ハトはなぜ首を振って歩くのか

20150724nazehato

すべてのモノには理由がある。

潮の満引きがあるのも、太陽と反対側に虹ができるのも、柿の種とピーナッツの比率が6対4なのも、うちの息子4歳が何度注意してもソファからジャンプするのも、全部なんらかの理由があるのだ。ハトが歩くとき、首を振っているのにも。

藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか』(岩波科学ライブラリー)を読みました。1冊まるごと首振りがテーマ。鳥の歩行を研究している著者、好きな言葉は「首振りと世界平和」。首振り愛が高まりすぎて、ハトが歩くパラパラ漫画まで入っている。

一見、思うままに首を振っているように見えるハト。しかし観察を重ねると「首を振るのは1歩に1回」「片足で立っているあいだは首を振らない」「首を前に出したあと、足を踏み出して前に進むあいだは首の位置が動かない」といった”決まり事”があるのがわかる。

で、実験した人がいる。1975年。イギリスのフリードマンという人は考えた。景色が動くと首を振るんじゃない?それとも足が動くと勝手に首を振るのかな?

フリードマンは実験装置を作った。箱の中にハトを入れる。箱の底はランニングマシーンのようになっている。ハトの見た目からは景色が動かないけど、歩くことができる。果たして、この状況ではハトは首を振らずに歩いたのだ!

逆に、ハトを固定して周りの景色を動かしてみると、ハトは首を振った。歩いていないのに、である。

この現象を人間に置き換えてみると、「走る電車のなかから外の景色を見ている」状態になる。流れる景色を見るとき人間の目はキョロキョロ動く。しかし、ハトの目はキョロキョロできない。鳥類の眼球は頭部に対して大きく、平たい形をしている。代わりに動くのは首。ハトの首の骨は12~13個もあり、柔軟に動けるようになっている。

ハトの目は進行方向に対して左右についている。前方に進むと、ちょうど流れる景色を見るようになる。キョロキョロしたくなるが眼球の都合できないので、自然と首を振ってしまう、というわけなのだ。おおぉ~。

しかし話はこれだけでは終わらない。
首振りが1歩に1回なのはなぜ?
キョロキョロしたくなるのはなぜ?
だいたい同じ背格好のカモが首を振らないのはなぜ?
雀は両足でピョンピョン進むのはなぜ?
恐竜も首を振って歩いたの?

観察と仮説を重ねていくのだけど、随所で著者の言動が面白くて癖になる。コアホウドリがVの字に首を振ると聞けば、実際に自分で動きを真似てみて、「運動力学にも神経生理学的にも合理的なのではないか」と思うのと同時に「その姿を誰にも見られなくてよかった」と安堵していたりする。

序盤ではヒトと鳥の二足歩行について語っているのだけど、「なぜスキップやケンケンで移動しないのか」という疑問を持ちだした挙句、

仲睦まじくスキップをする恋人たちは、果たして疾走感を感じたいからスキップしているのだろうか。(中略)子供たちは遊びに夢中になると疲れるということを知らない。恋する若者たちもまたしかり。そういう活力にあふれる年頃には、きっと疲労など度外視してスキップもケンケンもできるのかもしれない。

と、若さ=スキップケンケンで語りだしてしまう。ところどころクスクス笑っちゃう。

「ハトはなぜ首を振るのか」を大真面目に優しく教えてくれる本。飛ぶのがメインの鳥が、たまに歩くときに見せるキュートさがたまらないだろうなぁ。

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