デイリーポータルZ直伝!すべらない記事を作る方法

デイリーポータルZ編集長・林さんの本、『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』(略称:ビジネス書)を読みました。

ご覧のとおり、遠目で見ると「ビジネス書」だけしか見えません。マンガで背景の本棚に入っている百科事典に「百科事典」と書いているような、本物と思わせておいてニセモノのあの感じ。

本の中身も、ビジネス書にみせかけて「最小限の努力で仕事ができる(ようにみえる)77の裏ワザ」という、ニセモノ感たっぷりの内容。

例えば……

  • なんでもない言葉を「かっこいいビジネス用語」に変換する
  • プレゼンは笑っている人だけを見る
  • お詫びメールの末尾に「iPhoneから送信」と手打ちして出先から急いで出した感じを出す。

などなど、”ビジネス”に正面からぶつからずに、裏口に三河屋のサブちゃんが入る木戸を作るような、小さな技がたくさん書いてあります。「かっこいいビジネス用語集」なんて8ページも載ってます。「名前だけでも覚えて帰ってください」は「ブランディング」です。

こんな感じで、同じ林さん著書の『死ぬかと思った』みたいに、小ネタ満載の本なのだろうな……と思ったんですが、第2章ぐらいから「デイリーポータルZ」製作の秘訣が惜しげも無く公開されているんです。

毎日高い打率を誇るお笑い系読み物サイト「デイリーポータルZ」が、そのクオリティを保ちながらどうやって続けられているのか。

これが、企画をやる人や、職業ライター、ブロガーまで必見の内容!自分のためにもちょっとまとめました。

笑いを全面に出さない

「デイリーポータルZ」の読み物は、笑いを全面に出さずに、実験や調査という体になっている。なぜか。

すべったときの保険になるから、だそうだ。

企画意図どおりに行かなかったときも「ダメでした」で終わらせることができる。無理にオチをつけたり、体を張って笑いと取ろうとしなくていい。そもそも笑わそうと思っていないから、すべりようがない。

毎日「笑いを取るぞ!」と意気込むと疲れちゃう。続けるためにもゆるさが必要なのである。

無理をしない、興奮を大事にする

とにかく無理したり、努力したり、背伸びしたりということをしない。そもそも努力するなら『ビジネス書』なんてタイトルの本は書かない。

デイリーポータルZはページビュー(PV)を気にしないそう。PVを気にすると、書きたくないものを釣りタイトルで書いたりしちゃうことになるから。それはしたくない。

書き手に対しても、取材が苦手なら取材がいらない記事を書けばいいし、途中で話が変わっちゃってもいいし、オチがなくてもいい。企画の提案も基本的に反対しない。

これは書き手の「興奮」を大事にしているから。

「書きたい!」「伝えたい!」と書き手が興奮している時は、自然と文体にもその興奮が出てくる。うまくいってもいかなくても、そのリアルを伝えればいい。「興奮」があれば記事は熱を持つので、世間で話題になってないことでも「おもしろそう」と思われる。顔出しを推奨しているのもより興奮が伝わるためとのこと。

逆に、ウケそうな記事でも書き手が乗り気ではない時はやめるのだそうだ。無理はしないのである。

常に機嫌よくいる

林さん曰く、アイデアを考えるときの最大の要素は「常に機嫌よくいる」こと。

アイデアを出したり、なにかを面白がろうとしても、機嫌がよくないと「それどころじゃない」とできなくなっちゃう。

機嫌よくい続ける方法も徹底してる。TwitterやFacebookで愚痴ばかり言っている人は外す(仕事のしがらみなどで外せない人は非表示に)、いい評判だけ見る(特に知り合いだらけのFacebook)、不安を煽るメディアは最初から見ないなど、インプットを制限する。ネットに不満や批判を書き込まないなど、ネガティブなアウトプットもしない。

こうすることで、自分の機嫌を保てるだけでなく、「あの人はいつも機嫌がよさそう」と思われ、話しかけられやすくなる。話しかけられやすくなると、ビジネス上でも手を組みましょうと言ってくれる人が現れる。

情けは人のためならず、ならぬ、上機嫌は自分のためならず、である。

実は本当に『ビジネス書』なのではないか

他にも、アイデアの素材を集める方法、お菓子を食べながら会議をする理由、インターネット上の処世術など、ネット黎明期から活動している林さんならではのメソッドがたくさん。

巻末には名作「ペリーがパワポで開国提案書を持ってきたら」「カフカ『変身』をネット通販風に書く」も収録されています。

小ネタ集だと思ってたら、コンテンツ産業にはホントに使える『ビジネス書』なんのではないかなぁ、と頷くことしきり。すぐ手の届くところに置いて仕事に励みたいと思います(「ほめ方にバリエーションをつける」というメソッドも載っています)

ちなみに、帯の後ろにはよくある「読者の声」みたいなものが載っているんですが…

2014-04-11 20.34.48

あくまで「お待ちしています!」であり、「※すべてイメージです」とのことです。手を抜かないなぁ。