃん」、ポー『モルグ街の殺人』など、冒頭からラストにいたるまで粗筋を引用しながら、不条理な展開を笑い、小説技法に唸り、作家の心中を推し量る。未読の人には興味をひくプレゼンテーションになり、既読の人には再確認ができる。

これが「漫談」という形式で成立するのはすごいなぁ。難しいことを人に分かりやすく説明する、というのは頭がよくないとできない。ちなみにタイトルにある「志村、後ろ後ろ!」は主人公の危機に読者は気がついているもののどうしようもできないという、”物語の客観性”を表している比喩。こんな感じで、難しくなりがちな文芸評論が二人の「読み」から「トーク」への昇華によって手に届きやすくなっている。

今回取り上げられてる9冊はどれも薄くてさっと読める本。同じく世界文学を独自の視点とツッコミで解説する伊藤聡『生きる技術は名作に学べ』と比べてみるのも面白いかも。
 

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無意味の企み 石持浅海『攪乱者』

2010 年 5 月 27 日 コメント 1 件

無血主義を貫くテロ組織に所属する三人を描いた連作短編。彼らは腐敗した日本政治を転覆させるために活動するプロのテロリスト…なのだけど、上層部からやってくる任務がなんだかヘンテコなものばかり。例えばこんなの。

・このレモンをスーパーのレモン売り場に置いてこい。
・このプラスチックの粉をどっかの公園の砂場に混ぜて、このアライグマが入ったケージを上に置いてこい。
・ここの新聞紙を丸めて紙袋に入れて、どっかの電車の網棚に置いてこい。
・適当なコンビニを選んでそこでバイトしてこい。
・あの女子大生と付き合え。

なんだよこれ?と言いつつも、組織の末端である彼らには真の目的は伝えられない。命令は絶対なので忠実に実行する彼ら。レモンの任務ではスーパーの下見をして、レモンがバラ売りかパック売りかちゃんと調べる抜かりなさ(無血主義なのでレモンは某作品みたいに爆弾だったりしない)

で、その場ではなんだかわからないのだけど、絵解きをしてくれるメンバーが毎回「第四の人物」として登場。彼の手にかかると、意味のないと思われた行動が、実は外交に影響したり、警察不信を招いたり、国民を正体がわからぬ不安に陥れることがわかるのだ。

「風が吹けば桶屋が儲かる」方式で、本当に実現するかは甚だ心許ないけど、一見遊びに見える行動が実は練られた計画である、とクルリと絵が変わるのが面白い。同じ石持浅海作品だと『心臓と左手』(→過去の感想)に近い手触り。

狂牛病や毒ギョーザ事件、タミフルの騒動やガードレールの鉄片など、実際に日本国民がなんだか不安に陥ったニュースは数多い。その裏に彼らテロリストが暗躍していたとしたら…なんて想像もしてしまうほどです。

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日常系報道カメラマン 梅佳代『うめめ』

2010 年 5 月 14 日 コメント 1 件

先日の角川文庫の太宰治の表紙が味写すぎる件について、よく調べてみたら、あの表紙は太宰治生誕100周年の梅佳代×祖父江慎のコラボカバーだったらしい。そういうことだったのか!
 →太宰 治生誕100周年フェア|角川書店(梅佳代×祖父江慎の対談あり)

これまた先日の天久聖一『味写入門』の感想では帯に「プロには無理」と書いてあるのだけど、味写を撮れるプロがそういえば、いたいた。梅佳代である。

梅佳代は何冊か写真集を出しているのだけど、小学生男子のおふざけばかり収まってる『男子』や、実の祖父を10年撮り続けてた『じいちゃんさま』も好きだけど、やっぱり最初の『うめめ』は衝撃だった。

なんでもない住宅地、駅、公園。なのに、ハプニングの一瞬がいくつもいくつも撮られている。「どうしてこうなった!?」と声をあげてしまうインパクト。大人が通勤してる横でアスファルトの上でひっくり返っている小学生、1つのコインロッカーに群がっているご親族、フライドポテトをこぼしてるのに遠くを見てる子供(表紙)、衝立の向こうから突然現れるノッポン(東京タワーのマスコット)…。

常にカメラを持ち歩かなければ撮れない写真なのはもちろんだけど、瞬間を見逃さない「目」と何かを引き寄せる「磁場」が三位一体揃わないとこんなのできないなぁ。

ニュースばかりが「報道」じゃない。日常の変なことを報じたっていいじゃないの。脱力しながら不思議な余韻。日常の横で、奇妙な扉が半ドアで開いてる感じです。

自分データベース大開放 伊集院光『のはなしに』

2010 年 5 月 12 日 コメント 1 件

伊集院光のエッセイ『のはなし』の第二弾。あいうえお順に「アウトセーフ」の話から「んまーい!」の話まで全86話を収録。(※『のはなし』は文庫化されて『のはなしにぶんのいち』になってます)

