AKB総選挙の司会はなぜ徳光和夫のままなのか

2014年6月7日、AKB総選挙の開票イベントが行われた。

場所は味の素スタジアム。豪雨の中、集ったファンはおよそ7万人。

4時間を超える開票イベントの模様は、フジテレビで「AKB48第6回選抜総選挙 生放送SP」として、全国に生中継された。

番組自体は味の素スタジアムに設けられた特設スタジオから進行、司会は宮根誠司&加藤綾子アナ。ゲストにAKB卒業を控えた大島優子などが並ぶ

そして、味の素スタジアムのステージの上で、イベントを進行させるのは徳光和夫&木佐彩子の2人。

徳光和夫なのである。

アイドルのファン投票イベントに徳光和夫、という組合せは、やっぱりなんとなく違和感がある。ベテランすぎるし、カラーが異なる気が拭えない。

実際の進行も、10代20代の女の子相手に自由に短歌や俳句を挟み込んできて、「あんまり面白くないけど偉い人だから笑っておかないと」という微妙な空気になったりもしていた。

あれ?そういえば去年も司会してなかったっけ……?と調べてみたら、徳光和夫は2010年の第2回AKBから、ずっとAKB総選挙の司会をしている。

国民的アイドルの一大イベントの司会が、なぜ、ずっと徳光和夫なのか。

ここまで続くとなると、主催側に「徳光和夫にお願いをしなければいけない理由」があると考えたほうが自然だ。そう思って考えてみると、「AKB総選挙」というイベントの司会というのは、とんでもなく大変な仕事なのである。

理由は大きく分けて3つある。「精通」「ライブ」「21時またぎ」

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まず「精通」。全国ネットで生中継されるほどの一大イベント「AKB総選挙」であるが、平たく言ってしまうと人気投票であり、AKB48内で完結する話であるから、コップの中の嵐とも言える。

そのイベントの司会をするということは、AKB48のことをよく知っていないといけない。

知るべき範囲は広く浅い。対象となるメンバーは今回296人。AKBやSKE,NMB,HKTといった姉妹グループとの関係、主要メンバーの来歴やキャラ、ここ最近のAKBを取り巻く状況、速報の順位に至るまで、広く頭に入っていないとイベントを的確に仕切ることはできない。

次に「ライブ」。ファンが人気投票を行い、その最終結果を発表する。直前まで順位がわからないから、進行はつねにライブ性を伴う。

さらに、順位発表→メンバーがスピーチ、という段取りであり、メンバーが何を話すかはその場にならないとわからない。順位によって言うことも変わってくる。

この状況、台本が作れないのだ。4時間も超えるイベントなのにかっちりした台本がない。メンバーの情報は用意できても、順位発表に伴い発生する様々な悲喜こもごもに対応しないといけない。

最後に「21時またぎ」。これはイベントではなく、テレビの生中継の都合による。

今回、最後に渡辺麻友が1位を獲得し、ステージ上での発表を中継する「第1部」が終わったのが21時を10分ほど過ぎたところだったと記憶している。

この「21時をすぎる」というのが非常に重要で、例えば21時前に一区切りがつくと、21時始まりの他局の番組にチャンネルを変えられてしまう恐れがある。長時間の番組では常に「またぎ」を意識して、チャンネルを変えられないように「またぎ」に見どころをもってくるのがセオリーなのだ。

「精通」「ライブ」「21時またぎ」の要素をまとめると、こうなる。

「AKB48関連に詳しい人物が、決められた台本がない4時間を超えるイベントを、21時過ぎに終わらせるよう進行しないといけない」

さらに全国ネット生中継&会場には7万人である。どれだけ難題か、おわかりいただけるだろうか。

ここで徳光和夫に話を戻してみる。

徳光和夫なら、台本なし&4時間超え&21時過ぎ終了の部分は満たせる。なんと言っても、24時間テレビの総合司会を務めていた人物である。4時間なんて全然問題ない。

しかし、恐らく、徳光和夫はそこまでAKBに詳しくはない。情報を仕入れるよう努めているはずだが、全てを網羅するには年齢もいきすぎているし、芸能界にはもっと詳しい人物もいる。

ならばなぜ、という最終的な理由は、「AKB総選挙イベントの司会を経験しているから」に尽きると思う。

最初(2010年)に司会に起用された理由はわからないのだけど、翌年以降になると「やったことがある」というのは主催側にとって大きな安心材料になる。

そうして、何年もAKB総選挙の司会を経験すると、今度は「AKB総選挙の歴史に詳しい」という付加価値がつく。現場に立ち会っているのだから、去年はこうだったけど今年はこうですね、という振りができるようになる。

加えて、オファーもしやすい。なかなか「台本なし4時間超えの大イベント」は新規のベテラン司会者に頼みづらい。「今年もぜひ徳さんに」という流れに任せるのが楽だ。

こうして、AKB総選挙自体がどんどん大きなイベントになるにつれ、司会ができる人物が徳光和夫しかしない状況が出来上がってきたのではないか、と思うのだ。

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ちなみに、今回の総選挙SPと同時間帯、同日20時〜21時30分まで、CSファミリー劇場では「第12回アメリカ横断ウルトラクイズ」の再放送が放映されていた。

「アメリカ横断ウルトラクイズ」は素人出演部分が大半を占め、権利の関係で再放送やDVD化が困難とされてきた。その問題が解決したのか、これが今回初の再放送となる。

実は、第12回は徳光和夫にとって記念すべき回。

それまで「敗者の味方」として、後楽園球場で敗者からのピコピコハンマーを浴びせられ続けていた徳光和夫、この回からその役目を渡辺正行にバトンタッチし、初めて一般参加者してウルトラクイズを楽しむのだ。

いつの日か、AKB総選挙の司会もバトンタッチし、一般参加者として楽しむ日が来るだろうか。