どこまでが「珍百景」で、どこまでが「トリック」なのか。

テレ朝『ナニコレ珍百景』の「珍百景」という言葉の用途がどんどん広がっている。

まだ深夜放送だったころ、『ナニコレ珍百景』は全国各地の珍しい光景を紹介するバラエティだった。自然の風景だったり、人工物だったりしたけど、とにかく「光景」だった。

そのうち「○○な人がいる光景」という表現になり、これによりユニークな人物を紹介することが可能になった。これは一つの発明で、「○○なネコがいる光景」「○○なラーメンがある光景」など、様々なものに応用することができるようになった。番組の守備範囲が、「ユニークな光景」から「世の中全てのユニークなもの」に広がった。

そして最近、その発明がさらに進化している。「エピソード珍百景」である。

過去に起こったミラクルな出来事や、九死に一生を得た話、動物絡みの感動秘話などが、「エピソードがある光景」としてくくられるようになった。

これまで物理的になにかが存在する光景だったものが、存在しなくてもよくなったのだ。有象無象、どんと来いである。

気がつけば番組開始から7年。光景だけに縛っていたらここまで続かなかっただろう。番組のカラーをそのままに、守備範囲を丁寧に広げていった結果だと思う。

で、

この「守備範囲を広げる」という動きを、今まさに急速に進めているのが、奇しくも『ナニコレ珍百景』の裏番組である日テレ『真実解明バラエティー!トリックハンター』なのである。

『トリックハンター』は、世の中にあふれるトリックを暴く、というコンセプトではじまった。脱出イリュージョンや超能力など、実際に種明かしまで公開してしまう。海外の自称霊能力者と現地で対決し、インチキを見破ってしまうこともあった。

この「トリック」の範囲が最近変わってきたのだ。

「トリックシェフ」では、仮面を被った謎のシェフがご家庭にある食材で一流レストラン並の料理を作ってしまう。「最安値ハンター」では、激安バスツアーや激安メニューがどうして実現できるのか、あばれる君ややしろ優がロケで体験する。

これまで「手品やイリュージョンのタネ」を意味していたトリックを、「日常で秘密になっているもの」という意味まで広げているのである。裏の『ナニコレ珍百景』の発明をふんわりと受け継ぎ、イリュージョン以外に興味がある視聴者も取り込もうとしている。

しかし、脱出イリュージョンから激安バスツアーは少々範囲が広過ぎで、うちの子供たちも激安もつ煮込み屋の裏事情には「全然トリックじゃないじゃん!」と不満顔であった。炎の中から脱出できるのと、締めのラーメンの値段を高めに設定するのでは、トリックのインパクトが全然違うもんなぁ。