脳と紙が直結!衝撃のパーソナル小説 いとうせいこう『親愛なる』8/31まで!

ギャー!なんでこんなギリギリで読み終わってしまったんだ!

いとうせいこう『親愛なる』は、BCCKSで期間限定で販売されている「パーソナル小説」。紙の本なのに、一冊一冊すべて違う内容になっている。

「パーソナル小説」ってどういうことかと言うと、まず表紙がこうなってる。

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モザイクがかかっている部分には、僕の名前、自宅の郵便番号と住所が書いてある。ブックオフに売るなんてもってのほかの個人情報フルオープン状態(当初はこのまま投函するプランもあったらしい!)

ページをめくれば、いとうせいこうのメールから物語が始まる。メールヘッダのTo欄には僕のメールアドレスが書いてあって、「長いメール、確かにいただきました」という書き出しで文面が続く。そんなメール出した覚えないのに。

いとうせいこう宛に届いた「僕からの」メールはどうも要領を得ず、さらにメールは錯綜し、紆余曲折あって、韓国を舞台にしたサイバーパンク小説が始まり、メールと作中作が交錯する。「波の上の甲虫」(南島小説二題: いとうせいこうレトロスペクティブ)収録)を思わせる、メタな展開にクラクラする。

この刺激的な物語の中に僕の個人情報が顔を出す。登場人物の一人が僕と同じ名前とか、そんなレベルではない。物語の中に、僕が入り込んでいる。あんまり詳しく言うとネタバレに……というか、「パーソナル小説」なので、僕のネタバレが他の人のネタバレになるのかすらわからない。

思わぬ個人情報が出てはビクッ!とする。本の中の向こう側と本を持つ手のこちら側の境目が曖昧になってくる。

脳と紙が直結する。こんな読書体験は初めて。

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『親愛なる』は、「紙」が演出の一つとして効いている。

個人情報を物語の中に埋め込む、という仕掛けは、電子書籍でもできる。というか、どちらかと言えばデジタルデータを自在に操る電子書籍の得意分野と言ってもいい。販売元のBCCKSは電子書籍フォーマットも取り扱っている。

でも『親愛なる』は紙の本を選んだ。読んでみるとわかるのだけど、自分のメールアドレスや名前をモニタ上で見るのと、紙に印刷されているのでは、明らかに紙の上のほうが「重い」。モニタ上で見る情報はコピペができるし、簡単にいじることができる。でも紙に印刷されている情報は動かない。ずっしりとそこに居る。動かしようのない情報に、重さを持つ言語に、しっかりと首根っこを掴まれてしまうのだ。

紙の本のフォーマットにするため、『親愛なる』は注文から2週間の月日を要する。挿絵の絵柄も3種類の中からランダムに選ばれる。いとうせいこうが書いた、世界に一冊の僕だけの本。

そうだ、最初に「期間限定」って言ったんですけど、その「期間」がこの記事を書いている日の翌日、2014年8月31日24時までなのです!

これは急いで『親愛なる』について伝えなければならない!その一心で、子供を寝かしつけてから起きだして急いでこのブログを更新しています。もー、なんでもっと早く読み終わらなかったのか!

僕の『親愛なる』を貸すこともできるけど、それはあなたの『親愛なる』にならないんです。ちょっとでも「おっ」と思ったら、即注文してみてください!

この仕掛けにはまだまだ可能性があります。

『親愛なる』は、伝説の始まりです。

注文はこちらから → 「親愛なる」いとうせいこう著