ブルボン小林『ぐっとくる題名』

「ツァラトストラかく語りき」から「屁で空中ウクライナ」まで、古今東西58作品の「ぐっとくる題名」について語り明かす本。

「ゲゲゲの鬼太郎」はなぜ「ゲゲゲな鬼太郎」じゃないのか、「部屋とYシャツと私」は誰目線なのか。

うっかりすると通り過ぎてしまう「ぱっと見」の印象。助詞や構造を解析して、こういうことだと分析する 。「部屋とYシャツと私」だけで6ページも語ってしまう。

言葉ってホントに不自由だ。頭にイメージしているモヤモヤを誰かに伝えるとき、言葉という有限な形に変換しないといけない。モヤモヤをサンプリングしないといけない。「題名」を決めるとなれば、サンプリングしたものをさらに短く削らないといけない。

でも、うまくすれば、サンプリング後に削ったものでも、受け手が元のイメージを作り出せる。もっとうまくいくと、元のイメージ以上のものになる。

『ぐっとくる題名』では、一文字だけで印象が全然変わることを教えてくれる。「D坂の殺人事件」が「団子坂の殺人事件」だったらとか。

イメージを再現できるか否かは、ほんのちょっとの差。その「ほんのちょっと」が大事なのだ。

ぐっとくる名前といえば、この前街を歩いていたら、「SPA DEAD SEA」というスパを見つけた。死海の塩かなんか使うんだろうけど、どちらかというと「生きかえる〜」な場所に「DEAD」ってつけちゃうのスゴい。

あと、五反田で「プチ熟女」という店があったんだけど、あれは熟女手前の人が接客するのか、それともちっちゃい熟女が出てくるのか。

書を捨て街に出ても、ぐっとくるものばかり目に付いてしまう。