相変わらず驚くのは、「自分の引き出し」の多さ。子供ころの思い出から仕事の話までの現在過去、アホな思いつきに下ネタ、思いつきに妄想まで、ホントに大量でかつ多種多様ですごい。引き出しというよりもはや自分データベース。出来事とその時の感情をセットにして、いったいどれだけ蓄積されているのやら。

しかし、決して”爆笑エッセイ”では終わらない。

伊集院は自分の言葉でいろいろ考える。幼少期の夕焼けを。理不尽に対するモヤモヤを。あの日あの時どうすればよかったかを。ぼやきや下ネタの間にフッとそれらが挟まって、何層もの伊集院が現れる。

この「多様な伊集院」については、まえがきに本人も書いている。テレビでは良い人、ラジオではダメな人、同じテレビでもNHKの伊集院と深夜の伊集院は違い、そして新たに「『のはなし』の伊集院光」も出てきてしまった。

どれも嘘はありません。

以前は「早くどれか一つにしたい」と思ったこともありましたが、今は「むしろ増やしてやろう」と思っています。小さいのがものすごくたくさんあったら、大きいのは一つしかないのと同じだから。

どの人にも必ず気に入る1話があると思います。ちなみに僕が一番覚えてるなのは「盗んだ金」の話。お金を盗むのはもちろんいけないことなんだけど、待っているのはまさかのノスタルジー。

相変わらずのおすすめです。

押し入れから神様が出てきた! 天久聖一『味写入門』

2010 年 5 月 7 日 コメント 1 件

ほぼ日刊イトイ新聞に連載されていた「天久聖一の味写入門」の書籍化。

まず「味写」とは何か。Amazonから書籍紹介を引用してみましょう。

明らかにシャッターチャンスを逃し、構図はデタラメ、ときには赤の他人が堂々と真ん中に写っていたり…。そんな“失敗写真”を押し入れの奥から発掘し、改めて眺めてみると、撮った当時は気づかなかった意外な味わいが生まれていることがある。失敗と偶然が絶妙の効果を発揮した「味のある写真」=「味写」。神のイタズラとしか思えない名作の数々が、あなたの脳をとろけさせます。

で、もう一度この本の表紙を御覧下さい ↑ 左の幼子の、頭をつかまれた首の角度といったら!素人たちの失敗写真が天久聖一のコメントと共に爆笑の渦を巻き起こす。

おじいさんと後ろの掛け軸の柄が重なったり卒業式にくのいちが現れたりスフィンクスをバックにアラブ人が遠くを指さしていて手前におばさんがアップになっていて全員目線が違っていたり、犬が浮いてたり、知らないオッサンが無重力だったり…。

狙っても撮れない、かといって報道のような大げさはない。まさに「油断」意外のなにものでもない写真たち。いかにも昭和!な写真も多く、ノスタルジーの味わいと油断の味わいを同時に味わえるおまけつき。

ハプニングにしてはボンヤリしてて、奇跡にしては滑稽で、神様のイタズラにしては度が過ぎている、誰も見たことがない写真集。百聞は一見にしかず、ですよ。
 

優しくオモロい読み聞かせ 伊藤聡『生きる技術は名作に学べ』

2010 年 1 月 21 日 コメント 1 件

ブログ『空中キャンプ』伊藤聡さんの初著書。『空中キャンプ』はもうずっと読ませていただいてるブログで、5年くらい読んでるんじゃないかと思ったら開設が2004年とのことなのでそこまでじゃなかった。それだけ日常に溶け込んでいる大好きなブログです。

その伊藤さんの初著書は、ご本人の言葉を借りますと「過去の海外名作小説を十作セレクトし、それらについてコント風に語りながら、役立つエキスを抽出しようというテーマで作られた一冊」(「2010-01-20 – 空中キャンプ」より)。

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ツルツルの生き方 岡田圭右『無欲 岡田がおかだである理由』

2010 年 1 月 14 日 コメントはありません

パァ!!出た!!ワォ!! 岡田でーす!
いやぁ~~、俺の本!!
いやいや~~、俺で本!!
こんなうすっぺらい人間が本を出す。まさにキセキの一冊だ。
(「はじめに」より)

冒頭からこのノリです。ますだおかだ岡田の初の著書。雑誌連載のコラムをまとめたもの。もう最初に言わせてほしい。誰に向けた半裸なのか。

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