『アルプスの少女ハイジ』にトライさんはいない

ぼんやりテレビを見ていたある日、ふとその可能性に思い至った。

まさか、いやそうかもしれない。恐る恐る、しかし少しの確信を持って、子どもたちに言ってみた。

「アルプスの少女ハイジに、ホントはトライさんはいないんだよ」と。

返事は「えー!うそ!」だった。やっぱり。やっぱりだったか。

『アルプスの少女ハイジ』をベースにした「家庭教師のトライ」のCM。元となったハイジの画質そのままに合成されたキャラクター・トライさん。吹き替えもハイジたちと会話しているように絶妙に変えてあって、すっかりハイジの世界に馴染んでいる。

うちの子どもたちは『アルプスの少女ハイジ』本編より先に「家庭教師のトライ」に触れてしまったので、もうすっかり「トライさん」がハイジの登場人物にいると思っているのだ。無理もない。あんなに馴染んでたら無理もないのである。

このあいだスーパーに行ったとき「アルプスの少女ハイジ パンチップス」なるお菓子があった。パッケージを指さして、「ほら、トライさんいないでしょ」と再度教えた。

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「えー、ホントだ」と一旦は納得した娘8歳。しかし、「後ろの家の中にいるんじゃないの?」とまだ諦めていなかった。

いない。いないんだって!ハイジにゃ学校も、試験もなんにもないんだって!(夜は墓場で運動会でもない)

もういっそこの調子で、いろんな名作アニメにトライさんを出してほしい。999に乗り込み、哲郎とメーテルに夏期講習を勧めるトライさん。虎の穴でタイガーマスクに個別学習をするトライさん。少年院で丹下段平の葉書を受け取る矢吹丈に、通信学習も合わせてオススメするトライさん……。

どんなアニメにもトライさんが見切れる。トライさんが共通言語になる。トライさんを介して世界がつながり、一つになる。We are the world. We are the トライさん。

「あなたもサザエさん わたしもサザエさん」みたいになってきた。カツオにこそトライさんがいる気もする。