映画『アナと雪の女王』のヒットが目覚ましい。全世界興行収入が12億を超え、全世界での歴代5位になったそうだ。
『アナと雪の女王』というタイトルはもちろん邦題で、原題はシンプルに「Frozen」という。
いま、テレビのバラエティの世界にも、凍てついた、氷の新風が吹いていることをご存知だろうか。
昨シーズン現役を引退した、二人のフィギュアスケーターによって。
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その二人とは、織田信成と安藤美姫。
織田信成。2006年四大陸選手権優勝、2008年全日本選手権優勝、2010年バンクーバーオリンピックでは日本代表として出場。「織田信長の末裔」という血筋を持つ。
安藤美姫。2007年、2011年世界選手権優勝。2006年トリノオリンピック、2010年バンクーバーオリンピック出場。愛称は「ミキティ」。ちなみに名付け親はFNNスーパーニュースの安藤優子キャスターである。
数々の素晴らしい成績を残し、日本を代表するスケーターの二人。
共に2013年のシーズンを最後に引退し、その後は指導者を目指すと言っていたのだが、今やテレビで観ない日は無いほどバラエティに出まくっている。
安藤美姫は日テレ『イッテQ』の企画で「北極点でスピン」に挑戦。
内容は北極点にリンクを作り、そこで安藤がスピンを披露するというそのままのもの。リンク作りにはWエンジンのチャン・カワイが同行する。
……の、はずだったのだがチャンがロケ開始に間に合わず、北極点にたどり着くためまでの一切の進行を、安藤一人で行わなければならなくなった。しかし安藤、フリップを使った行程説明、クリオネの捕獲、シロクマが目撃できなかったので資料VTRを振る、などのロケ行程をひとしきりこなし、スタジオでは「けっこうカットされてる」と不満顔も見せるほどの働きぶりを見せる。
肝心のリンク作り&スピンは、マイナス30℃極限の環境の中でチャンが奮闘。激しく変わる天候のなか、北極点に半径3メートルほどのリンクが完成。安藤はそこにフィギュア衣装姿で登場し、足を高く挙げてのI字スピンを見事に成功。安藤と地球が仲良く自転した奇跡の瞬間であった。
いっぽう、織田信成である。
現役時代から「泣き虫」だった織田信成。とにかく泣きどころで使われまくっている。
TBS『炎の体育会TV』では憧れの人・コロッケと対面し「五木ロボ」を客席最前列で鑑賞し号泣。自身がMCの番組でも感動的なVTRを見せられて泣いてしまう始末。番組側が「ここで泣いてほしい」と仕掛けた場所で必ず泣く。織田信長ではなくて、徳光和夫の末裔なのではないか?と思われるほどである。
そして「天然」の一面もお茶の間には好評だ。『しゃべくり007』ではゴリラのモノマネがリアルすぎて客が引き、『しくじり先生』では自身がチャック全開で試合に出たことを踏まえ「ミスが無いように何度も確認すること」という教えを持ってきたのに最後の決めゼリフで噛み倒す。欽ちゃんが現役バリバリだったら絶対使っているだろうな、というくらい愛すべき天然キャラである。
それでいて告知や担当コーナーなど、大筋では外さず進行ができる。芸人の振りに対する受け答え(天丼など)もバッチリである。
いったいどうして、二人はこんなにもバラエティ対応力が備わっているのか?
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これまで、数々のスポーツ選手が引退後にタレントとしての道を歩んできた。
古くは高見山がマルハチ羊毛パッドのCMで「二倍二倍」を連呼し、森末慎二はテレフォンショッキングに出るために現役を引退し、定岡正二は「生ダラ」でエアロビクスを踊ったりした。
一番何事も無くバラエティに浸透しているのが川合俊一、大林素子というバレーボール勢であろう。百獣の王・武井壮も十種競技の出身である。
野球、サッカー、相撲、バレーボール、体操、陸上……競技種目は様々だが、「スケート」からバラエティに入ってきたのはいない。伊藤みどりや荒川静香が企画にちょっと顔を出すことがあっても、あちこち呼ばれたりMCまでしたりしない。
今回、織田&安藤のバラエティ対応の源は「表現力」と「若さ」だと思っている。
スポーツ選手出身タレントの中で、現役時代に「表現力」を求められていた者は少ない。採点項目に「演技構成点」があるように、フィギュアスケートにとって、表現力は大事な要素である。
自分の動きが人の目にどのように映っているか、現役時代、常に自分を客観視してきた視点が、テレビのこちら側の視点とダブるのではないか。ここでどう振る舞うか、一瞬の判断力が少なからず身についているのではないか。
そしてもう一つの要素が「若さ」である。
フィギュアスケーターの選手生命は短い。20代でベテラン扱いになるのだ。現に織田信成、安藤美姫は共に1987年生まれ、27歳である。
20代の若さで、世界と戦って、やり切って引退しているのである。
若いけど人生経験が豊富だから、コメントに力がある。競技は引退したけども、普通の人より身体能力は飛び抜けて高い。そして若いから中高年から見たらカワイイ。
こんなにテレビで使える人材がいるだろうか。
そして特に織田信成は大阪の出身。お笑いの基礎は幼い頃から染み付いている。『IPPONグランプリ』をスタジオ観戦し、まだ関東では馴染みの薄いシャンプーハット小出水に対して「らしさが出ていた」とコメントが残せるほどだ。
「表現力」と「若さ」を武器に、まだもう少し、ありのままの彼らの快進撃を見ることができるに違いない。
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……しかし、ここまで書いてみたものの「表現力と若さだったら、体操もそうじゃないの?」と思い初めた。
内村航平や白井健三が引退したら、テレビでどういう動きを見せるか。要注目である。
くれぐれも、『ぐるナイ』の企画で信号機で大車輪をして書類送検された池谷幸雄のようにならないでほしい。